また、おでこ……。
「…………秋斗、さん!」
「ごめ……」
ぶっと頬をいっぱいに膨らませる。
秋斗さんの眉が下がり、ぽんぽんと前髪を直される。
「俺が、チビだからですか!?」
「へっ!?」
口を尖らせて
精一杯怒ったアピールをしながら秋斗さんの目をジトっと見る。
「俺が、チビだから、おでこなんですか!?
ちゃ、ちゃんと背伸びすれば、大丈夫です!!」
「へっ!?え、な、?ひ、陽向!?」
困ったような表情の秋斗さんの肩に捕まり、ぐいっと顔を引き寄せ、目をつぶって精一杯背伸びをする。
唇がふわっと柔らかいものに触れた。
あったかい……。
そっと薄く目を開けると
目の前に秋斗さんの真っ黒な綺麗な瞳があった。
自分のした事に今更ながら驚いて、慌てて秋斗さんの肩から手を離した。
「ご、ごめんなさいっ……あの、俺、」
う、うわぁぁぁぁあああ!!!!!
な、なにしちゃってんの!俺!
自分からキ……キ、キスしちゃうなんて……!!
欲求不満なヤツ、と思われたかも!
ぶわっと自分の身体から、湯気が立ちそうなくらい体温があがっているのがわかる。
熱いっ……
は、恥ずかしい……。
早く、逃げよう……!
「えとっ!あ、おおつかれ、ささま、ですっ、あの、メリーく、くクリスマスで、です!で、ではっ……!」
ぺこっと頭を下げて、急いで階段を駆け上ろうとしたけれど
すごい力で腕を引っ張られた。
「陽向。」
「あ、えと、」
ど、どうしよ、秋斗さんの顔見れないよーーー!!!
もーー、俺のバカー!!!
必死に熱くなった顔を手のひらで隠しながら、どうにか秋斗さんから離れようと身体をよじる。
「なぁ、鍵。」
「か、かぎ?」
俺の腕をつかんだまま、秋斗さんが手の平を俺の目の前に広げた。
鍵って、
俺の家の鍵のこと?
ん?
よくわからないままトートバッグの内ポケットから
家の鍵を取り出した。
「えと、か、鍵……で、す」
その鍵を奪うように取られると、
秋斗さんに引きずられるようにして階段を登り
家の前まで連れてこられた。
「えっ、あのっ、あっ、っえ??」
ガチャガチャッ!
バタン!!!
「あ、あの……っ、あ、秋斗、さん?」
真っ暗な玄関に秋斗さんの荒い息遣いだけが聞こえる。
表情が見えない。怖い。なにか、怒って、る?
カチャッ、ポスッ
シューズボックスの上に何かを置いた?
「あの、で、でんきっ」
秋斗さんの表情を見たくて、
電気のスイッチに手を伸ばそうとしたけれど、
その手は大きな手のひらに捕まり、どんっ!と身体が玄関のドアに押し付けられた。
!?
その瞬間、唇が何かに塞がれた。
「んっ……!?」
上唇と、下唇を交互に、マシュマロでも食べるかのように優しく啄ばまれる。
「っはぁ、ひな……」
口で息がしやすくなった途端、
耳元で秋斗さんの低い声がする。
その声にぞくぞくっと背中に電気が走ったみたいになった。