いよいよ冬が準備を始めている。肌に染み入るような冷たさを感じながら、家を出る。
「わざわざ待ってたのか?」
家の目の前には、普段方向が違うから一緒に登校することはない暁人の姿があった。
「ああ、落合新のことで少しな」
表情は崩さず、暁人は紙幣を取り出した。
「昨日、彼の闇金融とやらに接触してみた。放課後なら多少時間は経っていても校内に居ると踏んでな。当たりだったよ。ここにある金は、彼から借りてみたものだ。審査はなし、三日以内に返せば何も発生しない。正直、優しい方だと思うんだが夢野はどう思う?」
「どう思うって……確かに、規則が緩いな。何がしたいのか全く分からない。儲けるという考えでやってる訳じゃないのか?」
普通なら、利子だの利息だのがつくはずだ。詳しいことはわからないけど。それに、三日という期限も長めに感じる。彼が何を成したいのかが全く見えてこない。
「儲けるのではなく、売名行為に近いんじゃないだろうかと考えている。そのうち三日以内のルールも変わるかもしれないが、その可能性も低いと思う。あくまでも、“高校生活内での売名行為、稼ぎは二の次”感があるからな」
「何だかややこしくなってきたな。とりあえず今日、月影たちにも相談してみよう」
話で盛り上がっている間に、学校に着いた。クラスが違う暁人と別れ、教室に向かう。闇金、俺のクラスでも借りている奴は居るのだろうか?
***
昼休み。少し久しぶりに五人で集まった気がする。暁人が状況の説明をする中、俺は一人で新のことを考えていた。一体彼は、何をしたいのだろう。見当もつかない。俺は彼に、何をすればいいのだろう。ただ手を差し伸べるだけで解決するほど、この問題は浅くなさそうだ。
「……おかしな人ね。これって裏金融というより、子どもの遊びに実際のお金が使われている様なものだわ」
望月の言う通りだ。もしかして、新は金という玩具で遊んでいる子どもに過ぎないのかもしれない。
「ネルミの言う通りだよ。でも、夜見くんがお金借りてるってことは顔覚えられている可能性高いよね。直に夢に乗り込んだ方が良いのかな」
「そうだ、月影。俺たち二人今回悪夢の概要を知らないんだよ。教えてくれるか」
途中で部室から出て行ってしまったので、聞けずじまいだった。
「わかりました。……今回の夢は今までと異なり、自殺だったりそういうことは起きません。起こるのは、破産です。意味はそのまま。もうわかりますよね、お金を踏み倒された夢です」
何となく、そういった夢なのだろうとは思っていたが的中するとは。
「……解決の仕方に迷うな……」
俺の独り言に、反応したのは咲夜だった。
「私の能力だったら、夜見くんが借りたお金を持ち込めるよ。それを返せば、少なくとも破産はしないんじゃないかな?」
咲夜の能力は強化され、初期は武器になるものしか持ち込めなかったが現在は何でも持ち込めるようになっていた。今回の任務において、非常に心強い。
「では、そろそろ実行に移しましょうか~! 今日の夜はネットカフェに集合です!」
月影の言葉で、この場は解散になった。