放課後になった。望月は米津の説得に成功したのだろうか。
「望月さんを待って、今日の夢の主の説明をしますね」
それまでは暇なので、各自好きなことをしていた。と言っても、皆課題をしていたのだが。夜の時間を拘束される俺たちは、時間の有効活用を必然的に求められる。暇なときに課題をやるのも、その一環という訳だ。そろそろ課題が終わるな、という時に部室の扉が開いた。
「お待たせしたわね」
望月の息はあがっていた。ここまで走ってきたのだろうか。米津を撒くために? 勝手にあれこれ考えていると、「じゃあ、揃ったので始めますね~」と月影はタブレットを操作し始めた。
「今回の夢の主なのですが……実は、というか、まあ、オカルトに興味を示すのも致し方ないというか……な人なんですよ」
「米津くんのことかしら? おかしいと思ったの、今まで何の興味もなかったのに急に研究会に入りたいって言うものだから」
望月は、やっぱりねと一人で納得している。俺はというと、どう反応したものか迷っているところだ。
「つまり、米津なんだな?」
「そうです。米津くんにはお姉さんがいるらしいのですが、そのお姉さんに米津くんは執着しているというか……」
「シスコンってことか。それで?」
「でも、お姉さんは米津くん以外にも交友関係が当然ながらあります。それに嫉妬した米津くんは、お姉さんを殺めてしまう。それを後悔する……という悪夢です」
なるほど、つまり米津の蛮行を阻止しろということか。そういうことなら話が早い。今回はサクッと終わらせられそうだ。
「今回は、僕の出番はなさそうだな」
「私も、後方支援にまわるわね。星川さんと副部長でどうにか出来そうね」
二人で何とかなりそうな内容なのも事実だ。最悪、蛮行の前に夢を食べれば済む話だからだ。
「では、一旦解散にしましょうか! 深夜零時に、いつもの場所で!」
解散になったので部室から出る。そのまま校門まで歩くと、米津に出待ちされていた。
「やぁ。また会ったね、入れてくれる気にはなったかい?」
腕を組みながら問いかけてくる米津。
「望月がどう説明したかは知らないけど、今は募集してないんだって。部員は」
「ごめんね、米津くん。そういうことだから」
隣に居た咲夜が一礼し、俺たちは再び歩き出した。米津は不服そうな顔をしていたが、仕方ない。