求めて、足りなくて、満たされなくて、だから欲して。
――幸せを求める事が罪になるのなら
その罪へ、出来る事は。
第八章 母から君へのネバーエンド
――2089年9月9日金曜日
米国発、世界4位の同日接続数を誇る、ゾンビやクリーチャーが蔓延る終末世界を舞台にしたアポカプリスVRMMO、
その象徴的エリアである、荒廃した高層ビルが建ち並び、アスファルトは砕け、信号は機能せず標識は折れた、都市としての機能を失った、見捨てられたかつての栄華たる場所にて、
「Hu
「As stated in the
「Who
剣や斧といったファンタジーな装備でなく、銃火器や鉄パイプなど、アーバンチックな装備に身を固めたプレイヤー達が、同時接続限界の1万人集まり、展開していた。空には無数の武装ヘリが巡回する。
その都市の中央には、本来、存在し得ないものが存在していた。
――宝箱
この近未来で荒廃的な
「At
「Kxxl
罵詈雑言が続くが、それは英語だけではない。北米だけでなく、南米、アジア、ヨーロッパ、オセアニア、あらゆる地域の言語が飛び交い、自動翻訳でコミュニケーションとして成立していた。
皆、このイカれた世界が大好きで、毎日ゾンビとイチャイチャぶっ殺しあっていた仲間達、思い出は現在進行形、何人もがこの場所に救われた。
そんな
――アポカリプスその先へ行こうとしている
「
誰ともなく呟いたその一言が、一気に周囲へと広がっていた。一万人のファッ〇コール。バカ騒ぎする者もいれば、まるでミサで祈るように呟く者もいた。みんな、この最低なスラングに、命懸けの思いをかけていた。
――この世界を、失いたくないから
そして、時刻が、
CZOのメインサーバーがあるアメリカの、24:00になった瞬間、
『There
この
『God
その言葉と供に、1万人のプレイヤーにドーピングという形でバフがのった。
「
「If you
運営からの全面支援、その中で、宝箱から500メートル離れた地点に、黒くて丸い渦が、電光的な火花と供に現れる。その球形は徐々に肥大していって――一旦、ゴルフボール並みに小さくなったあと、
そこから一気に、弾けた。
「
「
ログイン地点に駆けつけた者達の目が、闇と供に広がった風圧で塞がれる。
VR上でも感じざるをえない衝撃から、目を開けば、
そこに既に、
彼は立っていた。
真っ黒なスーツ、真っ黒なマント、真っ黒なマスク、
その闇の上にうすらと黄金を
その姿は、
「我が名は怪盗」
アイズフォーアイズを騒がしていた稀代の怪盗と瓜二つであるが、
「――ナイトゴールド」
その名の通り、夜の闇のようにいでたち全てが黒く、
何よりも、その表情は、
「罪には愛を」
彼のように、
「世界剥奪の時来たり」
笑っていなかった。
見た目も、ステータスも、そもそもシステムそのものが異なる存在。
この世界に現れた、
「
歓迎するように、プレイヤー達は銃弾を撃ちまくった、だが、
「――
その一言と供に、すり抜けグリッチで怪盗は飛んだ。
ただしその高さは――
「
スカイゴールドを遥かに超えて、30階建ての廃墟ビルを凌駕して、
――自分に向けてミサイルを放ったばかりのヘリコプターと同じ高度になり
そのミサイルを、サッカーボールのように蹴り返せる程、ジャンプしていた。
――ZUGAAAAAAAAAAAN!
「|The
「
ヘリの爆発による爆風すらも利用して、そのまま、高層ビルの屋上へと降り立った漆黒の怪盗。直ぐさま襲いかかってくる、ヘリの機銃とミサイルの雨霰も、まるで”すり抜け”るようにかわしていく。
「
幾らか配置されていた屋上組が、もともと、高所から放つつもりだったロケットランチャーをぶちかました。だけどそれすらもするりと
地上にいた、1万人のプレイヤー達のほとんどをごぼう抜きにして、”怪盗ナイトゴールド”は、ついに高層ビルの高さから、マントをはためかせながら、ドット絵の宝箱にある広場へと降り立った。
だがそこには、
「|Welco
その手に、銃やナイフを持った、
「|Dance in
――1000人規模のゾンビ達が、待ち受けていた
このゲームの特徴である、ゾンビ化スキル。
アンプルを首筋に打つ事によるステータスアップの一つ、ゾンビと同等かそれ以上の力を得る。ただしその時間には限りが有り、効果が切れた後はすぐに復帰が出来ない、本来は詰めか、
だが、1万人もいるならば、
1000人単位での繰り返しであるならば、文字通りの
一方的に送られてきた、予告状に書かれていたPVPのレギュレーション――制限時間30分を、乗り越えられる。
「You
「
――ファントムステップで彼は飛ぶ
だが、先程より明らかに高さは足りない、このまま落ちてくる彼を飲み込もうと、ゾンビーズが、銃口を向けながら構えた、その時、
「
怪盗は、ビルの屋上で触れたプレイヤーから盗んだ、
「
ゾンビ状態の、解除アンプルを取り出した。
「――
シルバーキューティーのグリッチにより、
たった1個しか持てないはずの、レアアイテムは、
空を埋め尽くすほどに増えて、そして、
彼等の銃弾を受けてその全てが割れた。
「
「
解除薬を浴びた事により、ただのプレイヤーへと戻る際の、5秒のタイムラグ、
その硬直するプレイヤー達へ向けて、
よみふぃ、と――5秒に満たない短い歌を歌って。
「
巨大なよみふぃをこの世界に呼びだし、そして、
それすらも、無限に増やした。
「GYAAAAAAAAA!?」
「GAAAAAAAA!?」
うずたかく積もれたよみふぃは、広場へと侵入させない壁となり、残り9000人も寄せ付けない。
黒い怪盗は、悠々と、ぬいぐるみの上を歩いて行く。
そして、
「
巨大なよみふぃに、押し潰された隙間から、
顔を出した、女性のキャラクターから、
「
力無く、か細い、ただただ懇願するばかりの、
「
すすり泣く声による、
「
祈りが、聞こえた。
……
「
こう言った。
「
宝箱に手が触れた瞬間、
chaos Z onlineのシステム全てが、ダウンした。
アイズフォーアイズに引き続き、
怪盗ナイトゴールドは、この世界から、
――
現在、主犯とみられる白金ソラは、
全世界で、指名手配にされていた。