「でもでも〜お!今は!ウチは庵さんにゾッコンなんだ〜っ!なんかこういう時ってさ、恋愛で1番楽しい時じゃない?」
突然いつもの明るい雰囲気に戻ってふふんっと笑う凪紗。
「で?じゃあ華子ちゃんはどうなの?今までどんな恋愛してきたのー?」
「っ、ひ、秘密だよっ!」
「はぁ?なにそれぇ?うちにはこんだけぶっちゃけさせておいて自分はそれぇ?酷くない?ねぇ?庵さん?」
凪紗が庵の腕を掴んだので、庵はどう反応していいか分からずとりあえず苦笑いする。
「まぁ……人それぞれ事情はありますからね……」
「あっ、じゃあじゃあ〜!庵さんの恋愛の話聞きたい!」
「いっ、いえ、私は何もっ……話せることなど得に……」
「えっ?庵さんまでそんなこと言うの?!もおー!2人してウチに喋らせといてズルいー!なんでもいいから話してよ〜!」
「……や、本当に……。とくに恋愛ってのをマトモにしてきてないんですよ、私は。」
「あぁ〜。なるほどぉ〜。なんか分かるかもそれ。確かに庵さんってそういうタイプに見える。クールで無敵で、一見女性慣れしてそうに見えて実は正反対の性格だったりして。だから一途になるととことん一途なんでしょー?華子ちゃんはどう思うー?」
「そ……そんなのわかんない。」
華子が気まずそうに視線を寄越して、目が合ってしまった。
はぁ……と、つい小さくため息を吐いてしまう村田。
なんなんだこの空間は……。
凪紗という女はもちろん悪い子じゃないが、1度デートしたくらいでまるで恋人気取りで周りを牽制するし、華子は華子で、いつまでも俺を諦めないし……
来なきゃ良かった。本当に。
助けろよ、昇!
という視線を昇に送るが、昇は完全に向こうのお喋りに没頭していてこちらを一切見ていない。
たまに萌さんの方は気にかけてるみたいだが。
「うん!たしかにこのコーヒーはこのお菓子たちに合うね!実は私、普段からコーヒーには結構こだわりがあって」
萌さんの声に目を向ければ、やはり想像通りの楽しげな光景が見えた。
「よかったぁ〜♡まだあるからどんどん飲んでね!」
「そんなに飲んだら寝れなくなっちゃうよ〜ははは」
そのとき、こちらの視線に気づいたのか、莉奈と目が合ってしまった。
逸らそうとしたが、もう遅い。
「村田さん凪紗さん華子ちゃんもこっちにおいでよ〜♪よかったら莉奈のお菓子とコーヒーの感想を聞かせて♡」
その後、皆カフェインを控えているからどうのこうのという理由でそのコーヒーは飲まず、莉奈の持ってきたお菓子を食べて喋った。
今までの異様な3人の空間を打破できたことにとにかく村田は安堵していて、会話はほとんど上の空だった。