§
翌日、俺の体調も大丈夫となって王都へと戻る事にした。
「そんなに早く戻らずともよいのに」
そんな風に言うのはルルララ様。その隣にはセレンと、妖精女王のアルルもいた。
『森を救ってくださった恩人をもてなさないままだなんて、酷いですわ』
「いいよアルル、もっと言って! せっかく宴を考えていたのに!」
「あはは……」
そう言ってくれるのは嬉しいんだけど、やっぱり気になるしさ。
王都を空けてけっこう経つ。それに、今回得られた情報を殿下にもある程度共有したほうがいいと思うんだ。
「それにしても、リンデンも王都に帰るのか」
俺達の側に立つリンデンが苦笑して頷く。これに兄のセレンは何か言いたそうだった。
「リンデン、ここに留まっても構わないと思うが」
「私は王都でやりたい仕事を見つけたんだ。そろそろ店を開けないと、お客さんが困るしね」
そう言いながら歩み寄った二人はしっかりと握手をする。スッキリとした笑顔で。
「また戻ってこい」
「勿論」
どうやらリンデンも後ろめたい思いとかが薄らいだみたいだ。
『それでは王都まで転移いたしましょうか』
一連のやりとりを終えた俺達にアルルが声をかけてくれる。今日ここに彼女がいる理由はこれだ。俺達を王都まで転移魔法で送ってくれるという。魔力も戻って可能になったとか。
妖精女王の肩にルルララも手を置いて魔力を供給している。俺達は用意された魔法陣の上に乗って、その時を待った。
「また何時でもおいで、マサ」
『歓迎いたしますわ』
「ありがとうございます! 必ず!」
約束を交わし、魔法陣が光を帯びる。不思議な浮遊感がある。
「それでは! 『テレポート!』」
声の後、一瞬体が浮き上がるような不思議な感覚があった後で視界が大きく流れていく。そうして気づいた時には王都近くの街道だ。
見慣れた城壁を見て、懐かしいような気持ちになる。そんな俺の肩にクナルがポンと手を置いた。
「行くぞ」
「うん」
大きな手と手を繋いでゆっくり進む道。帰ってきたんだって思える嬉しさがある。俺にとってここは、もう帰る場所なんだな。