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第328話 久々の魔力・魔量測定




「それじゃあ最後に1番重要で1番シビアな話をさせて欲しい。それはアスタロトとの直接対決についてだ」


 シリウスは今日の話し合いの中で一際険しい表情を浮かべながら語り始める。


「ガラルド君達も知っての通り、アスタロト個人の強さは尋常ではない。並の戦闘力を持つ者を数多くぶつけてもいたずらに死者を増やすだけだろう。それは魔人の体を捨てて人間となったクローズも同じかもしれない。クローズは魔人の体だった過去より数段弱くなったとはいえ、それでも人間の体で腕の立つサウザンドを追い詰めた過去がある」


 記憶の水晶で見たアスタロト達は絶望を感じるほどに強かった。正直、今の俺達が過去のグラドより強いとは言い切れないし、今のアスタロトが過去より強い可能性も大いにある。


 シリウスの正直な感想が聞いてみたい。大まかでもいいからシリウスから見た強さの比率を尋ねてみよう。


「憶測でいいから教えてくれシリウスさん。俺達とアスタロトの間にはどれほど力の開きがあるんだ?」


「君達を凹ませたくないが、具体的な数字を言った方が覚悟が出来るのかもしれないな。いや、今の君達なら相手がどれほど強大であろうと心が折れる事はないか。まずは君達の基礎能力を知っておきたい。『全知のモノクル』で君達の魔力と魔量を教えてくれないか?」


「あ、僕がちょうどシルバーさんから預かってます。それじゃあ今から順に光を当てて調べていきますね」


 グラッジが全知のモノクルを起動させようとすると、サーシャが今までに見せた事がないような俊足でグラッジからモノクルを取り上げた。まるで黒猫サクのような初動の速さに驚いているとサーシャが頬を膨らませながらグラッジを叱る。


「ちょ、ちょっと待って、グラッジ君! 全知のモノクルが体重とかディープな情報まで開示しちゃうものだって忘れたの? サーシャが使うからジッとしてて!」


 俺自身忘れかけていたモノクルのサブ機能に2人が振り回されていて面白い。リリスも冷静を装っているが、顔には安堵の相が浮かんでいる。


 サーシャは早速皆の数値を読み上げ始めた。


「まずサーシャの魔力は3200 魔量は4000……えっ? 以前に測定した無纏むてん状態のガラルド君を越えちゃってる……サーシャはこんなにも成長できたんだ、えへへ」


 確か船の上で無纏むてん状態の俺を測った時は魔力3300魔量3000だったはずだ。確かに総合的にはサーシャに負けている。だけど、あの時は海岸でソルと戦った後だったから少し疲れていたんだ……と心の中で言い訳をさせてもらおう。


「次はリリスちゃんを測定するね。えーと、えっ? 魔力が8500魔量が7500もあるよ。以前測った時よりも両方3倍近い数値になってる……どういうこと?」


 驚き目をかっぴらいたサーシャが何度もモノクルを読み返して確認している。だが、数値が3倍にまで膨れ上がっていたら驚くのも無理はない。リリスは自身の手に魔力を纏わせて見つめると自分なりに成長の理由を考察する。


「私が急成長できた理由は恐らく女神の魔力とリーファ時代の魔力が混ざったからだと思います。自分の中に本来の魔力と近似した別の魔力を感じる時があるんです。髪が金色になって記憶が全て戻った瞬間に強くなったのだと思います。まだ完全ではないと思いますが」


 記憶の水晶で見た五英雄はどうしてもグラドとディザールの強さが目立ってしまったがリーファも相当なものだった。


 もし、元々のリリスの強さにリーファの強さが丸々加算されれば魔力8500どころの話ではなくなりそうだ。リリスも『まだ完全ではないと思う』と言っているし、前世の魔力が完全に融合する時が楽しみだ。


 そして、最後に双纏そうてんレッドモード状態の俺とグラッジの魔力・魔量を纏めて測定してもらうことにした。サーシャは全知のモノクルをこちらに向ける。


「イグノーラでの死闘や七恵しちけいの楽園での戦闘訓練を人1倍重ねてきたガラルド君とグラッジ君の成長も楽しみだね。それじゃあ照射するよ、えいっ! えいっ! まずグラッジ君の数値は魔力が13000 魔量は30000だね、魔量も成長しているけど魔力の成長が著しいよ! 次にガラルド君は……魔力が20000 魔量も11000あるよ。やっぱりレッドモードはとんでもない力を生み出しているんだね。ちょっと怖いぐらいだよ」


 前に船の上で測った時は双纏そうてん状態の俺が魔力6600魔量6000 グラッジが魔力5200魔量25000だったはずだから相当成長しているようだ。


 グラッジは俺の方を見つめて「やっぱりガラルドさんの火力は凄いですね、敵わないや」と褒めてくれた。だが、化け物じみた魔量を持つグラッジの方が凄いのではないかと思う。


 グラドもグラッジと同じように全属性の武器を生み出せて、魔獣寄せを持っている。察するに2つのスキルのどちらか、もしくは両方が膨大な魔量を生み出すトリガーになっているのではなかろうか? もちろん本人たちの積み重ねてきた努力も大きいとは思うが。


 この結果を見たフィルは「3兄弟の中で1番戦闘の素質が無く、将来性が無いと棄てられたガラルド君が1番努力して強力な魔力を得ているのは本当に凄いと思う。心から尊敬するよ」と褒めてくれた。


 小さな頃から強くなるためにひたすら特訓を続けてきた誇りはある。それに消耗した身体を回復させる為に村で1番多くの飯を食べたり、強くなれる栄養があると期待して不味い魔獣の肉も沢山食べてきた。


 更に休んでる時間が勿体ないと考えて魔力練度を上げる為に瞑想に時間を費やしたりもしていた。とにかく努力と工夫を重ねてきた、頑張った甲斐があったというものだ。


 思っていた以上に成長していたから俺達はかなりテンションが上がっていた。けれど、シリウスの表情は相変わらず険しいままだった。これだけ成長した俺達でもアスタロトの力を削る事はできないのだろうか?


 シリウスは大きく深呼吸をすると自分なりの見解を伝え始める。


「ガラルド君の魔力20000もグラッジ君の魔量30000も間違いなく大陸の人間の中で最強クラスの数値だろう。だが、それでもアスタロトには遠く及ばない。私の見立てでは奴の魔力も魔量もゆうに100万は超えているだろうからね」





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