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飲みに行こう(大人のお店)

飲みに行こう(大人のお店) 1

 鳥を呼び出すジョンのシルクハットを取り戻した後も、ムツヤ達は散らばった裏の道具を数個回収して、探知盤の石を埋めている。


「今日はユモトちゃんがナンパされてデートしちゃった宿場町でお泊りしましょうよ!」


 ユモトは恥ずかしい過去を言われてしまいあわあわとしている。


「あ、あれは違うんです!!」


「はいはい、わかったわかった」


 楽しそうな荷台の会話を聞いてモモはクスクスと笑っていた。隣にはヨーリィが座っている。


 なんと言うか、ヨーリィは何を考えているのか未だにわからないが、自由で、動物に例えるなら気ままな猫みたいだなとモモは思っていた。


 途中で運転をムツヤに変わってもらいながら、宿場町に着く。


 流石に人を泊めることを生業としている街なだけあって、夕暮れの後も賑やかだった。


 適当な宿屋に予約を取り、部屋に集まるとルーが何か企んだ笑顔で提案をする。


「もうキエーウも魔人も居ないことだし? 今日の夜は自由行動って感じでどうかしら?」


 なるほど、悪くない提案だとアシノは思った。たまには羽根を伸ばすことも必要だ。


「大丈夫ですか? 危険では?」


 モモが言うと、アシノは答える。


「まだキエーウの残党は居るかもしれんが、強襲出来る範囲に裏の道具持ちは居ないし、裏の道具持ちじゃなければお前達と衛兵でどうとでもなるだろう」


 そういう事でしたらとモモは納得した。


「まぁ、その前に連絡でも入れておくか」


 遠距離用の連絡石で、人を映し出す赤い玉が使えるか確認を取ると、すぐに返事が来たので、いつも通り壁にぶつける。


「だからー、アシノ先輩連絡は毎日って言ってるじゃないですか!!」


「うっさい。そっちはどうなんだ?」


 サツキに呆れながらアシノは話す。


「そうですねー、王都では魔人の残した武具の噂でいっぱいですね。国からはそれらを隠して所持した場合投獄、最悪処刑と重い罰になることが決まりました」


「まぁ、そうして貰った方が今の所はありがたいな」


「それで、魔人の残した武具は冒険者ギルドでの回収が始まっていて、一つ二十万バレシと交換らしいです」


 翼竜の討伐で百万バレシ、それも何十人規模で行って死ぬ危険もあり、報酬は分配ということを考えると、道具一つでその値段は破格だ。


「私もアシノ先輩と一緒に冒険したいです!! 暇なんですもん!!」


「はいはい、それじゃあな」


「ちょ、ちょっとま」


 アシノが赤い石を剥がすと、サツキの声は途切れてしまった。次はイタヤだ。


「おーアシノさん。どうもどうも」


「冒険者ギルドや冒険者たちの様子はどうですか?」


「そうだなー。皆、魔人の残した武具を見つけて一発当ててやろうと意気込んでるよ」


「それは良かったです。今の所どの様な裏の道具を回収しました?」


 アシノが聞くと、イタヤはうーんと言って思い出す。


「物凄く重くなる剣や、どこまでも伸びる槍、無詠唱で最大級の雷魔法を打てる杖なんかもありましたね」


「そうですか、引き続きよろしくお願いします」


「かしこまり!!」


 他の勇者達との会話を終えて、アシノは「さて」っと言い部屋を見渡す。


「それじゃあ私とモモちゃんのお酒つよつよさんチームはたくさん飲みに行きましょう!!」


 名前を呼ばれてモモは驚く。


「え、私ですか?」


「何? モモちゃん嫌なの? 私じゃダメなの!?」


 ルーは潤んだ瞳でモモを見つめていた。


「い、いえ、そういうわけでは……」


「やっぱムツヤっちの方が良いってわけ!? 私は遊びだったのね!!」


 そんな調子で騒ぎ出してモモは思わずあたふたとする。


「そ、そういうわけではありませんルー殿!! っていうか遊びってなんですか!?」


「モモ、だからソイツの言うことはまともに取り合うな」


 見かねたアシノがため息交じりに言う。


「やー!!」


 子供のように駄々こねるルーに、モモは言った。


「わかりました、ルー殿。お付き合いします」


「やったー!!! アシノはお酒よわよわさんチームだからどっかで飲んでてね」


「聞き捨てならんな……。いつ出発する? 私も同行する」


 アシノの言葉にルーは思い切りバカにした顔をする。


「お酒弱いのに無理して大丈夫でちゅかー?」


「うるせぇ!!」


 アシノがルーの頭をひっぱたくと「ぶべらっ」と言って縮こまった。


「私は留守番している」


「んー、ヨーリィちゃん連れて行きたい所なんだけど……。この街、夜に子供が歩いていると衛兵がうるさいから……。ごめんね!!!」


「気にしないで」


「お土産いっぱい買ってくるからねー!!!」


 そう言ってルーはヨーリィを抱きしめた。無表情のままグラグラと揺られている。


 モモとルー、アシノは夜の街へ消えていき、残ったムツヤとユモトはどうしようかと考えていた。


「僕達もせっかく街に来たんですし、どこか観光でもしましょうよ!」


 ユモトが珍しく積極的に誘ってきたので、ムツヤも乗り気になる。


「そうでずね!! ヨーリィ行ってくるね」


「いってらっしゃい」


 こうして2人は街を観光することにした。夜だと言うのに人がたくさん歩いていて活気がある。


 しばらく歩くとユモトがムツヤに話しかけた。


「何だか人が多くて疲れちゃいますねー」


「そうですね、人が少ない所にでも行きましょうか」


 そうして2人は路地裏に入る。抜けた先も明るかったが、何だか雰囲気が違う感じがした。なんと言うか、照明がピンク色だらけだ。


「おにいさーん、お店どうですかー?」


 突然声を掛けられてムツヤはビクッとした。振り返ると正装をした男がいた。

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