月影が御手洗いに立ったタイミングで、思い切って問いかけてみた。
「月影って、何者だと思う?」
各々、一拍置いた後にまずは咲夜が手を挙げた。
「私は、凄く良い子だと思う。校則違反は一つもないし、どこかの伊達さんとは大違い。……だけど、何て言うのかな。本性を私たちに見せてない感じがするんだよね。敬語なのも、これから先は立ち入らないでっていう線引きに見えるし」
「それは私も思ったわ。部長には多分、誰にも知られたくない秘密や過去が人より多いのよ」
これが女性陣の意見だった。暁人はというと、スティックバーを食べながら
「別に何者でも構わない。彼女は彼女だろう」
とだけ言った。この話題にあまり興味がない様だ。
「俺は」
「すみません、お待たせしました~」
意見を言おうとした瞬間、月影が戻ってきたのでこの話題はおひらきになった。
「では、今日の夢の主さんを……」
タブレットを持ったまま固まる月影。
「どうしたんだよ?」
「あ、あぁ。いえ、何でもないです。夢の主でしたね。今日は、高尾北斗くんです。夢野くんは、わかりますよね。同じクラスですし……」
確かに、俺は高尾北斗を知っている。同じクラスで知らない奴はいないであろうツンデレ男だからだ。そして、彼が月影を好いているのも知っている。何故かと言われれば、月影にだけ嫌がらせの様なアプローチをするからだ。月影本人は苦渋の面をしているので、恐らく苦手なのだろう。
「わかるけど、どんな夢を見てるんだ?」
「好きな女の子に振られて、ショックから自殺に走る夢……らしいです。今回は私と夢野くんで最初の調査をしますね」
月影は居ない方がいいのではないかと思ったが、本人が覚悟を決めている以上口出しするのは野暮だろう。
「わかった」
月影と調査をするのは、梓希先輩以来ではないか。あの時は望月も居たけど。今日はもう、時間が時間なので解散になった。それにしても、やっぱり夢の主は変わった奴ばっかりだな……。