きっかけは、些細な疑問だった。
「暁人って、いつも甘いもの食べてるけど甘党なのか?」
「別にそういう訳じゃない。僕の能力は脳への負担が大きいからな。甘味で補わないと倒れてしまう、それだけだ」
確かに、砂糖類はダイレクトで脳に効く。暁人は最善の行動をとっているのだろう。見ているこちらが胸焼けすることを除けば。
「なるほどな。だからいつも甘いものを……」
言おうと思っていた文句が、喉から体の中に戻っていく。暁人の消耗が激しいのは、能力が強いので確かだからだ。強い能力であればあるほど、体や脳にかかる負担も大きい。それは俺自身もよくわかっている。俺の能力も強力な部類だからだ。
「夢野、わかりきったことを訊くんだな。今日は女性陣が遅れてくるから、二人きりなのに」
そのことをさして気にしていないのか、菓子パンを頬張りながら数学の問題集を解いている暁人。
「……今更だろ。元サッカー部だったのは、驚きだったけど」
「僕がサッカー部らしくないと。まあ、今だけ見ればそうかもしれないな」
折角だから少し昔話をするか、と暁人はペンを置いた。