――現実世界、白銀レインの部屋
ソラが、VRMMOからログアウトすれば、
「あっ」
と驚くくらいの状況ではあった。ただレインと手を繋いでログインしていた状態だったが、今はどういう訳か、彼女の背を横から抱え、その上で顔を自分の近くに引き寄せているからである。
驚きはしたが、過去にも似たような経験はある。
マドランナの時、起きたら抱き合っていたような状態だ。
(もしかしたら僕、リアルでもキス、したのかな)
良く考えたあの時、衝撃だけでなくぬくもりを覚えた。だとすれば、ここでも無意識にしたと考えるのが自然かもしれない。
顔がかぁっと熱くなるけど、今は、恥ずかしがっていられない。
「レインさん」
未だ目を閉じた侭の彼女に、心配そうに声をかけた。
――その瞬間
「ああ」
彼女は、声をあげた後に、ゆっくりと目を見開いた。
そしてレインは、自分がソラに横から抱かれている
そして、
「良かった――」
ソラがそう言って、心底安堵した表情を見せ、涙ぐむ様子を見せた瞬間、
我慢がもう出来なくて、
「――んっ」
レインは体を起こしながら、そのままにソラと唇を重ねた。
力強く、情熱的に。自分の姿勢もずらしながらだ。体を起き上がらせていき、座り直し、やがて正面から抱き合うような姿勢になった。
「んっ、ふ、んぅ」
「んんっ――」
――少しソラの体が後ろへと傾くくらいに
ソラはいきなりのレインの所為に、目を見開いて驚いたが、
次第に幸せそうに、目を細めた。そしてそのまま、彼女になすがままにされた。
……ただ受け身になったソラ、貪るように、思いを伝えるように、唇を強く繋ぐ。
――どれだけの時が流れたか
やっと、唇が離れる。
ソラを覗き込むレインの顔は、涙ぐみながら笑っていた。
「ソラ、好きだ」
「はい」
「本当に、本当に、大好きだ」
「僕もです」
「また、キスしていいか」
「はい」
そう言って、あの日出来なかった事を取り戻すように、またキスをする。言葉を間に挟みながら、何度も何度も。うれし涙すら交わるほど、強く、重ねて。
――いつ、自分も相手も、消えるかどうかも解らない世界で
この幸せが嬉しくて、今がどれだけ尊いかを知った二人は、子供のように抱きしめあいながら、唇を何度も重ね続ける。
「レインさん、好きです、大好きです」
「ああ、お願いだ、もっと言ってくれ」
「大好き」
「私も、好き」
色々あった二人だけど、
この日の夜の幸せが有る限り、全てを、乗り越えていける気がしていた。
唇重なり心は繋がる。
◇
だけど夏休みが終わる頃、
アイズーフォーアイズはサーバー攻撃を受け、サービス停止に追い込まれ、