「んっ……」
ふと目が覚めると、薄暗くぼやけた視界で見えたのは、見覚えのある天井と照明器具だった。
(あれ……? 俺……)
寝転がったまま、首だけを動かして辺りを確認すると、そこは間違いなく自分の部屋だった。
電気は消され、カーテンの閉められた真っ暗な部屋のベットの上で目を覚ました俺は、とりあえず、いつもの場所に置かれているはずの目覚まし時計に手を伸ばした。
(んっ……。七時……か。朝なのか……それとも夜……? いったい……)
まだ霞みがかったようにはっきりとしない頭でそんなことを考えて、時計を元の場所に戻そうとした俺は、すぐにベットから起き上がった。
「し、七時! って、えっ! お、お迎え! 玲央、真央……!」
焦りから血の気が引くのを感じたが、そんなことは気にしていられず、俺は手に持っていた目覚まし時計をベットへ放り投げた。
そして、大慌てで自分の部屋から飛び出すと、階段を駆け下りた。
「まおも、まおもー。もう、いっかい!」
「ずーるーいー。じゅんばんだよー」
「えっ? ま、真央! 玲央!」
階段を駆け下りる途中で、閉められたリビングのドアの向こう側から双子の声が聞こえてきたため、俺は急いでリビングのドアを開けた。
「あっ! りおくんだ」
「りおくーん!」
俺がリビングに入ってきたことに双子は気がつくと、同時に走り寄ってきて、俺の足に思いっきり抱きついてきた。
「りおくん、おはよう」
「りおくん、もうねむたくないの?」
「えっ……? えっ……?」
状況が理解できないままリビングを見渡すと、そこには瑛斗先輩と和兄が力尽きたように絨毯の上に座り込み、ソファーへ凭れ掛かっていた。
「え、瑛斗先輩……? それに、和兄も……どうして……」
心配そうに俺のことを見上げてくる双子の頭を安心させるように撫でつつも、目の前の状況に俺の頭は追いつけずにいた。
そんな俺に向かって、真央と玲央は制服のワイシャツの袖を引っ張ってきた。
「あのね! りおくんは、おつかれだから、ねかせてあげようって」
「みんなで、えいとおうじのおくるまのったの!」
「あとね! みんなでごはんたべたよ」
「あのね、あのね! あそんでまってたの。えらい?」
矢継ぎ早にどんどんと話し出す双子の話についていけず、俺は落ち着いて一つ一つ確認するように、ゆっくりと双子へ話しかけた。
「えっと、俺を寝かせてあげようって?」
「そう!」
「瑛斗先輩の車に乗ったの?」
「そう! えいとおうじとかずやくんが、ほいくえん、おむかえきたよ」
「なおくん、がっこうおそくなるって!」
「りおくん、おきないんだもん」
(起きない……? そっか俺、あのとき倒れて……)
俺はやっと、階段の踊り場で気を失ってしまったところから記憶がないことに気付き、瑛斗先輩と和兄が助けてくれたんだと理解した。