竜天島という島の奥地に来たワシたちじゃが……
そこにいたオムニスとやらは、どうやら以前会っていたようじゃ。
うーん……
思い出せんのぅ。
この場所とか島の風景はなんとなく覚えておるのじゃが……
なんとかごまかそうと話をするのじゃが、すべて見透かされておる。
ワシと相当会っておるのじゃろぅ。
性格も何かも分かっておるという感じじゃのぅ。
そうであれば、別に気にすことはないのかもしれん。
忘れたものは忘れたのじゃ。
思い出そうとしても思い出せんのだし、仕方がないってことじゃ。
その様なことを考えておる最中に、あやつはオムニスとやらにここに来た事情を話し始めたのじゃ。
「ラヒドに住むメルナール一族のお宝を以前にオムニスさんが持って行ってしまったらしく……
それを返していただけないかということで、ここまで来ました」
「ああ、あの街から持ってきたものね。
いっぱいあるから、どのことだろうな」
「いっぱいって……」
「定期的に襲っているんだ。
だって、ドラゴンが理性のある魔物だと思われるのも厄介だし。
この島にも近づいて欲しくないから、恐ろしい魔物だということも分からせたいし」
「はぁ……」
「あっ、でも人にはあまり被害が及ばないようにしているよ。
そこは配慮している。
建物とか、殺す気で来ている奴らは別だけど」
このオムニスとやらは、何気にいろいろと考えておるのぅ。
歯向かう奴らには容赦はしないし、案外ワシと似ているところもあるのぅ。
そこに親しみやすさを持っていたのかもしれん。
その話にあやつは、若干苦笑いをしておる。
「ほれ、おぬし。
あの……メル……ナールじゃったかな、狐耳の女。
あやつが渡したものを、オムニスとやらに見せたらどうじゃ」
「あっ、そうだった。
あの、これらしいのですが……」
あやつはそういうと、絵が描かれた一枚の紙を取り出した。
オムニスとやらは、それを見て、
「ああ、あれね。
確かに持ってきた、持ってきた。
たぶん、あそこのどこかにあるよ」
後ろにキラキラした物が山積みされている場所を指して、そう言ったのじゃ。
オムニスとやらで隠れていて見えていなかったのもあり、それを見てマリーは
「あれ、全部あの街から持ってきたものですの?」
とビックリしておった。
「一部だよ、一部。
さっき、話しただろ。
ゾルダが光るものに封印されたって聞いたからさ……」
と言うことはじゃ。
オムニスとやらは、ワシを探しておったのか?
なんか急に可愛げが出てきたのぅ。
「ワシを探し出して、封印を解こうとしておったのか?」
すると、オムニスとやらは、照れくさそうに
「……止せって……
そういうことを言われると照れくさいって。
だって……それが親友ってもんだろう……」
それなら思い出せなくても、ワシとオムニスとやらは、親友じゃ。
急に愛らしい思えたのもあり、オムニスとやらを持ち上げて、目一杯抱きしめてやったのじゃ。
「やめろよ……
はずかしい」
「いいや、やめんぞ。
ワシの事をそこまで思ってくれていたなんて、嬉しいのじゃ」
オムニスとやらの頬をスリスリして、頭をぐしゃぐしゃになるまで撫でまくったのじゃ。
「あの、ゾルダ……
それだけ思ってくれていた人を忘れるなんてどういうことよ」
はしゃぐワシの姿を見て、あやつはボソッと一言言いおった。
マリーも若干引いておる目でワシの事を見ておる。
でも、そんなことはどうでもいいのじゃ。
ワシの事を心配してくれる奴がいたとはのぅ。
「本当に昔から、そういうところあるよな。
表現が過剰なんだよ」
オムニスとやらはぐしゃぐしゃになった髪の毛を整えつつ、ワシにそう言ったのじゃ。
それから続けて
「いろいろな街を襲うたびに、光るものを集めてきたんだよ。
でも、持ってきても封印の解き方わからないし、聞く相手もいないしね。
放置しておけば、封印も劣化するのかなと思ってそのままにしておいたんだけど……」
と、キラキラ光ったものを収集していた経緯を話しおった。
「オムニスさん、そういうことなんですね」
「だから、ゾルダが復活した以上、これはいらないってことだから。
探して好きに持って帰っていいよ」
「ありがとうございます、オムニスさん。
ここから探させていただきます。
マリー、手伝ってもらえると……」
あやつはオムニスとやらにお礼を言うと、マリーを連れてガラクタの山へ向かっていきおった。
「なんでマリーが手伝わないといけないのですか?」
マリーは不満げな顔をしつつも、あやつに付いていったのじゃ。
マリーとあやつがメルナール……一族とやらの宝を探している間、ワシはオムニスと話をしていた。
「本当に心配したんだからな」
「悪いのぅ。
この通りピンピンじゃ」
「で、封印はまだ解けてないのか?」
「そうじゃのぅ。
あやつ……、あやつは勇者なのじゃが、それがカギになっておるというところまではわかっておる」
「あいつ、勇者なの?
そんな威厳もなさそうだったけど」
「まぁ、確かにそうじゃ。
弱いしのぅ」
「ゾルダに比べたら、みんな弱いよ」
なんだかんだで会話が弾むのじゃ。
この感覚は昔からの友と言う感じじゃのぅ。
その後も昔のワシのことやら、最近のオムニスとやらの話を聞いて盛り上がっておった。
その話を聞いて思い出したところも所々あって、そうじゃったそうじゃったと言う感覚になったのじゃ。
しばらくそんな話をしておると、あやつとマリーがお目当てのものを見つけたらしい。
二人で抱えてこちらに運んできおった。
「あったよ。
たぶん、これだ」
あやつは満面の笑みで、そのお宝をポンポンと叩いておる。
「マリーが最初に見つけたのですわ。
ねえさま、マリーを褒めて!」
マリーは相変わらず甘えん坊じゃのぅ。
ワシにすり寄ってくるマリーに対して、頭をなでてあげたのじゃ。
マリーは目じりが下がって嬉しそうにしていたのじゃ。
「さてと……
これで目的は終わりだね。
これを持って帰ろうか」
あやつはそう言うと、荷車に載せた宝を引っ張って船へと向かおうとしたのじゃ。
「ねえさま、メルナール一族のお宝は回収できましたし、さっさと帰って情報をいただきましょう」
「そうじゃのぅ……」
「えーっ、もう帰っちゃうの。
次はいつ来るの?」
「そうじゃのぅ……
近いうちに遊びに来るのじゃ」
「またそうやって100年近くこないんでしょ?」
そう言ってオムニスは膨れっ面をしておる。
「封印が解けたら、また来るのじゃ」
「オムニスさん、今度はマリーが連れてこさせるのでそんなに間を開けずに来ますわ」
そう話をして、ワシら三人はオムニスの住処を離れていったのじゃが……
何か忘れておる気がする……
…………
「そう言えば、ワシ、今回ほとんど戦ってないぞ!」
「良かったじゃん。
そんなに大事にならなくて」
「……良くないのじゃ。
戦い足りんのじゃ」
「そう言われてもなぁ……
平和的に解決できたのなら、それはそれでいいんじゃないの?」
「ドラゴンをバカスカと倒すはずじゃったのに!
戦う気でおったから、なんとなく後味が悪いのじゃ」
「そういうのは次回に取っておこうよ。
それこそアスビモとやりあうためにさ」
「うーん……」
なんか釈然としないのじゃ。
こうモヤモヤする気持ちが膨れ上がるのじゃが……
そんなワシの気持ちを汲むこともなく、帰路は何も魔物が出なかったのじゃ。
「魔物が出なかったのはゾルダの殺気の所為でしょ
そりゃ、殺されるのがわかっていたら、誰も出てこないって」