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第83話

 翌日の昼、俺は「高尾、ちょっと」と彼を呼びだした。月影は、俺の背後に隠れている。やはり怖いのだろう。

「夢野か。珍しいな、何かあったのか?」

髪を金色に染めている高尾に話しかけられるのは、クラスの中でもごく少数の人間に限られる。要するに皆から怖がられているのだ。

月影が居る以上、彼女の話題は避けた方が良いだろう。

「いや、実は橋本が最近お前のこと心配しててさ。眠れないんだって?」

 橋本とは、高尾に話しかけられるほぼ唯一の人材だ。幼馴染で、仲も良い様に見える。

「あいつ……。お前らには関係ないだろ!」

「関係なくても、もしクラスメイトが困っているなら救いたいんです!」

 我慢が出来なくなったのか、月影が飛び出してきた。高尾は目を丸くして「月影!? いつから……」と驚いている。

「べ、別にお前らの助けなんて必要としてねーし! 余計なお世話だ」

 高尾は怒って元居た場所に戻っていった。これは、別方面からのアプローチが必要みたいだ。

「お前ら、何やってんの?」

「成瀬……」

 成瀬は、高尾に虐められていた過去がある。元々は橋本と三人組で幼馴染だと聞いたことがあるが、あまり仲は良くないみたいだ。

「あいつには、関わるだけ無駄だ。あいつのせいで、今でも僕は屋上で弁当食べてるからな」

 それは気の毒な話だ。成瀬の方は成瀬の方で、何とかしてやりたいが。悪夢を断ち切れば、関係性も変わるのだろうか。

「つまり、成瀬は屋上帰りってことか」

「何が悪いんだよ。言っておくけど、僕がこうなったのは北斗のせいだからな」

 それだけ言い残し、成瀬は教室に戻っていった。彼から話を聞くのは難しそうだ。もう昼休みも終わるので、放課後橋本の方に声をかけてみよう。


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