お昼を食べながら、ワシは和泉に、ミクズメさんと何があったか教えてもらった。
『えー、そこまでされて断ったのかよ、なんでしなかったんだ?』
そこで手を出せばやれただろ!
和泉は困った顔をした。
「いや、まあ、九さんに変なことするなって言われてたし、それに俺、好きな人がいるから」
『おい、その人に童貞捧げる気かよ?』
「いやそこまで重い気持ちじゃないけど、その……」
和泉は言い淀んだ。
『なんだ』
「……ミクズメさんはきれいだし、魅力的だったけど、いざって瞬間、これを好きな人とできたらもっと幸せなんだろうなって思って、そんな気持ちでセックスしたくなかったから……」
和泉はしおれたように言った。
え、そこまでの気持ち!? そんなにその好きな人に惚れてるのか!? で、でもその人恋愛に興味ないから和泉は告白とかしたくないんだよな……。
なんとかその人とくっつけてやりたいけど、ワシはその人のことを何も知らない。ワシは大盛りペペロンチーノをフォークで巻きながら、ぶーたれた。
『お前、そんなに惚れてる人なら、もうちょっとワシにその人のこと教えてくれたっていいだろ』
「言いたくありません」
『ケチ!』
別にケチとかじゃなかったんだ。そのことを知るのは、ずっとずっと先のことだったけど。