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サンライトレジェンド 3

「どこかに行っちゃったわね、猿が去るって所かしら」


「くだらないダジャレを言うな」


 アシノは呆れると同時に、皆に言う。


「もう猿を捕まえることは諦める。敵だと思って全力で破壊するぞ」


「かわいそうだけど、あまり時間も掛けてられないからしょうがないわね」


 ムツヤ達も頷いて、探知盤を見る。赤い点は移動し続けていた。


「しかしムツヤ、お前どうやって塔でアレを拾ったんだ?」


 アシノがふと疑問に思って聞いてみる。


「はい、塔では動いてなくて、魔力を込めると動くんでず」


 それを聞いてアシノは一瞬考え、まずいなと思った。


「って事は、誰かが魔力を込めたってことか?」


「もしかしてだけど、そうだとしたら魔力を込めた犯人も猿に逃げられちゃったってこと?」


 アシノとルーの会話を聞いて、ユモトも探知盤を操作しながら話す。


「なるほど、可能性はありますね」


「と言っても、魔力が切れるのが、いつになるかも分からん。その上、犯人も分からんのなら、現状は猿を壊す方向で行くしかないな」


 そろそろ猿の元へ着く、アシノはムツヤに言った。


「全力で壊すことを考えろ」


「わがりまじだ!!」


 ムツヤは詠唱をし、地面を強く踏んだ。すると、そこを中心に大地が揺れ、猿のもとまで一直線に地割れが起きて土塊の手が伸びる。


 猿は急いで口をふさぐと、手は崩れ落ちたが、そのせいで地割れから逃げられない。


 猿達は仲良く奈落の底へ落ちていき、ムツヤ達は話すことが出来るようになる。


「やっぱムツヤっちの本気はパないわ」


 地面が塞がり、猿は地中深くに埋まってしまった。


「アイツ等は魔力が切れた頃に掘り起こせば良いだろ、ラハガの村まで向かうぞ」


「安らかにお眠り、お猿さん達」


 アシノとルーは元来た方向へと歩き出し、ムツヤ達もその後をついて行った。




 中々の山道を一行は馬車で行く。街道になってはいるが、普通の馬だったら何回も休ませねばならないだろう。


「こりゃ村までまだ間に合わないな。この辺で野営でもするか」





 夜になり、結界を張り終え、さぁ寝ようかと言った時にルーが空を見上げて指差す。


「ほら、標高が高いからお星さまが綺麗よ!!!」


 皆もそれぞれ夜空を見上げた。星雲や星の川が綺麗に輝いていた。


「星が綺麗ですね」


 ムツヤがポツリと言うと、ルーはニヤリと笑う。


「ムツヤっち、そういう時は『君の方が綺麗だよ』って言うのよ」


「え、はい。ルーさんの方が綺麗ですよ」


「やーん、ムツヤっちに口説かれちゃった!!」


 ムスッとした顔をしてムツヤを見ているモモの代わりに、アシノがルーを引っ叩いて寝ることにした。


 朝になり、馬車に揺られて急勾配の坂を登る。観光地なだけあって、街道沿いならしっかりと魔物避けがされているので、そこは楽だった。


 しばらくすると、大きな湖が見えてくる。


「あ、海!! 海でずよ!!」


「ムツヤっち残念!! アレは湖よ!!」


 ムツヤはテンションが上がり言ったが、ルーに訂正されてしまう。


「ジンゼ湖、ギチットで一番大きな湖だな。アレが見えるってことはラハガの村も近いだろう」


 一行は馬車から顔を出して、爽やかな風を感じていた。ジンゼ湖のほとりまで来ると、一旦馬車を止める。


「あそこに見える大きな山が『ニャンタイ山』よ」


 ルーが指差す先には立派にそびえ立つ山が見えた。


「まぁ、あの山は魔物も出るし、道も険しい。一般人の入山は禁止されているがな」


「何言ってんのよ、私たちは勇者御一行じゃない!!」


 ルーは胸を張って言うが、アシノは訝しげに見つめる。


「じゃあ登るか?」


「疲れるからノーサンキュー」


 夏なので、ジンゼ湖で水遊びをする人も多く居た。そんな光景を眺めながら、村を目指す。





 村に着くと、ムツヤ達は冒険者ギルドへ向かった。勇者アシノということがバレて人々の注目を浴びる。


 ギルドマスターが出てきて、挨拶も早々に本題へ入った。


「早速ですが、ラハガでオオムカデが出たという噂を聞きました。私は魔人の残した武具との関係性を疑っているのですが、何か情報はありませんか?」


「そうですな、目撃情報は冒険者と住民からで、ここ一週間の間に上がっていますな」


「冒険者からは目撃情報があって、住人からは無いというのは妙ですね」


 アシノは何かを考える。その後も色々と話をしたが、特に有益な情報は得られなかった。


 冒険者ギルドを後にし、民宿で宿を取る事にする。勇者アシノの噂は広まり、民宿では早速サインを求められていた。


「私が思うに、確実に裏の道具を悪用しようとしている奴が居るな」


 お茶をすすりながらアシノは言う。ルーもまんじゅうを食べてうーんと唸った。


「悪用って言っても何のためなのよ」


「分からんが、オオムカデ伝説はオオムカデを矢で射抜いて倒した事になっている」


 アシノがその事を口に出すと、モモがハッとして言った。


「まさか、あのジョンとかいう男みたいに、自作自演で名を上げようとしているって事でしょうか」


「分からんがな。ともかく探知盤の反応を一個一個探すしかないな」


 ユモトが操作する探知盤を見ると、周囲に赤い点は3つある。


「えっ、嘘でしょ、一個ニャンタイ山の頂上にあるんだけど……。他の2つも山と森の中……」


 ルーが青ざめて言う。アシノはフッと笑った。


「登るしかないな」


「えっ、えっ、冗談でしょ? 冗談よね?」


「冗談に聞こえるか?」


「い、いやあぁぁぁぁ……」


 座っていたルーはそのまま仰向けに倒れてしまう。


「明日の朝早くに出発だな。今日はゆっくりするか」





 アシノ達がラハガに到着したその日の夜。月の光を浴びて、男が山に1人で居た。


「これを使って、俺が、俺が成し遂げるんだっ!!」

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