そして、右の翼を大きく振りかぶり今まさにレックへとどめを刺そうとしている。レックも生きる事を諦めたのか生気の無い目で
「グラァァ…………ガアァッ!」
唸り声と共に力を込めた
「アイ・テレポート!」
「
俺とリリスは瞬時にレックの前へ瞬間移動し、全力でサンド・ストームを展開した。
死を覚悟していたレックは驚嘆の声を漏らす。
「なっ……ガラルド!」
「よう、レック。この状況、ヘカトンケイルの時を思い出すな」
言葉を失うレックを尻目に俺はサンド・ストームの回転を強めた。
今はとにかくレックを安全なところへ移動させて
「リリスはレックを安全な場所へ運んでやってくれ。息を整えて再びアイ・テレポートが使えるようになったら戦列に復帰するんだ。サーシャはスキル・グラビティで少しでも
俺の言葉を聞いたハンター達は一斉に了承の意味を込めた掛け声をあげた。帝国側を見捨てずに命懸けで援護している俺達を見て未だに困惑しているレックはリリスに肩を担がれながら呟く。
「お前ら一体どうして我々帝国を助けに……。それにガラルドの魔力……模擬試合よりも遥かに強力ではないか……」
「詳しく聞きたかったら生きてドライアドへ戻れ。ゆっくり説明してやるからよ」
「…………。」
レックはそのまま何も言わずに運ばれていった。
さて、強がったもののここからが本番だ。正直、
こうなると倒す事は諦めた方が良さそうだ。となれば逃走を考えなければならないが手負いの者もいる大所帯で一本道の洞窟を逃げ切るのは難しい。とれる手段は1つしかない。動きを止め、追いかけられない状態まで追い込むことだ。
「みんな聞いてくれ。
――――オオオォォォ――――
ハンター達は掛け声と同時に魔術と弓を一斉発射する。
大量の魔術と矢が両翼に衝突し、耳が痛くなる程の轟音が鳴り響く中、俺はサーシャへ指示を出した。
「サーシャ、今のうちに俺が高く飛び上がって目を狙う。黒猫の力を貸してくれ」
「黒猫の力を? あ、なるほど分かったよ!」
俺の考えを直ぐに察してくれたサーシャは黒猫を召喚し、
そして黒猫の背中に両足を着地させた俺はサーシャのスキル発動と同時に飛び上がる。
「ガラルド君を斥力で跳ね上げて……リパルシブ!」
黒猫の斥力を発生させるスキル『リパルシブ』で真上方向への反発力を得た俺の体は自身の跳躍との相乗効果でバネのように高く飛び上がった。
その間も
俺は両手にありったけの魔力を込め、
「
猛々しい砂の螺旋が
「ウギャォオォォォ!」
ぶつかった砂は飛び散り
弓と魔術が
もはや逃げる場所などないのに悪あがきだろうか? 曲がりくねった一本道を進み
その様子を見た俺は何か違和感を覚えた。追撃を受けるにも関わらず、わざわざ背を向けて奥へ逃げたことも不可解だし今更うずくまって停止している理由も分からないからだ。
俺は
卵の存在に気がついたリリスが気の毒そうに呟く。
「脅威と恐れられる
リリスの言う通りかもしれない。勝手に入ったのは我々もといレック達であって
「
正直かなりの報酬が得られそうなレア魔獣だから反対されるだろうと思ったが予想に反しハンター達は誰1人として反対しなかった。そして、リリスが前に出てきて俺に言った。
「ドライアドの皆さん、いえ、シンバードの皆さんはもうすっかりガラルドさん色に染まっちゃっていますからね、こうなると思いましたよ。さぁ、早く帰ってご飯にしましょう」
「みんな……。ありがとな」
どうやら思っている以上に俺という人間は皆に支えられ、慕ってもらえているみたいだ。照れくさいし、ニヤついてしまいそうで顔に出ないかが心配だ。今いる場所が表情の見え辛い薄暗い洞窟でよかったと思いながら俺はレック達と共にドライアドへと戻った。