目を開けると、照明がチカチカと光っていて目に優しくない。目を擦りながら体を起こすと、全員の顔が目に入った。俺が一番起きるのが遅かったみたいだ。
「獏! 起きるの遅かったから心配したんだよ」
そう言うのは咲夜。
「悪い、でも俺が起きるの遅いのは今に始まったことじゃないだろ?」
夢の中での力が強力であればあるほど、日常生活に支障をきたす。暁人が甘党である様に。一応俺もそれなりに強い力を持っているので、起きるのが遅いなどの弊害があるのだ。
「それはそうだけど……でも、いつか本当に起きなかったらどうしようか不安で」
「起きないことはねーよ、大丈夫だ」
咲夜の頭に手を置き、撫でる。それで大分安心したのか、咲夜は口を閉じた。
「米津くん、私明日風紀委員の当番代わって様子見てみるね。本当に解決したのかはわからないし」
「私も、同じクラスだから観察してみるわ」
咲夜と望月、二人から見られているのなら変なことは出来ないだろう。
「では、本日はこの辺りで解散しましょうか~。またお昼休みに!」
月影の一言で、俺たちは家路についた。
翌朝。たまには少し早く、咲夜と登校していた時のことだ。
「おはよう。研究会の件では随分迷惑をかけたね。もう入る気はないから安心して」
後ろから声をかけられたので振り向くと、様変わりした米津が居た。ざっくり切った耳たぶほどの髪、当然前髪も短めに切り揃えられている。それに着ているのは女子制服ではなく、男子制服だ。パッと見で米津だとわかるのは、ごく少数の人間だけだろう。
「米津くん、急にスタイルチェンジしてどうしたの?」
咲夜も、米津の変化に戸惑っている様だ。当たり前か。
「自分を変えようと思って、さ。望月さんにはサプライズしたいから、言わないでおいて」
どうやら悪い変化ではなさそうだ。このまま、姉離れが出来ると良いのだが。だが、それは俺の干渉する話ではない。米津羽琉。不思議な男だった。