暁人がドリームイーターズに入ったのは、元々彼が被害者だったのを助けてからだったと記憶している。どんな夢だったかはあまり覚えていないが、確か建築現場での事故で亡くなるとか、そういった類の夢だったと思う。スカウトされて入った望月とは異なり、最初の頃は戸惑っていた暁人の姿が懐かしい。
「夢野、何ぼーっとしてるんだ。テスト前だから勉強会をしたいと言ったのはそっちだろう」
「悪い悪い、お前もこの部活に馴染んだなーって」
「時が流れれば、馴染むのは当然だ。それにしても、僕のことを狙った奴らには腹が立って仕方がないが」
暁人は、五人の中で一番トワイライト・ゾーンを目の敵にしている様に感じる。恐らく、それは俺以外もそう思っていることだろう。
「~で、ここに代入を……夢野?」
「ああ、聞いてる。ありがとうな、暁人」
「何なんだ急に……悪い気はしないが」
暁人は、眼鏡をクイッと押し上げた。これは暁人の癖の様なもので、大体上機嫌な時にしている。
「二人きりの世界って感じね、夜見くんに副部長。勉強は進んでいるの?」
望月が部室に入ってきた。ギィ、と扉が音を立てる。
「ああ、まあそこそこ」
「夢野がすぐ考え事をしてしまうから、芳しくはないな。望月も参加するか?」
「あら、じゃあ私も参加させてもらうわ。ちょうど勉強道具は持っているから」
この三人で勉強会をするなんて、現実味がない。望月と暁人の組み合わせは珍しくないが、そこに俺が加わることが珍しいのだ。望月は英単語集を開き、小声で音読している。自分の世界に入ってしまった望月を余所に、俺は暁人に数学を教わる。
部室は、テスト前には自習室としても機能する。月影や咲夜は今日いないが、時折見かける。と、いっても二人セットではなくバラバラにだが。あの二人は、一人で勉強するのが好きらしい。多分本当は暁人もそうなのだろうが、俺が無理言って勉強を見てもらっている。
「今度は見つめてきて何なんだ、夢野。何も出ないぞ」
「あ、悪い。色々あったな、って思ってさ。暁人は一番最後に加入したけど、色々一緒に経験出来て楽しかったよ。俺」
「……そうか」
再び、眼鏡をクイッとあげる暁人。その表情はどこか晴れやかだ。いい加減勉強に集中しよう。俺は雑念を取り払うように頭を振った。