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第100話

 目を開けると、照明がチカチカと光っていて目に優しくない。目を擦りながら体を起こすと、全員の顔が目に入った。俺が一番起きるのが遅かったみたいだ。

「獏! 起きるの遅かったから心配したんだよ」

 そう言うのは咲夜。

「悪い、でも俺が起きるの遅いのは今に始まったことじゃないだろ?」

 夢の中での力が強力であればあるほど、日常生活に支障をきたす。暁人が甘党である様に。一応俺もそれなりに強い力を持っているので、起きるのが遅いなどの弊害があるのだ。

「それはそうだけど……でも、いつか本当に起きなかったらどうしようか不安で」

「起きないことはねーよ、大丈夫だ」

 咲夜の頭に手を置き、撫でる。それで大分安心したのか、咲夜は口を閉じた。

「米津くん、私明日風紀委員の当番代わって様子見てみるね。本当に解決したのかはわからないし」

「私も、同じクラスだから観察してみるわ」

咲夜と望月、二人から見られているのなら変なことは出来ないだろう。

「では、本日はこの辺りで解散しましょうか~。またお昼休みに!」

 月影の一言で、俺たちは家路についた。


翌朝。たまには少し早く、咲夜と登校していた時のことだ。

「おはよう。研究会の件では随分迷惑をかけたね。もう入る気はないから安心して」

 後ろから声をかけられたので振り向くと、様変わりした米津が居た。ざっくり切った耳たぶほどの髪、当然前髪も短めに切り揃えられている。それに着ているのは女子制服ではなく、男子制服だ。パッと見で米津だとわかるのは、ごく少数の人間だけだろう。

「米津くん、急にスタイルチェンジしてどうしたの?」

 咲夜も、米津の変化に戸惑っている様だ。当たり前か。

「自分を変えようと思って、さ。望月さんにはサプライズしたいから、言わないでおいて」

 どうやら悪い変化ではなさそうだ。このまま、姉離れが出来ると良いのだが。だが、それは俺の干渉する話ではない。米津羽琉。不思議な男だった。



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