『おい、大変だ!』
コンビニにお菓子を買いに行っていた怨霊(女子中学生のすがた)(命名:千歳)が、玄関を開けるなり叫んだ。
「何!? 何事!?」
俺は椅子から腰を浮かしかけた。千歳は元気みたいだけど、またトラブルがあったのか!?
千歳は一大事だと言うように騒いだ。
『チョコミントが売ってない! どこにも!』
「……チョコミント?」
『どのコンビニ探しても売ってないんだ! 芋とか栗のお菓子ばっかりになってる!』
俺は脱力した。そりゃ、千歳にとっては一大事なのかもしれないが……。
「季節物だからねえ……そりゃ、秋商品のほうが強いんじゃない?」
そう言うと、千歳はしょぼくれてしまった。
『そんな……もう残ってるチョコミント、お前が持ってきたやつしかない……』
俺は、作業が一段落したパソコンでAmazonと楽天を開いた。
「ネットで探すなら、そこそこあるよ。前に探してリストとかお気に入りにまとめといたから、見る?」
千歳は、目をぱちくりしながらパソコンまで寄ってきた。
『お前、仕事が遅れて忙しいんじゃないのか?』
俺は苦笑した。
「そう思うだろ? 当座の仕事はポシャるか他のライターに流れたからヒマです!」
『元気に言う事じゃないだろ!』
仕事できる状態になって、お詫び行脚(メールだが)しまくったが、あちらにも納期というものがある。十日前の仕事は、大半が他に流れてしまっていた。
まあ、今回は仕方ないと思う。これまで、寝込みまくる体調だったのに落とさなかっただけで奇跡だ。まあ、それがあったから今回大目に見てもらえて、当座の仕事が流れるだけで済んだのだが。
俺はフォローするために付け加えた。
「まあ、ヒマって言っても今だけ。契約打ち切りになったところはないし、次の仕事はよろしくって言われてるし、今日の午後には萌木さんのところから今月分の詳細が来るし」
千歳は不安げに聞いてきた。
『仕事なくならないのか?』
「なくなりはしないよ。まあ十日働けなかったからその分の収入は減るけど、藤さんから振り込まれたお金もあるしね」
千歳は財布を取り出した。
『ワシの金、分けてやれるぞ? 苦しい時は頼るって言ってただろ?』
「もっとピンチな時は頼ると思うけど、今回はいいよ。ほら、チョコミントリスト」
千歳を手招きしつつ、千歳が画面を見やすいように椅子を少し横に避ける。
『おお、いろいろある! でもどれも多いな……』
こないだ千歳にお菓子を買った時も思ったが、千歳は同じ種類のお菓子がたくさん入っているより、いろいろな種類のお菓子の詰め合わせが好きらしい。俺は提案してみた。
「楽天だと、送料高めだけど、チョコミント含むいろんな割れチョコが選べるところあるよ」
そちらを見せてみたら、千歳は気に入ったようだった。
『このチョコミント食べてみたい! あと、オレンジ入りのチョコとストロベリーチョコも一緒に頼みたい!』
「じゃあ、その三つ買おうか。大袋と小袋があるけど、小袋?」
『今回は小袋で頼む。うまかったら、チョコミントをでかい袋でまた買う』
「じゃ、注文しとくね」
『金、今細かいのがないんだけど、お釣りあるか?』
「多少は」
俺も財布を出して、千歳からお札を受け取り、お釣りを返す。
「あさってには届くみたいだよ。それまでチョコミント持つ?」
千歳は眉根を寄せた。
『微妙だな……チョコミントアイスならひとつあったから、買ってくればよかった』
「買ってくればよかったのに」
『チョコミントアイスもうまいけど、チョコミントは食べたいときに一口ずつ食べるのが一番うまいんだ』
真剣な言葉が返ってきた。千歳はチョコミントに対して本当に真剣らしい。
チョコミントに真剣になれる環境は本当に幸せだと思うし、そういう意味では、千歳にはいつだってチョコミントに真剣でいてほしい。
……チョコミントに真剣になるには衣食住の確保が必要だ。俺は引っ越しを無事に完遂しなければならない。
萌木さんからの案件が来るまで、引っ越しに必要な手続きをリストアップして、今できることはやって潰していこう……。