「聞きたいことがあるんです。さっき話していた人狼族のこと。財前さん、詳しく調べたって言ってましたよね?」
「人狼族?」
私の質問が不意だったのだろうか。財前はきょとんとした表情を浮かべていた。
「『村が襲撃されて数人だけ助かった』って話してましたけど、そもそもどうして襲撃されたんですか?調べたけど情報が見られないんです」
そう、襲撃のことは私も知っていた。以前調べたが、なぜかニュースサイトにアクセスできなかったのだ。財前は困惑の表情を浮かべた後、ポリポリと頭を掻きながらぎこちなく答えた。
「…血が欲しかったんだろ」
「血を?どういうことですか?」
「どういうことって、お前…。今まさにミレニアが人狼族の血を利用しまくってるじゃねえか。それが、襲撃された理由だ。ただ、襲撃でほとんど殺されちまって、生き血はあまり手に入らなかったみてえだがな。人狼族の血はな、リサイクルできねえんだ。つまり、血の力を得たいなら人狼族から直接奪わなきゃなんねえ。だから狙われたんだよ」
──やっぱり。
ずっと抱えていた疑念がやっと解けた。人狼族の村を襲撃したのはミレニアだったのだ。思いを巡らせる私を見て、財前は不思議そうに首を傾げる。
「おいおい、どうした?」
「い、いつ?人狼族の村は、いつ襲われたんですか?」
私は声を震わせながら、財前に尋ねた。財前は私の驚きを察したのか、わずかに表情を引き締め、落ち着いた口調で続ける。
「…十年前だ。当時はかなり大々的に騒がれたが、今となっちゃあ報道規制がかかっているのか、まともに報じるメディアなんてありゃあしねえ。あんな人道に反したことやってる団体だが、報道関係はもちろん、政府や警察内部にもミレニアの信者がいるって噂だ。まともにミレニアを追ってるのは、今じゃSPTぐれぇなもんだろうな」
──十年前。
確か焔が「焔」と名乗り出したのも十年前から。村が襲撃された後、彼は名前を変えて生きてきたのだろうか…?
「…大したもんだぜ、あの焔も」
「え?」
突然、財前が「焔」と口にして、私は思わず彼を見上げた。
「ミレニアにとっちゃあ、ほとんど存在しねえ人狼族の生き血は、喉から手が出るほど欲しいはずだ。SPTなんて入ったら敵に姿を晒すようなもんだろ。そんな危険を冒してでも入るなんて正気の
言われてみれば確かにそうだ。万が一拉致されるようなことがあれば、ミレニアは焔の血を容赦なく奪って利用するだろう。
でも、なんだろう。この違和感は…。
「あ?どうした?黙っちまって」
財前が
──ミレニアにとっちゃあ、ほとんど存在しない人狼族の
もしかして今、ミレニアが利用している人狼族の血は…。
「おいって!聞いてんのか!凪?」
財前の声に、私はハッとして前を向く。
「大丈夫か?お前」
心配そうに私の顔を覗き込みながら尋ねる財前。次の瞬間、私は思わず彼の和服の胸元を両手で強く掴んでいた。
「財前さん、教えてください!さっき『ミレニアは人狼族の生き血が欲しい』って言ってましたよね!?」
私の必死さに動揺したのか、財前は驚いた表情を浮かべる。
「あ、ああ」
「つまり、ミレニアは今
私は焦りと真剣さが混ざったような眼差しを財前に向ける。財前は一瞬戸惑ったように眉をひそめ、言葉を探すように私の顔をじっと見据えながら、静かに口を開いた。
「…ああ。流石にソルブラッドじゃあねえが、それでもあいつらが十年前に手に入れたのは、ある意味で
「とびきりの血?」
「ミレニアが手に入れたのは、人狼族の中でも最凶と名高い、