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第167話 仲良し打ち上げ会2

「…………ぷはぁっ! かぁ〜っ! 生き返るぜぇ!!」


「薫、あんたねぇ。もうお酒飲んでるようにしか見えないんだけど」


「う〜るせぇ! 酔った勢いでキスするぞテメェ!」


「か、薫しゃんのキスッ!? そ、それなら私が欲しい……」


「……カオスだな」


「カオスだねぇ〜」


 飲んでいる飲み物が烏龍茶なこともあり、もはや飲み物の色も言動も行動も、何もかもが酔っ払いでしかない在原さん。


 隣になってしまったことで中田さんは見事に被害を受けてダル絡みされる始末だった。凄くウザそうな顔をしている。


「は〜ぁ。ひなちゃぁん。親友が冷たいよぅ。やっぱり私を甘やかしてくれるのはひなちゃんだけだよ〜!!」


「ひにゃぁぁぁっ!? か、薫しゃ……あぅ、いい匂いぃ……」


 と、てっきりずっと中田さんが被害を受け続けるのかと思っていれば。どうやら標的は蘭原さんに変わったらしく、こちらの席に来て思いっきり抱擁を始める。


 側から見ればただ蘭原さんがダル絡みされて可哀想というだけだが……彼女の幸せそうに溶けている顔を見てしまえば、止める気にはならない。止めるどころか、ずっと介抱してあげていてほしい。酔っ払いがこっちに来ないように。


「お待たせしましたー! こちらフライドポテト、唐揚げ、だし巻き卵、つくねになります! 残りもすぐにお持ちしますのでもう少々お待ちください!」


「あっ、ポテトと唐揚げ来た〜! 一緒に食べよ、ゆーし!!」


「あはは、そうだな。もうお腹ぺこぺこだ」


 マヨネーズ、ケチャップと共に現れたポテトを一本摘む。


 じゅわ、と手に細かな油がつくのを感じつつ、一口。出来立てということもあり死ぬほど熱く、確実に舌が焼けた。


「あっつ!?」


「え〜? もぉ、ゆーしの舌よわよわさんだ〜。そんなに猫舌だったっけ〜?」


「お、おま! 食べてないからそんなこと言えるんだぞ!」


「えっへへ、じゃあ食べさせてぇ」


「おう、分かった」


 ………………じゅう。


「ぴてぴぎ#こみひぬをそとぬむ!?」


「ほら見たことか」


 言葉にならない悲鳴をあげながら、由那は涙目で暴れる。


 確実に舌を火傷したな。まあそうなるのを分かっててポテトを差し出したのは俺だけども。ナメてかかって口を開けていたコイツも悪い。


「う゛ぅ、舌ピリピリするよぉ……」


「大丈夫大丈夫。俺も同じだからな。どうせ時間経てばすぐに治るだろ」


「ぴぃ……」


 どうやら懲りたらしく。由那はちみちみとコップに口をつけながら中身のりんごジュースを喉に通す。


 俺も同じようにオレンジジュースを飲んだが、舌に冷たいそれが触れると軽くピリピリして痛かった。多分すぐに委託は無くなるだろうから、少しの間辛抱だな。


「ふふっ、もぉ。由那ちゃん何やってるの? 出来立てなんだから熱いに決まってるじゃん」


「……そういう有美は、ちょっと慎重すぎない? さっきからつくねずっとふーふーしてるけど」


「う、ううううるさいな! 私は火傷したくないの!」


 食べ物が来て、各々盛り上がりが加速していく。


 俺も、由那も。寛司も有美も、蘭原さんも在原さんも。全員が笑顔。


 思えばこうやって全員集まる食事は、日帰り旅行に行ったあの時以来か。やっぱり由那と二人きりで楽しむのもいいが、たまにはみんなで集まってワイワイやるのも楽しい。


「ふふっ、ふふふふふ。みんな盛り上がってきたな。じゃあここで一つ、もっと盛り上がる提案をしようじゃないか!!」


 と、ここで。在原さんが蘭原さんから離れると、通路で立ち上がる。


「こういう場には、やっぱりこれだろうよ!!」


 ダンッッ! 在原さんはポケットから何かを取り出して右手に握ると、そのまま机の上を叩く。


 手からはみ出していたのは割り箸。ただし長さは握った拳から少しはみ出るくらいで、異様に短いものだ。





「王様ゲーム、やろうぜっ!!!」

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