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『カラオケ行こ!』

【作品情報】

製作:2024年/107分/日本

監督:山下敦弘

出演:綾野剛/齋藤潤/芳根京子

ジャンル:年の差ブロマンス任侠コメディ

(参考サイト:Wikipedia https://ja.wikipedia.org/wiki/)



【ざっくりあらすじ】

大阪市内の中学校で、合唱部の部長を務める聡実さとみ。彼のパートはソプラノだが、声変わりに差し掛かっているため今までのように声が出せずに一人悶々としていた。


そして市内のコンクールがあった雨の日、全身びしょびしょのヤクザ狂児きょうじに突然「カラオケ行こ?」と迫られる。


ほぼ強制的にカラオケショップに連れて行かれ、狂児の所属する組の組長が毎年カラオケ大会を開催するため、聡実に歌の先生をしてほしいのだという事情もほぼ強制的に聞かされる。

組で一番の歌ヘタと認定された組員は、組長によってハンドメイド刺青を彫られるらしい。


なお組長は、絶対音感をお持ちなのに画力はウンコであった。


ヤクザに関わりたくないと弱腰に拒否する聡実だったが、狂児の人懐っこさと己の無警戒さが仇となってずるずる歌のレッスンを続ける羽目に。さすがは元ヒモ。人に頼み込むのが上手い。


そんな中、聡実は部の後輩である和田わだから「部長が真面目に歌を歌っていない」と糾弾されてしまい、部活への足が少しずつ遠のいてしまう。

たしかに変声期に差し掛かってるとか、自分から言うのってちょっと気まずいよねー。


それでも狂児との交流の中で再び合唱へのやる気も見出して、聡実は最後のコンクールに臨むのだが――

会場へ向かう途中のバスで、狂児の車が思い切り事故っているのを発見。

しかも血まみれの誰かが担架で運ばれていた。


もうこれ、合唱コンクールどころじゃないんですが!?



【登場人物】

聡実:

誰も抗えない成長期に翻弄される、チャーハン好きな中3男子。

大量のヤクザにビビって狂児にくっついてる姿は、原作以上に可愛い。守りたい、この幼生体フリーザを。

基本は敬語でオドオドしているのに、根っこがうっかりなためヤクザ相手にも「カス」とか言っちゃうことも。

自室の時計(文字盤が寿司)がだいぶアレなデザインなんだけど、これは彼の趣味なのだろうか。


狂児:

歌ヘタな自覚があるも、X-JAPANの「紅」に並々ならぬ執念を持つイケメンヤクザ。

原作と比べて笑顔が爽やかで、中学生男子の扱いも抜群に上手くなっている。人たらし度が増しているような。

でも初対面で「よろぴく」とほざくところは原作通り。

なお「聡実に渡された合唱の教本通りに『紅』を歌う(お陰でキモさ5割増)」「使い方も分からないのにウキウキで音叉を買う」などのドジっ子な一面も、実写化によって芽生えた。つまり作中屈指の萌えキャラ化。


小林/ハイエナの兄貴:

原作では刺青怖さに、ヤマハの音楽教室に通い出したと言われている狂児の兄貴分。

しかし諸般の事情により、映画では「たんぽぽ音楽教室」に通っている設定に変わっていた。その結果、あだ名がハイエナからたんぽぽに。

後述の和田と並んで、実写化によるあおりを食らったキャラであろう。


キティちゃん恐怖症の兄貴:

選曲をミスったばかりに、一昨年のカラオケ大会で大嫌いなキティを彫られてしまった可哀想なヤクザ。実写になっても聡実に優しいし、組長の彫ったキティも変わらず化け猫にしか見えない。


和田:

聡実の合唱部の後輩。

原作では、変声期に差し掛かった聡実を気遣う程度の役割しかない脇役だったのに、映画では憎まれ役を一手に引き受けている。とにかく聡実へのウザ絡みがすごい。

この映画、本来悪役であるはずのヤクザが、なんか揃いも揃って可愛いからね。ごめんね。


聡実パパ:

原作ではお守りのクセが強すぎるだけだったパパですが、ここでも「傘のクセも強すぎる」「鮭皮がめっちゃ好き」という謎設定が生えている。

ひょっとして聡実君の部屋のクセつよ時計も、パパの趣味か?


栗山くりやま

上記のメンツとは異なり、完全に無から生えた映画オリジナルキャラ。

聡実君の同級生で、映画を見る部(何それ?)の部室にて二人で古い映画をよく観ている。

声変わり問題やヤクザに粘着されている等々、悩み多き若人な聡実君の心の拠り所ポジでもある。二人で映画を観てるだけのシーン、なんか味わい深いのよねぇ。



【感想など】

原作に存在すらないイベント・人物がポンポコ生えてきてるのに、それでいて疑似親子のような友人関係のような、聡実君と狂児のくっっっそエモい関係性という核だけは変わっていないぃぃー!


つまり何が言いたいかと言うと、これもこれで超面白いというか、むしろ原作より好みかも……まであるのです。


狂児が妙に固執している「紅」の歌詞に絡ませて「愛」というテーマも追加で織り込まれているものの、肝心の狂児が曲に固執する理由も特に描かれずで、壮大なテーマもいい意味で大して生きていないところも素晴らしい。

たぶん狂児も、シンプルに「紅」が好きなだけなんでしょうね。私もシンプルに「マツケンサンバ」が好きですし。


そんなわけで、小汚い大阪市での小規模な物語にふさわしい、地味でしょっぺぇ愛の描き方です。でもね、この作品の「愛」はこんなんで丁度いいんですよ。


なお原作では「元ヒモ」という肩書きにふさわしい、終始胡散臭くてチャランポランな印象もあった狂児ですが。

映画では、ヤクザをしているけれど聡実君という思春期ボーイへの配慮を忘れない、「理解ある出来た大人」感を漂わせているのもよき。


まあ原作の狂児をそのまんま実写化して中学生と絡ませると、観客の本能が不安を覚えると思われますので。これもまた良改変。


あと綾野剛さん、やっぱり無茶苦茶カッコいいですよね。

足が長いし程よく鍛えていらっしゃるから、細身のスーツがよく似合うー。逆三角形な体型もカッケぇぇぇー!


聡実君サイドの人間関係が広がっているのも、よかったです。

原作ではヤクザ屋さんと仲良くなっていることを周囲に明かしていなかった聡実君が、映画を見る部の栗山君には色々打ち明けられていて。


ちゃんと聡実君の安全地帯が、学校にもあるんだねぇとなんか安心しちゃった。

私は聡実君の伯母か。


あと聡実君にこじらせまくった愛憎を抱く和田のこじらせ具合も、思春期あるあるな感じで「ああ、分かるわぁ。こういうヤツいたなぁ」とノスタルジーに浸れました。


ってか聡実君、狂児といい和田といい、面倒くさい男に絡まれがち。

前世でなんかしたの?下手くそな刺青でも彫ってたんか?

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