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第82話 ソフィアを討ち取れ ~ゼドサイド~

ソフィアとマリーが復活したとの知らせを受けてから、思いのほか時間がたってしまった。

早く戻ってくるように指示したはずのメフィストがようやく戻ってくるようだ。


その間に封印した武器を探させているが、こちらも成果が出ていないようだ。

どうやら封印した後、しばらくはこの城にあったようだが、その後は管理していなかったらしい。

本当に杜撰というか脇が甘いと言うか……

どこへ行ったかわからないとの報告だったため、叱責して方々を捜索するように指示した。

いちいち余が命令しないと動けないのは困る。

もう少し考えて動いて欲しいものだ。


あとは倒せるかどうかは別として……

ソフィア、マリーを倒すべく、付近にいる軍には通達をだした。

そいつらからも連絡がないってことは、返り討ちにでもあっているのだろう。

どいつもこいつも使えない奴らばかりだ。


そんなことを考えていると、近衛兵の一人が玉座の間に入ってきた。


「ゼド様、メフィスト様がお帰りになられました」


「うむ、分かった。

 こちらに連れてこい」


近衛兵は部屋を出ていった。

その後に黒のロングコートに黒スーツの出立のスラっとした男が入ってきた。

こいつがメフィストだ。


「ゼド様、お元気で何よりです。

 緊急の知らせとのことでしたので、キリがいいところで戻ってきました」


「メフィスト、ご苦労だった。

 だが、遅い。

 遅いぞ。

 至急だと伝えたはずだ。

 キリがいい悪いは関係ない。

 余が帰ってこいっていたのだから、すぐに帰ってこい」


あまりにも帰還が遅いので、叱責をする。

メフィストは叱責を受けているにも関わらず、喜びを浮かべたような顔をする。


「大変申し訳ございません、ゼド様。

 この失態は、次の任務で必ずしや、挽回いたします」


そう言いながらメフィストは膝をつき頭を下げる。


「次はないぞ。

 しかと心得よ」


「ハッ」


こいつも返事だけはいい。

成果は出してくれるし、余の言うことは聞くのでそばに置いているが……

もっと余が満足する成果を出して貰いたいものだ。


「ところで、私を呼び出したのは、いかなるご用件でしょうか?」


「お前、ソフィアは知っているか?」


「はい。存じ上げています。

 先代の魔王で、ゼド様が封印した奴です」


「そのソフィアが復活したとの知らせを受けた。

 マリーも一緒だ」


「あのゼド様が綿密に練られた完璧な計画で封印をしたのに……ですか?」


メフィストは余のことをかなり尊敬しているらしく、大げさな言葉で褒める傾向がある。

だが封印が完璧だったら、復活はしてないんだがな……


「ああ、そうだ。

 余の計画は完ぺきだった……

 だったのだが、こともあろうに勇者と共に行動していることで、封印が解けたとのことだ」


「えっ!

 元魔王ともあろう者が勇者と一緒ですと!」


ビックリしたのかメフィストは目を丸くしている。


「あーっ、本当に忌々しい。

 封印してもうソフィアのことは考えずに済むと思っていたのだが、そうもいかなかくなった」


「ソフィアとマリーと勇者……

 どう考えても、ゼド様の障害になりうります」


「そうだな。

 だから、お前を呼び戻した。

 メフィスト、お前がソフィアとマリーを討ち取れ」


「ハッ、仰せのままに」


「なら、さっさと準備して討伐に向かわんか!」


戻ってくるのも遅かったこともあり、余のイライラは頂点に達していた。

メフィストを一喝して、ソフィアとマリーの討伐へと向かわせた。

またメフィストは喜んだような表情になり、お辞儀をして、余の部屋から出ていった。


「ちっ……

 こう怒らないと動かないはみんな同じだな」


ボソッと小声で愚痴を言う。

余が自ら出ていけば、ソフィアとマリーなんかどうとでもなる。

ただ、すべて余がやっていても面白くもなんともないからな。

もっと余を楽しませてほしいものだ。


「あと、お前たち!

 メフィストについてけ!

 状況を余に逐次知らせるのだ!」


近くにいた近衛兵たちに、メフィストの監視を指示する。

近衛兵たちも慌てて、準備を始める。


「しょ……承知しました!」


「それと……

 まだ封印した物は見つからないのか!

 同じ印があるはずだろ。

 何もかもが遅いんだよ!

 手の空いているものはさっさと探してこい!」


激しい口調で近くにいる近衛兵たちを罵倒する。

ソフィアが復活してからと言うもの、このイライラがなかなか治まらない。

今の余であれば問題なく一蹴出来るはずなのだが……

こう何故イラつくのかもわからない。

早くイライラの基であるソフィアを何とかしないといけない。

その思いだけが募っていく。


「あーっ、もう思い出したくもない。

 ソフィアのやつ……」


ソフィアが魔王だった日々は、余にとっては耐え難い日々だった。

だから、だから封印したというのに。

余が全てを掌握するために、邪魔な存在。

ソフィアの奴め……

封印してなお邪魔してくるとは、本当に迷惑な奴だ。


余はソフィアを怖がっているのか?

怖がっていないのか?

このイライラは何なのか……

整理しきれない気持ちが余の心を埋め尽くす。

この気持ちを晴らすためにも何が何でもソフィアを討ち倒さねばならない。

そう心に決心をしたのだった。

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