その後も縁達はVR遊園地を楽しんだ、そして最後に、観覧車に乗る流れとなる。
もちろん縁と結びの二人っきりでだ、お互い寄り添って。
「いやはや、たっぷりと遊んだね~」
「ああ、技術の進歩は凄いな」
「実際に欲しくなった? 筐体」
「お金があったとして、置く場所がない」
「ああ~」
他愛も無い会話、縁は何処か何か言いたそうにしていた。
「……結びさん」
「お、どうしたよ」
「俺の彼女になってくれてありがとう」
「本当にどうしたのさ」
「今が本当に楽しいからさ、正直、リアルの世界で楽しい気持ちは、そこまでなかったんだ」
「ありゃ、現実あってのプレイヤーでしょうに」
「そう……充実してそうで、してなかった」
「そうなん?」
「仕事して、ゲームしての繰り返しだからね」
「それはそれでいいような」
「……君と出会って、俺の人生に彩りが出た」
「ぶっふぉ! 何くっさいセリフ言ってるのさ!」
べしべしと縁を叩く結びだが、彼女とて嬉しいのだろう。
リアル自分自身も、ほとんど同じ様なものだったのだから。
「それくらい感謝しているって事さ」
「私も同じだよ、一緒に居て楽しいと思える、安心出来るのは君だけさ~」
「ああ」
観覧車から見える景色も夕暮れ時だ、そろそろ夜になり、遊園地のネオンが輝くだろう。
「んで? そういう言い方をする時は、何か提案する時だよね?」
「あ、ああ……リアルで幸せになるのは、当たり前だと思う」
「だね、リアルあってのゲームさね」
「だけど、この縁ってキャラクターは、俺が中学生の時から操作している」
「そりゃ私も同じだね、スファーリアと風月に分かれていたけど」
「もう一つの人生って、言っていいのかもしれない」
「だよね~」
「何が言いたいかと言うと、結びさん」
「ふむ」
縁はちゃんと結びの目を見た、彼女もまた愛する男性をジッと見る。
これは絶対に、バシッと決めるセリフを言う場面だ。
「
「……」
縁もとい長谷川はバシッと決めた、だが――
「ぶっふぉ! ひゃっひゃっひゃ!」
「えぇ……笑う?」
「違う! 言葉は嬉しい! 長谷――縁君! イントネーション……と言うか、うんとの部分が、何時もの『運』って言い方だったからさ」
「……えぇ? そうなん?」
「ふっふっふ、しかしだ縁君、私はとてつもなく嬉しいよ」
「え?」
「何故ならその言葉は、絶対に他には無い言葉、私だけの愛の言葉さ」
「お、おう」
「それで? 何か案でもあるの?」
「ああ、結婚式に向けたドレスの素材を集める旅ってどうかな?」
「はっはーん、なるほど? 続きは酒を飲みながら聞こうじゃないか」
「そうするか……妹達にも相談してみるか」
そう、他の人には笑い話であろうとも、この場で唯一無二の言葉を彼女に送ったのだ。