千歳が帰ってきて、開口一番言った。
『ただいま和泉! ごめんな、困らせてごめんな!』
「ど、どしたのいきなり」
何があった、千歳は錦くんを振ってきただけのはずだが!?
千歳は真剣な目で言った。
『緑さんに言われたんだ、ワシが錦くんと付き合うかもってことでものすごくいろんな人が注目してて、お前も困ってたって』
「あ、ああ、まあ……」
確かに困ってはいたが、多分千歳の思う困るとは違うやつだぞ!?
「まあ手洗いうがいしといで、それから話聞くから」
『うん』
それから、俺は千歳から、心霊業界の人たちがかなり千歳と錦くんの仲に注目してたことと、緑さんがかなり濁してだが俺が困ってたと千歳に伝えたことを聞いた。
『本当にごめんな。ワシ、狭山先生に、ワシは結構影響力強いから注意してって言われてたんだけど、それをすっかり忘れてた』
「そんな事あったの」
『だからさ! 錦くんでダメならワシ他の人でもダメだと思うからさ、もう誰とも付き合ったりしないって、緑さんに言ったんだ』
千歳は身を乗り出した。
「え、それは誰とも恋愛関係にならないってこと?」
『うん。無理しなくていいって言われたけど、ワシは恋愛をするのが無理だから、無理じゃないって言った』
「そ、そっか」
そ、そうだよな、もともと千歳は色恋ピンときてないんだもんな。告白されて、付き合ってみて、やっぱりピンとこなくて別れて、もういいやって思うのは妥当な流れなんだよな
……でも、それは俺とも恋愛関係にならないということを意味するわけで! わかってたけど、はっきり言われると心にくるぞ!
けど、少なくとも、千歳は他の誰のところにも行かないって、そう確約できただけでも、ずいぶんマシかも知れない。
「まあ、恋愛するのが無理なら無理にしなくていいしね。俺は千歳と普通に暮らせれば、それで満足だから」
『うん』
千歳は嬉しそうに頷き、俺はホッとした。
ただ、錦くんに関してはもう一幕あったのだ。