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第160話

 神谷を成敗したことで、残る敵は月見野鶯のみになった。

「いつ、共同で夢を見ますか?」

 彼女に関する情報は十分得られているので、今夜にでもと言いたい。が、流石に神谷の相手をしたその当日は厳しい。皆も心の準備があるだろうし。

「一週間後にしよう。皆、その間に武器や心の準備をしてくれ」

「わかりました」

 他のメンバーも頷いた。月見野鶯、確実に一筋縄ではいかないだろう。ラストバトルだ。気合を入れていこう。

「これが、最後の戦いになると思う。力を合わせて、絶対に勝とう!」

「ああ、元々負けるつもりで臨んではいないがな」

「では、今日からしばらく英気を養いましょう~! 解散です!」

 俺たちは各々の家へと歩き出した。


 月見野鶯は、どの程度こちらの動きを把握しているのだろう。部室を使っていないから、怪しまれる要因はある。とはいえ、もうすぐそこまで俺たちが迫っているとまでは考えていないかもしれない。こればかりは、本人以外にはわからないのだから考えても仕方がないだろう。雑念を振り払うように、ベッドに横になる。


気がつくと、朝になっていた。遅刻する時間ではないが、かなりギリギリの起床だ。慌てて制服に着替え、朝食をかきこみ学校へ向かう。

そこで、「ねえ、ちょっといい?」と声をかけられた。この声は米津だ。

「何だ? 早く行かないと遅刻しちゃうだろ」

「じゃあ、歩きながら話そう。すぐ済む話だから」

 米津は早足で歩きながら、言葉を重ねる。

「望月さんのこと、好き?」

「え?」

「だから。望月さんのこと、好き?」

 嫌いではないけれど……よくわからない質問だ。

「嫌いではないな」

 ありのままの言葉を返すと、

「そうなんだ。じゃあ、もし僕が望月さんに告白しても問題はないってこと?」

 ああ、こいつ望月のことが好きなのか。昔馴染みだとか言ってたもんな。それに望月は可憐な容姿をしているし、性格も良い。嫌いになる要素がない。

「何の問題もないぞ、頑張れよ」

「ありがとう。頑張るよ」

校門を通り抜けて、米津と別れる。それにしても、望月はモテるなぁ……。


***


 放課後、カフェに集まると望月の姿がなかった。

「あれ? 望月は?」

「用事があるから、後から来るそうだ」

 米津、行動に移すの早すぎるだろ。元から準備していたのかもしれないが。そんなことを考えながら、ソファに腰掛ける。

「皆揃ってから、今日の会議をしましょうか~」

 そう言いつつ、テーブルに課題を広げる月影。俺たちも他にやることがないので、そうした。無言の空間に圧を感じなくなってきたのは、このメンバーでいることに慣れたからだろう。


 それから十五分ほど経った後に、「遅れたわ。ごめんなさい」と望月が入ってきた。

「大丈夫だよ。何で遅れたの?」

「ええと、それは……まあ何でもいいじゃない」

 望月は顔を赤く染め、自分の定位置に座った。案外米津、成功したのかもしれないな。望月のこんな表情、見たことがない。

「えーと……じゃあ、会議を始めますか。月見野鶯に関する情報からおさらいしましょう」

 月影はタブレット端末に視線を落とした。

「月見野鶯、四十歳女性。私たちの通う月見野学園高校の理事長であり、月谷さんの元恋人。不老不死の研究を進める『トワイライト・ゾーン』の創設者でもあります。今判明している情報は、こんなところでしょうか」

「そうだな。俺が四大名家から聞き出した情報とも一致してる」

 他のメンバーも頷いている。

「彼女を説得するか、あるいは倒すかで計画を止めさせる——これが私たちの最終的な目的で間違いないですよね?」

「ああ。間違いないな」

 暁人がそう答えると、月影は目線をあげた。俺と目が合う。

「この目的を達成するためには、皆さんの協力が不可欠です。私は夢の調節など裏方で動くので、皆さん頼みましたよ」

「勿論! 任せて!」

 最終決戦ということもあり、咲夜は気分が高揚している様だ。

「では、作戦会議を始めます!」


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