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第100話 初めてを君に⑤〜side秋斗〜

……っ!!!

やばいやばいやばいやばい!!

今、エッチって、言ったよな!

言ったよな!?

よっしゃ!!……っ、じゃ、なくて、えっと、何すんだっけ、えっと、なんか、順番、考えてたはずなんだけど……えっと……

頭が真っ白になって、一気に下半身に熱が集まってくる。

脳みそは完全酸欠状態だ。


「……ふふ、風呂……、沸かすよ。……いっ、一緒に、入る?」

巻き付いている陽向の手をぎゅうっと握りしめた。

「…………やだ、……恥ずかしい、です。」

そう言って頭をぐりぐりと俺の背中に押しつけてくる。


あーーー、だめだ、くらくらする。

落ち着け落ち着け、暴走すんなよ。


このままうっかり押し倒してしまわないように、

強く巻き付いている腕をぐいっと引き剥がして、

陽向をみないようにして、洗面所のドアを開けた。

お湯はりボタンを押すと、俺の心とは反したのんきな音声が流れ、お湯が噴き出してくる。



「あ、えっとタオルここ、出しとくな、多分、身体洗ってる間に、お湯、溜まるはずだから、……えっと、着替えとか……」

「秋斗さん……」

「なななな、なに?陽向……」

洗面所のドアの所に陽向が立っている気配がする。

必死に顔をみないようにしているから

陽向がどんな表情なのか、わからない。


「……あの、秋斗さん……そ、そんなつもりじゃ、なかった、です……か?」

へ……?

そんなつもりって、

どんなつもり?

意味がわからなくて

電車の中以来、初めて陽向の顔を見た。


……っ!

そこには真っ赤な顔をして、目には涙を溜めて、今にも泣き出してしまいそうな、陽向がいた。


え、えっ!?え!!!?

なんで!どうした!?

「陽向っ!?……どうした?大丈夫!?」

慌てて陽向のそばに駆け寄ると、その大きな瞳に留まりきらなくなった雫がぽろりと落ちてきた。

「……っ、秋斗、さん、……さっきから……なんか、俺のこと、見て、くれないし……秋斗さん、ご飯だけの、つもりだったのに……俺が、変なこと、言っちゃって、……びっくりしてるの、かな……引かれ、ちゃったかな……って……っく」

はぁ……俺。

最低すぎだろ。

1人で興奮して、1人で盛り上がって……。

陽向がどんな想いで、誘ってくれたかなんて、考えられなかった。

こんな、悲しい想いさせて。何が彼氏だ。


小さく震えている陽向の肩をぎゅっと抱きしめる。

「ごめん……ごめん、陽向。俺、陽向に会えて、嬉しすぎて……、家に陽向が来てくれたことで、興奮しすぎてた。……この前みたいに、暴走しないようにって、必死で。陽向の顔見ちゃったら、我慢できなくなりそうな自分が怖かったんだ。」


丸くつるんとした頬を親指でなぞり、こぼれ落ちてきている雫を指ですくった。

「…………、よかったぁ……。……でも、あの、俺も男なので、……その……、我慢とか、しなくて……いいです!俺、今日は秋斗さんに、抱かれに、この家に、きましたっ!」


顔がみるみるタコのように赤くなる陽向。頭から湯気すら見えそうだ。

ははっ……ほんと、告白してくれた時といい、

陽向の方が、肝が座ってる。

俺もいつまでもびびってないで、ちゃんと気持ち伝えねーとな。


「陽向。抱きたい。ずっと、したくてたまらなかった。だから、風呂から上がったら、覚悟しといて」

「……っ!!……おおおっ、お風呂っっ!は、はいってき、きききますっ!あのっ!着替えは!実家泊まってたので、持ってますっ!そそそそ、それじゃっあの!!またっ……失礼しますっ!!」

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