目を開けたら、ネットカフェではなく自分の部屋だった。そうだった、今日は皆とは別行動なのだった。眠ろうにも興奮して眠れないので、やる気は起きないが勉強でもしておくか。期末テストの結果は悪くなかったが、気を抜くのは良くない。机に向かい、数学の教科書を開く。わからなかったところは、暁人に教えて貰おう。
朝日が差し込む頃には、だいぶ理解できているところとそうでないところの整理が出来ていた。不眠気味だが、朝になってしまったのは仕方がない。朝食を食べ、学校へと向かう。
道中、「久しぶりだな」と伊達に声をかけられた。咲夜が今日は委員会で早く学校に行っているから、声をかけてきたのだろうか。
「伊達、あれ以降調子はどうだ?」
この話題が無難だろう。他に話すことが無いというのもあるが。
「調子? ばっちりだよ。ところで、そっちは風紀委員ちゃんとの仲はどうなんだよ?」
伊達は勘づいていそうな気配がしたが、やっぱりか。
「……まあ、ぼちぼち」
「へー、お熱いことで」
伊達は、相変わらずの改造制服だ。この状態で友達は出来たのだろうか。
「そっちこそ、暁人とはどうなんだよ。あれから」
「連絡すらとりあってねーよ。あいつ、アタシのこと多分嫌いだからな」
直感が冴えている。女の勘ってやつだろうか。
「まあ、リンちゃんが居てくれればアタシはそれで満足だし」
「また悪夢見るぞ……」
「リンちゃんが見せるなら、大歓迎とはいかないけど見てもいいよ」
伊達は、飼い猫のことになると途端に盲目になる。悪夢退治中もそんな感じだった。
「やべ、今日服装検査かよ……ダッシュするから、またな!」
伊達は高速で校門を通り抜けた。注意する先生や生徒を、置き去りにして。でも、その頑固なところは伊達の長所かもしれない。短所でもあるんだろうけど。情熱があるのは、良いことだと思う。俺も、悪夢退治にもっと精を出さなきゃな。そう思いながら校門をくぐると、「あ、夢野くんじゃないですか」と聞き慣れた声が耳に飛び込んできた。
「浅野先生……」
「また一緒になりましたね! 教室まで一緒に、どうですか?」
「良いですけど……」
正直、先生と話すことがないのだが。
「最近、同好会の方はどうですか? 中々顔を出せなくてすみません」
「特にこれといったことは……大掃除をしたことくらいですかね」
「もうそんな時期ですか。クリスマス過ぎたら、あっという間に新年ですからね。小生も多少はゆっくり出来ると良いのですが……」
先生は溜め息をついた。色々と事情があるみたいだ。そういった点では、教師も生徒も変わらないのかもしれない。
「はーい、ホームルームを始めますよー」
俺は先生から離れ、そのまま席に着いた。月影の方をちらりと見やると、爆睡している。先生はそれに気がついているのかはわからないが、話し始めた。