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第64話 憂さ晴らしの魔物討伐じゃ ~ソフィアサイド~

「うぅ……」


朝起きると頭がガンガンするのじゃ。

昨日はアスビモがいろいろと引っ掻き回してくれたおかげでむしゃくしゃじゃった。

ちょっと憂さを晴らそうとあやつとマリーを連れて飲みに行ったのはいいのじゃが……


「ねえさま、大丈夫ですか?」


ワシを心配そうにマリーが駆け寄ってくる。


「大事無いのじゃ……」


そうは答えてみたものの、頭痛は収まる気配がないのぅ。

いっそのこと頭を吹っ飛ばしたいぐらいじゃ。


「あれだけ飲めば、そりゃ二日酔いにもなるよ」


あやつは呆れた顔をしておる。


「あれぐらい、以前は問題なかったのじゃぞ。

 封印の所為じゃ」


「はいはい。

 封印の所為ですねー」


あやつはワシの事を適当にいなしおって。


「おぬしのその言い方が気に食わんのぅ。

 ワシをなめおってからに」


頭が痛いこともあって、ワシの顔はさらに厳しい顔になり、あやつに視線を向ける。


「悪かった悪かった。

 でも、次からは気をつけろよ。

 いい加減、自分の体の事を理解しろって」


同じことを繰り返すワシはアホとでも言いたげだ。

あやつはワシに向かって説教をしよる。


「説教なぞするな!

 ワシを誰だと思っておる!

 ……っいてて……」


思わず大声を出しあやつに文句を言う。

が、頭の痛みが増してくるのぅ。


「偉大なる魔王様で。

 元だけどな」


あやつはさらに煽ってくるのじゃが……

それを見ていたマリーが


「おい、お前。

 これ以上ねえさまのことを侮辱すると、ただでは済ましませんよ」


と間に割って入ってきおった。

マリーは本当に出来たいい子じゃのぅ。


「ごめん、冗談だから」


あやつもマリーの勢いに押されたのか、平謝りをしておった。


「ところでじゃ……

 いつまでこの街におればいいのじゃ」


先に進む目途がたたんのは如何ともしがたいのじゃ。


「あぁ……それは国王の使者が来るまでかな

 そう、カルムさんが伝言していったし」


はぁ?

あのじじいはまったく何を考えておるのじゃ……


「それだとまだしばらくここに居ないといけないのか?

 それは、嫌じゃ」


「嫌だと言われてもなぁ……」


アスビモとの出来事でだいぶ消化不良を起こしておるのじゃ。

こう暴れ足りないというかなんというか……


「アスビモの奴が一戦交えんからこうなるのじゃ。

 こうモヤモヤするので、暴れたいのじゃ」


「マリーもねえさまと一緒ですわ」


マリーもワシと考えが一緒とはのぅ。


「さぁ、マリーも後押ししてくれておるからのぅ。

 どこかでひと暴れしてこようぞ」


さあ、どうするおぬし。

ここで暴れてもいいんじゃぞ。


「そう言われても……

 ただ街中で暴れられても困るし、魔物退治とかの話が無いか聞いてみるか」


「その話、乗るぞ。

 暴れられるなら、どんなザコでもいいぞ」


退治とはいけ好かんが、暴れられるなら何でもいい。


「じゃ、街のギルドへ行ってみるか」


そうあやつが言うと、宿屋を出てギルドへ向かうのじゃった。

ギルドに到着すると、あやつがそこにおるギルドの人に話を聞きおった。


「あのぅ……

 この辺りに強力な魔物が出たりしていないですか?」


「討伐の話ですか?

 ところで、当ギルドへの登録はお済でしょうか?」


どうもギルドの話を受けるには何かしらの手続きが必要なようじゃ。

面倒じゃのぅ。


「そんなちまちまとしたことはどうでもいいのじゃ。

 ワシに見合う強い魔物はおらんのか」


ギルドの人に顔を近づけ睨みつけると、顔を引きつらせてビビッておったわ。


「そう言われましても……

 登録をしていただき、実力に応じた依頼を受けていただかないと……」


「ワシの実力がわからんのか?

 ここで見せてあげようぞ。

 ワシはま……」


と言いかけたところであやつが割って入る。

そしてワシの口を押えた。


「グッ…………ウゴ…………」


これでは声がだせんではないか。


「しっ。

 ここで魔王なんて言わないでくれ。

 それこそゾルダが討伐対象になっちゃう」


小声でワシの耳元であやつが囁く。


「ハハッ……ハハッ……ハッ……

 なんでもないですよ」


あやつは受付に取り繕うと、こう小声で話し始めおった。


「実は俺は国王の命を受けたものです。

 ここの近郊の魔物討伐を命令されてきたのですが、領主の騒動があって……

 ですので、領主から受ける予定だった魔物討伐の話が聞けなくて困っていました。

 近郊の魔物の情報ならギルドにあるんじゃないかと思ってきたのです」


受付はその話を聞いて納得したのか、近郊の魔物討伐情報をあやつに教えおった。


「ありがとう。助かるよ」


とあやつは受付に礼を言うと、ギルドを後にした。


「さてと……

 これだけあるようだけど、どれから行く?」


あやつはもらった情報を広げてワシらに見せてくれた。


「そんなの決まっておろう。

 全部じゃ」


「全部? それはいくらなんでも……」


あやつは何をびびっておるのじゃ。

こんなやつらはザコ中のザコじゃ。


「ヘルハウンドにスパイダー、ローパーにラドン……

 取るに足らんやつらばかりじゃ」


「まぁ、ゾルダに比べればそうなるけどさ……

 それでもこのラドンってやつはランクも高いし強いんじゃないの?」


ランクなんぞわからんが、全然物足りないのじゃがのぅ。


「まぁ、よいではないか。

 ではこのランクとやらの下の奴から倒しに行くぞ」


「マリーもお手伝いしますわ」


「わかったよ。低い方が数が多いんだけどなぁ……」


あやつはげんなりした顔をしてワシらの後を付いてくる。

数が多い方がド派手にやれるというものじゃ。


「今回はおぬしの出番はないから見ておけ。

 ワシの暇つぶしと憂さ晴らしじゃからのぅ」


「俺は憂さ晴らしに倒される魔物に同情するよ」


さてと、この間のアスビモの鬱憤を晴らさせてもらうからのぅ。

待っているのじゃ、魔物ども!

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