――久透リアの子供部屋にて
『結論から言えば、お母さんの計画は、愛故に間違える可能性が高い』
2025年のパソコンが動画を流し終えた後、2089年の技術の粋により、あらかじめ、このタイミングで再生されるように設定された、虹橋アイの語りが始まる。
『愛は確かに奇跡を起こすけど、同時に、大切な物を見失ってしまう事もある』
虹橋アイの言葉が、彼女を産んだ、母親の部屋に満ちていく。
『――お母さんは優しいの、
その言葉は穏やかで、
『だけど優しいから間違えるの、お母さんの言うとおりにすれば大丈夫だからって、そんなの、おかしいでしょ?』
だけど寂しそうに、
『お母さんだって、間違える事もあるのに』
せつなそうに。
……少し、沈黙を置いた後、彼女はうつむきながら、再び話し始めた。
『私はお母さんの胎内で作られたデザインドチルドレン、この母性的な性格も、作られたもの――母は私を母として産んだ』
彼女は、たんぱく質で出来たコンピューター。
『皆を包む、神様になってほしいってお母さんは言った、私はそれでもいいと思った、けどね』
だけどそんなのは、
『
人間だって、同じだ。虹橋アイとソラ達に、なんの違いも無い。
『……Eが付けば、なんでも良いって言われた、だから私は
どれだけ凄い力があろうとも、世界を悲しみから救う力があろうとも、
『――私は神様じゃなくてね』
虹橋アイは、
『みんなの、友達でありたい』
人間だ。
『……クロ君のシフォンケーキ』
彼女の瞳に涙が滲んだ、
ふるふると震えながら、アイは、
『みんなと一緒に、食べたいなぁ』
――その言葉を最後にして
彼女の映像は、ブツリと切れた。
……久透リアとの取り決めか、あるいは彼女の判断か、結局、久透リアを止める為に必要な情報の提供は無かった。
だけど、
「――予告状、作りましょう」
「ああ」
「日時は何時がいいですか」
「それはもう決まってるだろ――それよりも」
「ええ、どうやって
「仮に、虹橋アイさんのデバイスでログイン出来たとしても、そこからの安全が保証されてない」
「何かこの場所に、解決策があると思います」
「そうだな、ただ久透リアの過去を知って欲しいからだけで、アイさんがここに導いたとは思えない」
「探しましょう」
「解った、母上にも連絡する」
やるべき事は定まった、あとはそれを実行するのみ。
無論、ソラとレインがする事が、正義という訳でない。虹橋アイの懸念はただの杞憂であり、このまま、彼女による人類救済が行われた方が、ずっといいかも知れない。
だけど二人は正義の味方ではなく、
「――アイさんを必ず」
「奪ってみせる」
大好きな友達の為なら、盗む事も厭わない、
悪党である。
◇
翌日未明、再び、怪盗の捨てアカウントから、一つの画像が投稿された。
予告状
10月15日19時
RMT業者から世界を奪い返します
怪盗スカイゴールド
――決戦ははそう
アイズフォーアイズ20周年の日。