「では、今後の攻略会議を開始します」
アリスが正式メンバーになったあと、俺たち7人は一つ屋根の下会議をしていた。
「では、まずアンデスという街について」
「はい!」
「カケル。何?」
「アンデスってアンデスメロンから取った名前なのか?」
「うん。そうだと思う」
「ありがと」
まず1つ目の疑問解決。アンデスの名称の意図がわかった。今の時期――1月は――メロンの収穫時期では無いが、聞いただけで口の中が甘くなる。
「アンデスメロンってなんですか?」
「アリスは知らないよね。こう黄緑色で風船みたいで、白い網目がついてる食べ物だよ。総称がメロンなんだけど、そう思ってもらっていいよ」
「なんか美味しそうですね。アンデスに行けば食べられますか?」
「うーん。どうだろ? ソルダムにもプラムみたいなものはなかったからね……」
ケイは会話の先頭に立って、情報を共有していく。続いてアンデスの地形の話題になった。どうやら形状は円形をした巨大タウンみたいだ。
行く前からここまで情報収集しているケイ。さすがはリーダーだ。俺にこんな能力あったか? きっとポテンシャルとしては備わってないだろう。
「カケル? 難しい顔してどうしたの?」
「いやなんでもない。わからないことはなんでもケイに聞いていいんだぞ?」
「そ、それはわかっているけど……。なんか具合が悪そうです」
AIに心配されてしまった。どう答えればいいのか? さっぱりわからん。たしかに俺は体調不良で自宅療養している。
でも、それは明日休めば終わりかもしれない。残念ながら、ケイやラミア姉妹。バレンとフォルテのログインタイミングが掴めていない。
だから、最悪危険な場所にアリスを放置――言い方悪いかもだけど――することになる可能性もある。
「じゃ、じゃあ。俺からもう一つ。アリス以外のみんなに聞くが、何時頃ログインしているんだ?」
メンバーは考え込む。そして、一番手として切り出したのは、ケイだった。
「僕は大学があるから、日中はいないかな? だから、このギルドの主な活動時間は深夜帯が多い。休日は丸一日活動しているよ。で、ラミア姉妹はアイドル活動をしていてね。いくら休日でもログインできない時もあるから、このゲームに常駐しているのは、バレンとフォルテくらいだよ」
このリーダー。メンバーのプレイ時間も完全把握しているのか? 誰に似たんだ?
「あはは、気になる?」
俺の心の声聞こえてたのか!?
「カケル。なんか僕のお父さんに似てる。感情豊かっていうか、考えてることが顔に出るところが特にね」
「そうなんだ……」
この彼の発言は、心から喜べるものではなかった。だけど、一度会ってみたい気がする。どんな人なのかものすごく気になる。
「それなら、いずれ両親も一緒にこのゲームをプレイすることになってるし。そのうち会えると思うよ」
「わかった。楽しみにしとく」
「あ、あの……!」
俺とケイの会話の後に声を発したのはアリスだった。その表情は俺以上に感情で満ち溢れていて、どこか焦ってる様子。
これには、ラミア姉妹も一所懸命に落ち着かせようとしている。しかもアリスは今までにない大汗をかいていた。
「わたしは、どうすればいいんですか? まさか無計画っていうわけではないですよね? わたしは皆さんと違って生まれ持った武器はありません。支援しかできません」
「それはみんなわかってる。アリスはずっと俺にくっついていればいい」
「カケル……」
「へーん。カケルの野郎いい度胸しているじゃないか」
俺とアリスの会話に割り込んでくるバレン。俺が苦手なプレイヤー第2位に立つ彼は、ものすごく上目遣いで挑発してくる。
この人とは一緒になりたくない。でも、最終的にアリスの面倒を見る人だ。俺はバレンの機嫌を損なわせないように慎重に話す。
「バレンさんはアリスのことをどう考えてるんだ?」
「俺はなーんも考えてねぇよ。お前含めて大きなお荷物が増えただけだ……」
「お荷物!?」
なんてことを言うんだ……。他のメンバーは俺とアリスを歓迎してくれたのに、バレンだけは考え方が完全に違ってる。
こうなったらバレンにも応援されるように努力しなければ。と思っていると、突然『ビー!!』というブザーの音がした。
ほんの少しだけ騒がしかった空間が、一撃必殺のように静まり返る。
「今日の会議はここまで。念の為カケルに聞くけど。明日は何時頃来れそう?」
「えーと、明日から久しぶりに学校に行くから、夕方頃かな? 課題を終わらせてからログインするから」
「わかった。夕方頃ね。たしかラミアは明日の夕方に事務所の会議があるし。ファリナは出張ライブだったよね?」
「「はいっ!」」
アイドル活動って聞いてどんなもんだと思ったけど、かなりスケジュールがキツキツらしい。つまり、ラミア姉妹とは仕事が一段落するまで会えないようだ。
2人の仕事が落ち着くのは2月の頭らしいので、それまで彼女たちのセーブポイントはプルーンになることが決まる。
「じゃあ。バレンにフォルテ、カケルと僕は明日の20時集合ね。アリスはジークさんのところで待ってて」
「「わかりました!!」」
「では、全員解散!!」
「「ラジャー!!」」