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第9話

~モニタールーム~

ABS553「・・・やばいやばいやばいやばいやばい」

その無限なほど何台もあるモニターのある部屋では、メガネをかけたある男が何かを筒に入れている。それは小さな丸い円形の物で、大部分が赤く、底の部分と少しそれを覆っているものは真鍮色に光っていた。その男は何か、急いでいるようでひっきりなしにその画面を見ている。そこにはとある二人の男女が映っており、それは一つの画面からまた別の画面に移動していく。近づいてきている。ある男の牙城を崩さんとしてすぐそこにまでやってきているのだ。その筒に満杯まで入れ終わると、今度はまた別の筒に入れ、そしてそれが終わったら今度は二つ連続した筒に7、8発ほどその下方に入れ込む。まず一発をガチャンとそこについているポンプで上にやったら、下に流れ作業のようにしてチャッチャッチャッと親指で押し込んでいく。

ABS553「何でこっちに敵として向くんかねぇ・・・こっちはちゃんと味方だって言ってんのに・・・まぁ欲望の味方だけども、またその本体は協力せずに裏切るってことかよ・・・ついてないなぁ」

少し笑いながら、そんな弱音を吐いて、今度は自分の懐からシリンダー回転式の拳銃を出して、そのレンコンの穴に同じような真鍮色の円柱を入れていく。だけどもその手は、指は揺れていてなかなか入らない。その入れたい場所とは違う場所にそれを入れたり、ついには落としてしまう事もあった。その男はどこか焦って、その丸メガネには汗がフレームに染み込んでいく。そんな緊張感が、彼の周りを取り巻いていた。彼は散々協力というカードをその場に出して、なんとかマエハラサトルをこちら側に引き込んでいたのにも関わらず、そいつは裏切りを出して利益相反仕舞い。なんとか何度も協力をさせようと交渉したものの結局二の舞で変わらない、そんな個人の利益だけを取っているジレンマが、そして何度もそのメリットを追ってしまうその心理的な負担が、新たな選択の強迫を迫る。

ABS553「もういい、裏切れ、裏切るんだ俺!どこまでしてももうこっちにメリットが無いってんなら切るんだこの野郎!」

そのメガネをかけた、ABS553という男は決意した表情を見せる。

~~~~~

凌雨華「うぅ・・・キリがない。さすがにこんな数の相手は「死ねぇぇぇ!!」

対応できない。私達だけじゃ」

そんな彼女はまるで無限に湧き出てくる敵兵たちをどんどんなぎ倒していく。しかしその瞬間、目の前の男がその“銃”とやらを槍替わりにして突っ込んで来る。そんな光景を見ていた彼女は、もう目の前の女に命を奪われようとして、構えることも無くなった。もはや彼女の突然ついた負け癖、いや負けず嫌いだった彼女の諦め癖。でも、それでも彼女はあきらめられない、負けず嫌い。そんな彼女は、心の中ではもうあきらめてしまおうという気持ちとその負けず嫌いが戦っていたのだ。

するとその瞬間、突貫してくる女の横に謎の穴が開いて、そこに突貫女は引き込まれていく。その穴から手が出て、そう、どこかで見たあの穴だ。

凌望「いやぁすまんのぉ遅れて。マエハラサトルが戦ってるとなると、どうにもここで死ぬのはちと早すぎると思って」

そう、その穴から出てきたのは、あの時死んだ凌望であった。

凌雨華「え?・・・父・・・さん・・・?死んだ筈じゃ・・・?」

鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている彼女は、目の前にいる男の存在を信じていなかった。それは彼が死んでいたと思ったからだ。

凌望「残念だったな・・・トリックじゃよ!!」

ついに前原悟以外もコマンドー語録を使い始めた。しかも敵側のセリフだからそれ。そんな彼は前原悟と同じような鞘に入った湾刀をゆっくりと取り出し、跪いて諦めかけているその娘にこう言った。

凌望「とにかく・・・話は後だ!立てるな?」

すると実の娘、凌雨華もその気概を、気迫を、その意志を見せるかのようにして、立ち上がって自分の槍をそいつらに構えた。その二人の息が、呼吸が合わさったその瞬間、彼らの周りに並外れたオーラが、彼らの周りを包んでいく。

凌望「落ちぶれてはいないな?さすがは私の娘だ、やればできる子だ!」

凌雨華「そっちこそ酒の飲みすぎでもう動けないとか言わないでね!?」

そんな二人は自分の武器をまるで体のように自由自在に使って、前原悟とこの島の主でありすべての巨悪、ABS553のABS553によるABS553の為の、銃という現代の武器で強化された兵士達ものの数百名以上にたった二人で立ち向かっていくのだった。

~~~~~

バァン!バァン!

彼らはそれぞれの扉を開けて、虱潰しにそのABS553、紳士的で騎士道な精神が表の姿で出てくるものの、その裏は実はこの大陸を、この世界を破壊してもう一度構築してしまおうという大悪党、挙句の果てに銃なり無線機代わりの水晶なりをこの世界で勝手に作り出して、それで暴れまわっている下賤な奴、いやゲームで言う所のチーターやグリッチャー、モッドクリエイターと呼ばれるにふさわしい奴だ。

前原「どこだ!どこにいるABS553!

それぞれそいつを炙りだす為に、扉を開けたままにしておく。そいつがいなかったことを証明するための条件だ。開いてなければそいつがいるという可能性がある。そうやって最後の扉に二人で付いた。一度ここは拉致られて来たものの、その見える世界の中で一つだけ、その扉がある事実を自分の脳みそが過去の記憶を参照にし、“いいえ”と示している。

そうやって手を伸ばそうとしたその瞬間、

バァン!

大きな音とともその扉が粉を吹きながら、大きな穴を開けた。その大きな音で振り返った反対側から見ると、所々その大きな穴に、小さな粒が12個ほど円を描くようにして開いている。そう、

前原「ショットガンだ・・・!」

その兵器、いや扉を吹っ飛ばす魔法の道具は彼女にとって何も知らない。そのおかげか今、ヴィト・ローズは状況の理解に苦しんでいる。そんな弱者をむさぼるように、その彼女を狙うが如く、その隠れている壁の穴がパッと消える。さっきのショットガンとは違って、レーザー加工で開けたキレイな丸い、いや限りなく多角形の穴が。

前原「ヴィトっ!危ない!」

僕は彼女に飛びかかってその穴の脅威から彼女を庇おうとする。運がよかったのか、僕達はその攻撃から逃れることが出来た。

ABS553「これはすごいですねぇ我が星よ。何も理解できていないその無垢で恋人を守るために身を掛けるとは。その気迫をこっちで活用してくれれば、こんなことにはならなかったのに。平和的に出来たのに」

そんなどこか皮肉じみたセリフに、どこかおちゃらけないといけない雰囲気が前原悟にある。その緊張をほどく為に、それと今すごいやばい目線を向けている下にいるヴィトに目をやらないが為に。

ヴィト「(あぁ~マエハラさん♡僕の事を守るが為に一身に飛びついちゃって♡やっぱり君は僕を守ってくれる、救ってくれる救世主なんだ♡あの時からずっと、筋肉が付いても、髭を伸ばしても、今になっても、容姿が変わってもその心は変わらない。もう僕を救ってくれるのは僕の人生でずっと、君しかいないんだよ?あの時からずっと♡)」

そんな彼女の熱く暗い目線に目もくれず、彼はその体勢のまま穴の開いた方向に向かって、こう聞く。

前原「平和的?銃みたいなチートを使って、この世界を全部壊すのが平和的っていうこの世界(アイセラ大陸)での定義なのか?」

そう皮肉的に、そしてまるで子どもが空は何で青いのかと質問するように、されどそのショットガンを持っている方が少し皮肉勝負としては上手に見えるその舌使い、意表を突くことは無いがそれで少し奴の出方を調べるのだった。

ABS553「ああ、この魔法武器のお名前が“銃”である事はご存知であったとは・・・まあ異世界の武器でありますからね。あなたの記憶を少し拝借して私とその仲間たちが作ったものですから」

そいつは奇妙な事を言う。記憶を拝借?そんなことできるはずがない、なぜなら僕の、いや俺の銃の話なんかどこでも口に出していないのだからだ。そう言う事になるとどんどんそのABS553が分からなくなっていく。記憶を拝借して武器生成?そこでもうつまずいて意味が分からない。グラファイトブレットならあれは高速で物体をそんな疑念をかき消すために僕は少し立ち上がって、そしてヴィトも立ち上がらせてその穴の死角に二人で隠れる。

前原「なぁ、それをブレンダーとかいうソフ・・・魔法で作ったのか?」

僕はなんとか自分の情報は悟られまいと、皆までは言わない。するとその顔も見たくない世界ぶっ壊し系キャラクターとかいうどっかの警備員っていう名前のYoutuberの100倍の規模を行くそいつは、さわやかな声で

ABS553「ご名答!そのブレンダーでございます!」

そう答える。僕たちはすぐさま後退し、その信者達が集まって三度の飯と、日々の生理的習慣を度外視していたその祈りの間へと隠れる。

~~~~~

ヴィト「追って来てないよね?」

彼女はそう僕に確認すると、僕は少し廊下の辺りを見回してうんと頷く。その廊下に姿は見当たらない。

前原「その・・・筈」

ヴィト「ふぅ・・・よかった。それよりさ、あの魔法道具は怖いねぇ。あとちょっとで神様に会っていた所だよ。ありがとう♡マエハラさん♡やっぱりさ、マエハラさんがさ♡ボクを守ってくれることでボクは・・・あれだ。か弱いお姫様に成れるんだよね?してくれるんだよね?マエハラさんが守ってくれることで」

多分、多分なんだけどさ、凄い後悔したこと言っていい?こいつを仲間にするんじゃなかった。だってヤバい女の子よ?こんな状況で萌えてるヤバい女だよ?なんでこいつが元騎士なのか分かったわ。状況が見えてないんだ。だから”元”騎士な訳だ。そんなわけで僕に心酔している多分要介護系ヒロイン「この状況、面白いね?私の知らない変な武器相手にマエハラさんと一緒に愛と剣を武器に戦っていくなんて・・・なんか、うずいちゃいそうだ」

・・・訂正しよう。状況が見えてるヤバい系のヤンデレヒロインだ。

するとそのヤバいヒロインさんは、僕と顔があった瞬間、唇に口づけした。僕はこんな状況でもそう簡単に僕に口づけをする彼女がおかしいと思っている。

前原「やめろって、なんでそんなに緊張感が無いの貴方は?」

ヴィト「え?う~ん・・・場数とこの状況を楽しむことかな!だって僕が初めて出会った大好きな人とさ、同じ場所に同じ時間で戦えるんだから♡」

こいつやばぁ・・・あの時声を掛けなきゃ、いやその声に乗らなきゃよかった。

そんな二人同士の水入らずのイチャイチャに、水を差すような真似をその不届き者がやって来る。楕円形の穴がいきなりぽっかりと開いて、そしてクリエイターにとっての憎きあの姿が全身ごと現した。ショットガンを構え、そしてまるでお前らを絶対に殺してやると言う勢いでその横にあるポンプを上下させる。よし!やれ!殺せ!リア充爆破しろ!ABS553!お前は英雄だ!今すぐにそのトリガーを引け!引くんだ!押せ!押せ~!

ABS553「最後の交渉です。もしここで今協力するを選ぶなら、横にいるヴィト・ローズ、彼女をここから逃がしてあげます。裏切るのであれば・・・」バァン!

なぁ~に外してんねんお前!さっさと向けて撃たんかいこの

オ=タンコ・ナス(1023~1085)!AIMよわよわ!生きてて恥ずかしくないの?

その男、ヴィトとは少し照準を少し外してそのトリガーを引く。その瞬間、粗い穴が彼女の横で空いた。

ABS553「こんな風に彼女のお腹にどでかい穴が開きます」

その銃を持った脅迫は、こちらに突き付ける一つの交渉ではない。僕はそんな物に決して屈しる事は無い。そして彼女も、だ。

ヴィト「(どうすればいい・・・あの変な武器に勝つには?立ち回るには?マエハラさんは絶対に対抗するはず、だってこんなところで折れるような人じゃないっていうのは分かってる!)どうすれば・・・「いいんだ。ヴィト、君だけでも逃げt」駄目だよ。僕だけ逃げるなんてっ!」

そんな彼女は何か、決意の目をしている。まるで関係ないのに一矢報いてやろうというつもりだ。

前原「わかった。協力する!なんでもするからヴィトだけでもここから逃がしてくれ!お願いだ・・・頼むっ!」

そんな弱腰でここまでこれたのか疑うほどその前原悟は、目の前の圧倒的な脅威に対して屈服せざるを得なかった。

ABS553「そうですか。では・・・



“協力”していただきましょう。このいびつで複雑な世界を再構築するためにね?」

いびつな世界。彼は僕が作ったこのアイセラ大陸を、そう呼んだ。その時、不思議な事が起こった!彼の感情の変数が0からー1へと、変な動きを見せ始めたのだ。その変数は指をピクリと動かし、その蟀谷のゲームであろうはずなのにリアルな動作もチラつく。その目の前にいるショットガン男は、前原悟をキレさせるのに十分


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