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73話 修学旅行

高校二年の中で...いや、高校生活の中の一大イベントと言えばなんだろうか。

そう、修学旅行である。


ラノベでも修学旅行では何かが起こるのが定番だ。

つまり俺も今回の修学旅行で美咲との関係をより親密に、より発展させるのだ。


ありがとう修学旅行、お前のお陰で俺たちは更なる一歩を踏み出せそうだよ。


「な、泣きながら笑ってる...」


隣に座っている美咲が不思議そうな顔で俺の顔を覗き込む。


「これは涙ではない別の液体だよ」


「...何言ってるの?」


美咲の顔に困惑したような表情が浮かぶ。

自分でも何を言っているのかいまいち意味不明だが、まぁそんなのは些細なことである。


「ねぇねぇそんなことよりさ」


美咲が目を輝かせながらで窓の外の様子を見る。


俺たちは今、沖縄行きの飛行機に搭乗していた。


「私飛行機乗るの初めてだからなんだか緊張しちゃうよ」


「ふっ、まだまだだな」


「そういう健吾君は乗ったことあるの?」


「俺ももちろん初めてだ」


「ふふっ、そんなことだと思った」


美咲が口を押さえながら笑う。


「ちょっと私たちをほっとけぼりにしないでよぉ」


俺の隣に座っている誠一の更に隣に座っている日奈が不満げな顔でこちらを見つめていた。


「そうだぞ。健吾たちがこの日奈の相手してくれなきゃ沖縄着く前に俺がくたびれちゃうだろ」


俺の隣に座っている誠一もまた、不満げな顔で俺たちを見つめている。


「勝手にくたびれときなさいよ。お土産に龍のキーホルダーでも買ってあげるから」


「やめろ俺それニ十個ぐらい持ってんだから」


「はいはいニ十個ねニ十個...二十!?」


「おいおいそんな驚くことじゃないだろ。なぁ健吾」


「一緒にしないでくれ」


「え!?もしかしてお前ドラゴンのキーホルダー見つけてもテンション上がらない珍しいタイプの男子か?」


「自分が珍しいタイプって自覚してくれ」


「俺って珍しいタイプなの!?」


誠一のその言葉に、全員しっかりと頷いた。


===


「ねぇ健吾?私そういうのはあんまり感心しないかなぁ...だからさ、一旦落ち着いて3出してみよ?ほらね?」


日奈が汗をだらだら流しながらトランプをじっと見つめている。

おかしいな、機内は冷房効いてて涼しいはずなのだが。


「いやはや、貧民たちの争いは面白いですな。其方もそう思いますか?美咲殿」


「ふふっ...いやはや、その通りですわ。誠一殿」


美咲が口に手を当て、必死に笑いをこらえながら言葉を返す。


「そもそも『私大富豪最強だから大富豪しましょ!』とノリノリで提案した日奈殿がこのありさまじゃ...ねぇ...」


「何が『ねぇ』よ今に見ときなさい次こそ大逆転してその地位転落させてやるんだから。

その時にはもうあれよあれ、ギロチン刑よ。革命された者の末路だわ」


「俺そんな物騒なトランプゲームやってたのかよ。はいジョーカーだして3で終わり」


「ちょっと誠一と言い美咲ちゃんといい健吾といい情けという者が足りないわ?」


「おほほほほ、貧民が何かほざいとりますわ」


「〇ね!」


「いってぇこいつ脛思いっきり蹴りやがった」


「ふふ、言いざまね」


日奈の顔には今まで見たことが無いような表情が浮かんでいる。

これが悪魔の形相という奴だろうか。


「ねぇねぇ日奈ちゃん。あること忘れてない?」


「あること?」


「ほら大富豪やる前に最下位の人の罰ゲーム決めただろ?」


日奈が人差し指を唇に当てて考え込む仕草を見せる。


「何かしら?私には全然思いつかないわ」


「こいつ五分前のことを忘れたでシカトしようとしてやがる」


「ふふっ、冗談よ冗談。さぁどんなことでも言ってみなさい」


俺たちは大富豪を始める前に決めた罰ゲーム、それは....


「誠一様にご奉仕したいですにゃあ、でお願いします」


「は?」


「「え?」」


一番最初に抜けた人が最下位の人に何か一言言わせることができるという罰ゲームである。


「聞き間違いかな?ちょっと誠一もう一回言ってみて」


「誠一様にご奉仕したいですにゃあだよ。あっ、ちゃんとにゃあ忘れないでくれよ。大事な部分だからな...え?何々みんな?なんで俺をそんな冷たい目で見るの?」


「由美先輩が可哀想...」


「え!?美咲ちゃん急にどうしたの?」


「引くわ~」


「な、なぁ健吾なら分かってくれるよな?」


「ちょ、ちょっと分かんないかなぁ」


これで分かると言った暁には、隣に座っている美咲に刺されそうである。


「彼女いるのにそのセリフ私に言わせようとするのキモイんだけどぉ」


「流石に由美先輩には頼めねぇよ」


「私には頼めるんだ」


「まぁな」


「まぁなって...まぁ良いわ、言えばいいんでしょ言えば」


「日奈ちゃん本当に言うの?」


「私罰ゲームでも何でも全力でやるのがモットーだからね」


ギラリッと冷たい目が誠一に突き刺さる。


が、そんな冷たい目とは正反対に日奈の耳や頬は真っ赤である。


「せ、誠一様に...」


「ん~?声が小さくて聞こえないなぁ」


「〇ね!」


誠一の腰付近から何か殴るような音が聞こえた。


誠一の様子を見てみると股間付近を押さえながら悶絶している。


誠一がされたことを想像して、どこかとは言わないが何かが縮みあがった気がした。


「お、お前なぁ...」


「ふっ、良い気味だわ」


ちらっと日奈が心配そうに周りを確認する。

確認し終えると、こほんと一つ咳をし、そして顔中を真っ赤にしながらセリフを話し出す。


「せ、誠一様に...ご奉仕したいです.....にゃあぁ...」


よほど恥ずかしかったのか、日奈は自分の足に顔を埋める。


「ふっ、良いセリフだったぜ」


「〇ね!」


パンッと再び誠一の股間辺りで音が鳴り、誠一が悶絶し始める。


「ふっ、今に見てるといいわ。次勝つのは私なんだから。みんなして恐怖してるといいわ」


===


「「「よ、よわ~...」」」


「...い、今に見てなさいよ...次こそ...次こそは叩きのめしてやるんだから」


「もうそろそろ着陸しちゃうよ」


「私辱められただけじゃん...くっ...殺せ...」


「女騎士みたいになってんじゃん」


「「女騎士...?」」


美咲と日奈からの不思議そうな目線が俺に突き刺さった。

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