目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第一話 演目 ジェットコースター

 昼食を食べ終えた長谷川達、もとい縁達。

 今度はプレミアム部屋の目玉である、体感型の席を本格的に使うことに。

 これからジェットコースターに乗るからだ。

 注意事項をよく読み、遊園地へとログインをしたのだった。


「いつも自力で歩いているから、コントローラー操作は違和感がある」

「わかる~まあそれもなれるでしょ」

「おお、姉貴、このジェットコースターは、実際の遊園地にもあるらしいよ? 室内ジェットコースターで、少々古い物だとか」

「ほ~、元ネタがあるのか」

「よっしゃ、レッツゴー」


 とりあえず目星を付けたジェットコースターへ。

『現実でも稼働している、ジェットコースター! タイムコースターへようこそ!』

 そんなデカデカとした看板を目印に、建物も近未来感が出ていた。

 縁達は建物内へと入ると、これまた近未来感マシマシな、受付の人が居た。


「ようこそいらっしゃいました! タイムコースターへようこそ! あ、プレミアムなお客様ですね? ええっと……はい、皆様の安全確認をいたしました、このコースターの説明は必要でしょうか?」

「あ、お願いいたします」

「安心安全なタイムトラベルをご提供いたします、案内には高性能AI、ボルチャパーラがいたします」

「ほう」

「百聞は一見に如かず、コースターへ案内いたします!」


 ここは現実と変わらずに、案内役がコースターへ案内する。

 そして、コースターの席に座って安全バーを下げる。

 もちろん現実の長谷川達は、ガッチリと固定していた。


「では、いってらっしゃいませー!」


 コースターはゆっくりと暗闇に向かって進みだした。


「ああ……遊園地のノリ久しぶりだわ、ゲーム内だとすんなり受け入れられる」

「あれ? 現実じゃ無理?」

「歳かな、こう……恥ずかしく感じる」

「まあ仕方ないよね~」


 ある程度コースターが進んだら自動で止まった。

 そして、コースターのモニターが光って、海外に居そうなキャラクターが現れた。


『よう! ナウなヤングな者共! 俺はボルチャパーラ! 大船に乗った気持ちで案内は任せてくれ! いえー!』

「あ、これ絶対事故るパターンだ」

「兄貴、思ってても言わない」

「お、そりゃすまんな」

『さ、マシンの外観を選べるチャンスだぜ! ちなみに選ばないと俺が自動で選ぶぜイェーイ』

「よし兄貴、ささっと選んで」

「ああ」


 選ぶと言っても選択肢は少なかった。

 ボディが三種類に、オプションが三種類。

 縁は赤色に翼のマークを選んだ。


『よし! じゃあ楽しいタイムトラベルへスタートだ! 亜空間カモーン!』

「お、始まるみたいだね~」


 コースターが進むと思ったが、最初はコースターが映像に合わせて揺れるだけだった。

 うにょうにょした空間を抜けると、SFによくある空飛ぶ車が飛んでいた。

 そして高層ビルも立ち並ぶ、なんかネオンが光っている、そんな近未来。


『最初は近未来だ! おお! 空飛ぶ車がビシュンビシュンだな!』

「……なあ、間違いなくこれでじ――うお!?」

『はわわ! ぶつかっちまった! ちくしょう! あぶねーだろ!』

「あ、ビルに――」

『てめぇこの野郎! 高い建物つくってるんじゃねーぞ!』


 結びが声を上げた次の瞬間に、コースターはビルにぶつかって制御不能。

 コースターは地面に向かって真っ逆さま、コースターはガタガタと揺れている!

 揺れているといっても、そこまで激しいわけではない。


「へ~そこそこ揺れるね~」

「ジェットコースター気分だね」

「お嬢さん方、状況的に墜落しとるんだが?」

「きゃ~縁君怖い~」

「お兄様ー」

「兄さんー」

「鏡さん、そこのる?」

「タイミングかと」

『仕方ない! 亜空間ワープ! 絶対に君達を元の世界に戻すからね!』


 再び亜空間に突入した、それと同時にコースターが動き出した。


「え? いや、何か熱い展開にしようとしているけど、お前のせいやん」

「絆ちゃん、辛辣、いや、あってるけどさ」

「お、ここからはコースターらしいな」


 亜空間を抜けると、様々な恐竜達が出迎えてくれた。

 恐竜の間を抜けたり、一緒に飛んだり、追いかけられたりと。 


『わお! 恐竜がたくさん! ジュラ紀ってやつかな? てか亜空間が不安定……危ない!』


 食われると思った瞬間ね亜空間が現れて、別の時代へ。


「わ! 寒! なんだこれ、スゲーな、最近の筐体は」

「おお、冷たい風が流れるんだね~」


 今度は氷と雪と風しか、無いような世界だった。


『おおう! 恐竜絶滅、氷河期到来!? 早くあったかい所に行こうぜ!』

「この氷が砕ける音って、絶対にコースターに当たってるよね」

「氷に突撃してるのかね~ あ、それとも氷が?」

『ええい! 亜空間カモーン! 吹雪だけならこわくないぜ!』


 確認しようにも、既に窓は真っ白、見えない恐怖が襲ってくる。

 氷がぶつかる音、猛スピードで進む恐怖、無論上下左右と揺れている。


『ようし! 亜空間突破!』

「ん? 今度は一瞬だけ熱かったな」

「おお、火山地帯~」


 今度は打って変わっての火山地帯、炎やらマグマやらが噴出している。

 コースターは華麗に避けているが、時々どっぷりとかかる、大丈夫だが。


『もうそろそろ戻してくれー! マグマ怖いー!』

「いや、お前が泣くんかい!」


 縁が渾身のツッコミとほぼ同時に、亜空間への扉が開いた。

 そして、コースターの乗り場へと戻ってきたのだ。

 ゆっくりと定位置に向かうコースター。


『ハッハー! 僕の願いが通じたね! 今日はこのまま帰ろう! うん! お疲れ様!』

「え? 早くね?」

「ジェットコースターってこんなもんじゃない?」

「ああ……上下左右だけだとこんなもんか」


 実際のジェットコースターも約2、3分の出来事だ。

 この体感型もそこそこの揺れたはずなのだが。

 案内キャラクターへのツッコミで、気持ちがそっちにいったのかもしれない。


『あ、僕が色々と失敗した事は秘密にしといてくれよ、シーユー!』

「うわぁ……張り倒してぇ」

「まあまあ縁君、落ち着いて~」


 コースターは元の発進した位置へと戻ってきた。

 受付の人がお辞儀をした、安全バーが上がる。


「お疲れ様でした! タイムトラベルはいかがでしたでしょうか! またのご利用お待ちしております!」


 出口はこちらです、と案内されてあっけなく終わった。


「……終わったら、ささっと退場させられた」

「まあ実際のジェットコースターもそうじゃない?」

「ああ……そりゃそうか」

「兄貴、個人的にチクったらどうなるか気になる、もっかい」

「お、やるか!」


 結果的にお詫びとして、ボルチャパーラのアクリルスタンドが、後日届くらしい。

 いらねーと思う縁達だったが、これも思い出と納得した。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?