イズミは恐怖を感じ、次第に怒りが芽生えた。
「よくも兵長を!!」
雷や氷をありったけ発射するが、メボシが張る防御壁で全て弾かれてしまう。
「心配しなくても、すぐに同じ所へ送ってあげますよ」
そう言った後、メボシは気配に気付いてフッと笑う。
「ようやく来ましたか」
一番乗りはサツキ達だった。カミクガが帯電しながらメボシに突っ込む。
目にも留まらぬ連撃を繰り出すも、それに負けずに相手も動く。
「やりますねぇ!!」
メボシは楽しそうに笑う。サツキも双剣を構えて戦いに
二人からの攻撃をメボシは避け、防御壁で弾き、反撃に蹴りを入れた。
それを喰らい、カミクガは腕の骨が折れて吹き飛ぶも、回復薬を飲んでまた走る。
「やはり、裏の道具は素晴らしいですね」
そんな事を言うメボシの背後をサツキが取る。
「よそ見している場合か?」
剣に風を纏わせ、サツキは斬撃を与えた。
確実に仕留めたと思う。実際、剣はメボシを斬っていた。
「あなた方の攻撃なんて、避けるまでもない」
サツキは目を疑う。斬られた部位がみるみるうちに再生していくのだ。
そこで、じっと黙っていたクサギが目を見開き、魔法を発動させる。
分厚い魔法の壁がメボシを囲む。
「このまま潰れて貰うよ!!」
壁の厚みが段々と増し、圧迫する。
そんな状況だというのにメボシは不敵に笑って足でダンッと壁を踏む。
ガッシャンと音が鳴り、魔法の壁は粉々に砕けてしまった。
「嘘だろ……」
クサギは驚いて放心しそうになる。
「そろそろあなた達にも飽きましたね」
そう言うと、メボシはまず手始めに、カミクガを爆破で吹き飛ばして壁にぶつけた。
気を失うカミクガ。次に小さなナイフを取り出してサツキの両腕を素早く切断した。
「ああああああ!!!」
傷みで思わずそんな声を出すサツキ。
「サツキ!!」
クサギが駆け寄ろうとするも、メボシが発射した光線で左足が吹き飛んでしまった。
「っつあああああ」
そんな声を出しながら止血の魔法で足の血を止めようとする。回復薬はもう無い。
絶望的な状況にイタヤ達が到着する。目の前に立つメボシを見て剣を引き抜いた。
聖剣ロネーゼの短い刀身に魔力を込め、光の刃を作る。
「ウリハ!! サワ! 援護を頼む!」
「任せな!」
「わかった!兄さん!」
ウリハが炎や雷の魔法を打ち出し、サワはイタヤに身体強化の魔法を掛けた。
一気にメボシまで駆け寄り、光の刃で袈裟斬りにする。
「っ!!」
そんな攻撃を、メボシは腕にまとわり付かせた防御壁で軽々と防ぐ。
「舐めんなよ!!」
イタヤはメボシを滅多切りにし始めた。全て防御壁で弾かれてしまうが、何とかチャンスを待つ。
ウリハが背後を取り、斬りかかった。メボシを挟む形でイタヤと共に斬撃を与える。
メボシは防御壁を張る以外の抵抗をせずに立っていた。
「気は済みましたか?」
そう言うと同時に、ウリハ目掛けて光弾を飛ばす。避けきれずぶち当たった右肩からは血が吹き出す。
「ウリハ!!」
イタヤは走るが、その左足をメボシが蹴りを入れた。たったそれだけの事なのに、足は空に吹き飛ぶ。
「ぐがあああ!!!」
倒れ、回復薬を飲もうとするが、その手は蹴り飛ばされ、明後日の方向へ飛んでいった。
サワはそんな光景を見て恐怖に囚われる。勇者だというのに、力の差が圧倒的すぎた。
だが、自分がサツキさん達と兄とウリハさんを回復させれば体勢を立て直せると、薄い望みに全てを託すことにした。
サワの魔法により、天空から雷の槍がメボシ目掛けて落ちる。それと同時に目隠しの煙を撒いた。
煙には魔力の感知も妨害できる力があった。サワはまず、一番近くにいる聖女クサギを起こすことにした。
「無駄ですよ」
耳元で囁かれ、サワは血の気が引いた。そして、右足に走る激痛。メボシがアキレス腱を切り、サワは倒れる。
「安心して下さい、勇者の皆さんは殺しはしません。洗脳し、私の忠実な下僕になって頂きます」
「そんな事、させるかよ」
煙の中から矢が突き出た。メボシは最小限の動きでそれを避ける。
風魔法で煙を吹き飛ばすと、そこには元勇者トチノハとキヌが居た。
「これはこれは、国を裏切りし元勇者様」
ニヤリとメボシが笑う。
「あなたが魔人だったなんて、気付けなかった自分が恥ずかしい」
トチノハは手を前に突き出して爆破魔法を飛ばす。メボシはそれを抵抗もせずに受け止める。
「ずいぶんと余裕そうだな」
キヌは雷を纏わせた矢を連続で放つ。だが、どちらの攻撃もメボシに傷を負わせることが出来なかった。