部室。メンバーが揃ったタイミングで、俺は切り出した。
「実は今朝、悪夢を見た」
皆が息を呑むのがわかる。
「あの、それってどんな悪夢でしたか?」
月影が遠慮がちに訊いてくる。ここまで来たら、もう咲夜との関係性を隠す必要性も無いだろう。第一、あの告白シーンは見られていた可能性が高い訳だし。
「俺と咲夜が結婚して、子どもが居るんだけど……咲夜が子どもを庇って轢かれる夢だな」
「いかにも、奴らが見せそうな夢だな。ついに、僕たちのリーダーを潰しにかかったという訳か」
関係性のことにはツッコまれず、話が進む。その方が有り難いが、もう少し踏み込まれるかと思っていた。
「だとしたら、対策を立てなきゃいけないわね。副部長の力が最終的に必要になるとは思うけれど。自分で自分の夢を食べることは出来るのかしら?」
保健室での事件を思い出す。あの時出来たのだから、今回も出来るはずだ。
「ああ、出来る」
「なら、話は早いわね。私たちが星川さんと子どもを救出して、その間に副部長は夢を食らう。大筋は見えたんじゃないかしら」
今日の望月は冴えている。咲夜はというと、関係性がバレたことが恥ずかしいのか押し黙っていた。
「なら、今日は一回それでいってみましょう! 夢野くんは、お家で寝ていてくださいね。ゆっくりしていてください~」
月影の一言で、自宅待機になった。たまにはいいか。それにリーダーが居なくなっても、任務遂行出来るのか見物でもある。
「じゃあ、お前ら頼んだぞ。夢の中とはいえ、二回も咲夜をあんな目に遭わせたくないからな」
「任せろ」「私も頑張るわ」
各々の返事があったところで、一度解散となった。
咲夜は、言いづらそうに口を開いた。
「……関係性、バレちゃったね」
「いずれバレたと思うぞ。あんまり気にすんなよ」
咲夜の頭に手をのせ、軽く撫でる。咲夜の表情が綻ぶ。本当に可愛いやつだ。手を放し、繋ぐ。恋人繋ぎにする勇気はなかったので、普通の繋ぎ方だが。
「そうだね」
あまり気にしても仕方ない。咲夜の家の前で別れると、途端に不安になってきた。本当に俺たちは、悪夢を食い止められるのだろうか。しかも、悪夢退治のトリである俺の夢を。あんまり考えても仕方ないので、家に帰るなり手洗いうがいを済ませ自室のベッドに横になる。