錦くんが誘ってくれたプラネタリウムは、宇宙関係の博物館に併設されてるやつで、展示も面白かった。
『ワシあの月面ジャンプやってみたい!』
「僕も次やりたいです!」
月面体験したり、宇宙飛行士がやるトレーニングをやらせてもらったり、宇宙食を買ったりして、それから予約してあったプラネタリウムに行った。
『映画館みたいだ』
まあ映画みたいなもんか、投影するのが平らなところか丸いところかの違いなだけで。
見に来てる人は結構いて、ワシは錦くんと二人で肘掛けのある椅子に座った。
「今日やるのは月の番組ですよ」
『満月とか?』
「月と関連ある星座とか、月がどう見られてきたかの歴史なんかもやるそうです」
『へえー』
プラネタリウムで映すの、番組なんだ。
会場が暗くなり、プラネタリウムが始まった。水のせせらぎの音の中、満月が映し出される。花や森の映像の中、月がどう潮の満引きに関わってるか紹介されて、心地良い音楽が流れていた。
満天の星空に星座が描かれて、それぞれがどういういわれの星座か静かな声で説明されて……。
うーん、きれいだし心地良いんだけど、心地良すぎてなんか眠くなってきちゃったな……音楽もえらくムーディーだし……。
でも誘ってもらったんだし、寝たらよくないってがんばってたら、肘掛けに置いてた手を、そっと握られた。
錦くんの手だった。
びっくりして錦くんを見たら、錦くんは、どきどきしてるような、期待を込めたような、そんな顔でワシを見ていた。
あっそうか……確かに、プラネタリウムって割とロマンチックな場所だもんな……錦くん、最初からこれを狙ってたのか……。
手を振り払うようなことはしなかったけど、ワシは困った。そうか、錦くん、ワシのことが好きなら手を握るくらいしたいよな。多分、それ以上のことだってしたいよな。
でも、ワシ、錦くんに手を握られて、特に楽しいともうれしいとも思わないんだよな……なんかただ、困るだけというか……。
ワシが困惑した顔をしたのに、錦くんも気づいたらしくて、しばらくしたら錦くんの手はそっと引っ込んだ。
プラネタリウムが終わった。錦くんは気まずそうな顔をしていた。
「え、えっとその……少し歩いた所にケンタッキーがあるんで、そこでお昼にしませんか?」
『う、うん』
うなずいた時、ワシのスマホが鳴った。電話?
スマホを見たら、南さんからだった。
『はい、もしもし』
「大変です! 和泉さんがミクズメさんにさらわれました!」