俺たちがいない一瞬の出来事だったらしい
生き残ったのはラフィナ女王ただ一人
俺を気に入ってくれて、色々目をかけてくれていたシュエリア王まで・・・
首脳たちがセイヴの襲撃により消された
悲しむ女王を慰めるレナたち
「すまない旦那様。俺たちがいながら」
「いや、ファンファンのせいじゃないさ。奴は次元が違う力を持っている。お前たちが無事でよかったよ」
「なぜ私達は無事だったのでしょう? 私達も姫なのですが」
「それは分からないが・・・。もしかしたら姫たちは強いから見逃されたのかもしれません。ここで戦うのは得策ではないと」
「ともかく今各国は首領を失い混乱状態です。恐らくそれが狙いなのでしょうが」
たとえセイヴを倒せたとしても、世界の混乱は続くだろう
下手をすればこれを機にクーデター、国家間での戦争もありうる
悩んでいると突如どこからともなく声が響いてきた
すぐに外に出ると、セイヴらしき男の姿が空中に大きく、ホログラムのようにして現れていた
「世界の諸君。各国の首脳を失い混乱していることかと思う。この世界は神を失い、神獣を失い、首脳たちを失った」
何を言っているんだこの男は
そうしたのは、お前たちじゃないか
「もはや滅びゆくこの世界。だが安心してほしい」
セイヴは微笑み、言葉を続ける
「僕がこの世界の礎となり、神となり、平和で何者にも侵されることのない安寧とした世界を実現させよう」
神になる? それがセイヴの目的なのか?
「この世界には悲しいことが多すぎるよね。魔物や魔人、魔王の脅威、貧困や戦争。そんな悩みも何もかもない世界を、僕が実現すると約束しよう」
「ふざけている! 確かに貧困や戦争はあります。しかし、私達はそれをなくそうと、どれだけ試行錯誤していたことか!」
クラ姫が激怒している
それも理解できる
シュエリア王はできるだけ貧困をなくそうと努力されていたしな
「僕が変えて見せる。この、最善の勇者セイヴが! 世界のセイヴァーとなろう!!」
セイヴァー、救世主だって!?
あの男が救世主だなんて思えない
子供たちを利用し、あのような仕打ちをする男が、誰かを救えるなんてはなはだおかしい
放送が終わり、俺たちは怒りをあらわにした
誰もが拳を握り、悔しさに唇をかむ
「探そう。セイヴを止めなくちゃ」
俺は目を開く
セイヴの目的が分かった今やることは一つ
奴を倒してこの混乱を完全に治める
難しいことかもしれないがやるしかないんだ
世界を見る
もはや隠れるつもりはないのか、各地にセイヴの部下の姿が見える
どうやらセイヴの使いとして各国に呼び掛けているようだ
そして、一人の姿がこの城の地下に見えた
「なぜ、ここに」
俺は瞬時にファンファンを連れて地下へ
すると声が聞こえて来た
「どうしたんだいレンタロウ! 何故この手を取らないんだ」
「さっきも言ったろう。もういいんだよ。俺は罪を償う。もう、十分だ」
「そんな、セイヴ様の理想のために頑張るって誓ったじゃないか」
「ああ、だけどさ、誰かの犠牲の上に成り立つ世界ってのは、本当に俺たちが夢見た世界だったのか? それじゃあ、俺たちがされたことと同じなんじゃないか?」
これは、地下に掴まっていたレンタロウと、恐らくその仲間の声か
しばらく聞き耳を立てることにした
ファンファンも俺の意図を理解して息を殺す
「ともかく、俺はもういい、ここでリタイアだ。すまねぇなエイジ」
「っ」
そっとのぞき込むと、エイジと呼ばれる少年の姿が見えた
利発そうな顔だが、その顔は今怒りに歪んでいた
「見損なったよレンタロウ。君とは相いれなかったけど、同じ志をもった仲間だと思っていたんだけどな」
エイジはそう言うと手をレンタロウに向けた
「まずい!」
俺はすぐにその間に割って入った
エイジの手から放たれる力
衝撃が体を貫く
「な!? 誰だお前は! なんで、なんで僕の力が効かない!」
俺は体を見てみる
衝撃が来た以外は特に何もない
「く、この! この!」
何度も俺に衝撃が走るが、何の痛みもない
何が起こっているんだ? 俺の体に
「なんで、なんで、なんでなんでなんでなんで!」
エイジは息を切らすほどに何度も俺に攻撃してきた
「レンタロウ君は分かってくれた。君は、本当はどうしたい? 本当に誰かの犠牲の上に成り立つ幸せでいいのか?」
「ああそうだ。それでいい。僕達を虐げた世界への復讐だ! 何も間違っちゃいない! そうだろうレンタロウ!」
「カズマさんの言う通りだぜエイジ。もう一度、俺たちがやったことをよく考えろ」
「くそ!」
エイジは目の前から消えた
「ありがとうレンタロウ君」
「ふん、助けてもらったからな。間違った道からよ」
彼はもう大丈夫だろう
エイジという少年も、理解してくれればいいが・・・