夜、寝る時、いつもお決まりの告白タイムが始まった。
最初に決めた、互いに1つずつ自分の話をするというアレだ。
寝る前に必ず毎晩何かしら喋ってきた。たとえば好きな食べ物だったり好きな場所だったり、行ってみたい所や思い出話とか、本当に簡単な話。
わりとシリアスな話は初日だけだった。
「うーんとじゃあ…初恋の話なんてどうですか?」
今日は私から提案してみた。
単純に、昇さんのそれがどんなだったか興味があった。だってこの人はあまり、恋愛というかそもそも他人に興味がなさそうだから。
「いいですよ」
「じゃあ私から。私の初恋はありきたりですけど幼稚園のときでした。同じ組のとても優しい男の子が好きで。幼かったが故に、ちょっと意地悪とかしちゃってたのを覚えてます。」
「え?意地悪を?どうしてですか?」
「え、よく聞きませんか?ほら、子供って照れ隠しで好きな子に対しては素直になれないって」
「そ…そうなんですか?ちょっと想像つきませんね……」
「え……あ、あとはほら、構って欲しくて意地悪したりいたずらしたりとかっ」
「………。」
真剣に、うーん…と考え込んでいる昇さんに、私は目が点になってしまった。
「んー……やっぱりちょっとわからないですね、その感覚。」
「まっ、まじですか?!」
「だって好きな人に意地悪するだなんて、本当にそんな人いますか?」
「いっ、いるんですって!ていうか大半がそうだと思いますけどね!」
「うーん…そうですかぁ。僕だったら、照れ隠しだとしても構って欲しかったとしても、さすがに意地悪なことなんてできませんね……絶対に嫌われたくないので…」
昇さんの優しくて柔らかくて緩やかな声色は、いつも私の耳に心地好く響く。
「昇さんは……本当に優しいんですね。」
そう、この人はちょっと、人より優しすぎるんだろう。
次に、昇さんが話す番になった。
「僕は小学校低学年のときです。恥ずかしい話ですけど、いろいろあってメソメソしていたときに慰めてくれた女の子ですね」
「へぇ!昇さんにもそんな過去が!」
「結構弱虫でしたし、友達もできず周りとも馴染めないような子供だったんですよ。子供ながらに辛いことが溜まり、限界だった時に、その女の子があることを言ってくれたんです。」
「あること?」
「はい。それがなかったら……僕は今ここに居ないかもしれません…」
え……?
どういうことだろうか、それは……
「その子は……昇さんになんて言ったんですか?」
「それは……秘密です、ふふ。」
「えー!ケチすぎませんかー?」
「僕の生きる指針なんです。あれから毎日、自分に言い聞かせてきた言葉で……」
「それすっごく気になるじゃないですか」
「ふ……今度萌さんにも教えますよ」
「今度なんですかー!」
最初の頃は、正直ちょっと嫌だなぁと思っていたこの夜のトークタイムも、気がつけば1つの楽しみになっていることに、最近気がついた。
明日は何を話そうかななんて考えながら眠りにつくくらいに。