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第24章 カードショップ経営ってアリですか?③

 そうして、店の外に吊り下げられている看板をCLOSEからOPENに切り替えて店の中に戻る。すると、俺に続いて何人かの人間が入って来て———。


「らっしゃーせっ⁉」


 俺がレジに入った途端、一人目の客が棚に置いた32パック全てを持ってくる。これはアレだ。


「買い占めだ————‼」


『やっぱり安すぎたんだよ』 

『このゲーム個数制限とか器用なことはできないからな』

『まあそうなる』

『あるあるだな』


「マジか、そういうことしてくるのかこのゲーム!って、レジ打ちレジ打ち……」


 俺はバーコードリーダーでパック32パックをひとつひとつ手打ちしていく。


「えー、合計4640円でーす。あ、カードですね」


 俺は突如出現するクレジットカ―ドを読み取る機械にカードを差し込み、4640円と打ち込む。そして、カードを返せばパックを持って立ち去っていく客。


「……これはよろしくないな」


『せやな』

『これは炎上不可避』

『まあ、まだ10ボックスあるし』

『平均値で売ってこうぜ』


 そして、俺は新しい箱を開けてパックを3箱分補充して、値段を書き換える。とりあえず、290円。これかなら買い占めなんて起こるまい。



 結論。見込みが甘すぎました。あれから客は途切れることはなく、ものの数分で11箱売り切れてしまった。


「俺はショップがつけてる個数制限の大事さを今痛感してるわ……」


『カードゲーマーアドって言葉好きだから』

『平均値より安いとかアドの塊だからな』

『ついつい買っちまうよな』 

『ほれ、次のガイド出てるやで』


「あ、ほんとだ。えーと……」


 次のガイドは「3パック、パックを開けて新しいカードを入手しよう」。


「いや、今パックなくなったんだが?まあ、仕方ねえ発注するか」


 俺はゲーム内端末からとりあえず1箱を注文する。すると、さっきと同じように〝ドサッ〟という音共に店舗入り口に出現する段ボール。それを店の中に運び込み、レジの上で段ボールを開く。


「やっぱアレだな。どんなカードゲームでもパックを開けるっつーのはそれだけで心が躍るよなぁ」


『心が少年に戻るよね』

『ショーケースで買えばいいのも分かってるんだけどね』 

『でも、自分で引くのがイイッ……‼』

『剥くだけで楽しいの分かる』


「んじゃあ、とりあえず1パック目」


 俺はそう言ってから、パックを1パック手に取り開封する。そうしてカードが現れる。カードはなんてことないコモンカード、そしてカードの横にカードの価値1円なんて言うのが書かれてる。


「うわ、開封と同時に買取金額見えるのなかなか嫌だな」


『あー、うん』

『それは分かる』

『レアが出た!とかで喜びたいやで』

『まあ、分かりやすい指標だよな、金額って』


「分かりやすいっちゃ分かりやすいけど。うーん、俺は純粋な気持ちでパックを剥きてえ」


『ちなみに、初弾パックじゃないけどこの後出るパックで7桁万円の価値を持つカードが出るやで』

『あったあった』

『引いたカードの最高金額を@ふぉーむ内で競ってたなあ』

『あの瞬間は@ふぉーむ全員がパチンカスだった』


「あ、ゆったーでなんとなく見たな。最終的にはうぃんたそが総取りしてったやつだろ?」


『あれ?秋城見てないん?』

『うぃんたその枠だけでも見てると思ってた』

『秋城が見てない、だと……?!』

『どうした、明日は血の雨か?』


 俺は頬を掻きながら苦笑する。


「いや、今日の放送のためにカードショップやってみた。の枠だけ避けてたんだよな。でも、結果だけはゆったーで流れてくるわけで」


『なるほど』

『んで、結果だけ知ってると』 

『引いた瞬間のうぃんたそのリアクション可愛かったやで』

『後でしっかりと見るといいやで』


「もちろん、枠が終わったらしっかりアーカイブ見に行くぜ。んで、とりあえず3パック剥き終わった訳だが……」


 話しながらしっかりと手を動かしていたのだが———出ない。3パック剥いてレアの一枚も出なかった。


『うわ悲惨』 

『レアすら出なかったな』

『秋城のラック値実はうぃんたそ依存だったりした?』

『うぃんたそ~~~戻って来ておくれ~~~』


「うーん、あり得る。だけど、それで縋っちゃ男として情けなくないか?」


『気づいた?』

『情けない奴!』

『↑それは秋城がロリコンになってしまう』

『でもいるよね、一緒に居ると幸運値上がる人って』


「でも、その人が居ないと駄目っていうのは駄目人間な訳で。うぃんたそと友達続けるためにもそうはならないようにしたいな」


『とも、だち……?』

『お前がそう思うならそうなんだろうな』

『あれだけ秋うぃんアピしておいて……?』

『説明してください、俺は今冷静さを欠こうとしてます』


 ということで。マジでなんの撮れ高もなくパックを開封し終えた俺は次のガイドに目をやる。


「えー、次は「デュエルスペースを設置しよう」。お、ついに買えるようになったのか!」


 俺は意気揚々とゲーム内端末を開く。ゲーム内端末では店舗備品というタブが解禁されていた。それを開けば文字通り、追加のラックやショーケース、デュエルスペース用の机と椅子など店舗の備品が買えるようになっていた。ちなみに今の軍資金は14万2940円に対してショーケース4万円、デュエルスペース用机2万円、椅子1万円となかなか経営は厳しい。


「もっとこう、軍資金を用意してからこいつは店を始めるべきだったと思うんだ」


『10万じゃな』

『店舗設備も整ってないしな』 

『店舗設備完璧で10万ならワンチャン』

『↑現実は整ってないんですよ』 


「まあ言ってても仕方ねえ。と……?」


 端末の下の方に「今日の営業を終了する場合は終了ボタンを押してください」と表示される。


「よし、店舗改装は店開く前にやるかー、っと」


 終了ボタンを押せば、画面に表示される日報の文字。主にお客様の数やら売れたアイテムの個数、今日の黒字金額が書かれていた。


「初日は4万7440円の黒字か~。まあ、黒字ならまずまずじゃね?」


『なんだかんだで売り切ってるしな』

『初日から大赤字叩きだしたセイちよりましまし』

『このノリで店舗拡大していこうぜ!』

『そして次の日~』


 日報を閉じれば、画面の左端上に二日目と表示される。看板は当然ながらCLOSEになっていて。


「とりあえず店舗の改装と仕入れだな」


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