目次
ブックマーク
応援する
いいね!
コメント
シェア
通報

第二話 演目 名を与える

 学園の訓練場にやって来た縁達。

 縁は生徒達に向かってハッキリした口調で言った。


「始める前に聞いてほしい、俺は正直、なんとなくで副担任をしていた、理由は結びさんに頼まれたからだ、だが」


 縁はウサミミカチューシャを外して、神様モードになった。


「俺も『教える』という覚悟を持った、だからこそ『神に教わる』って覚悟を持ってくれ」

「お、約束事かな~?」

「ああ……一つ、俺の技を使って好き勝手していいが、俺の責任にするな」

「あ~居るよね~人のせいにする奴」

「一つ、結びさんも言っているが、学生までは無償で守ってやる、それ以外は対価をよこせ」

「私のクラスにはバカは居ないから、神にお願いする事がどういう意味かわかるでしょ」

「一つ、これも結びさんも言っているが、不必要に危ない真似はするな、俺と結びさんのイチャイチャを邪魔するな」

「危ない事をする時は、ちゃんと事前に連絡してね~」


 危ない事、この言葉に反応したのは、一本槍、ファリレント、ツレだ。

 未来の預言で、危ない事が起こると分かっていた。

 それに自分の意志で突撃し、結果的に縁と結びに迷惑をかけた。

 無論、その後に怒られた『二度目は無い』と。


「小言はこれくらいにして、授業に入ろう」


 縁は地面に手を当てて、魔法陣を作った。


「兎術は自分自身を映し出す、難しい事は無い、自分自身を見つめ直す為の魔法陣だ」

「お兄様……コホン、縁先生、私が最初にしても?」

「ああ」


 絆は魔法陣の上に立って、静かに目を閉じて呟いた。


「おいでなさい『不釣ふつり』」


 魔法陣が光って表れたのは、絆と同じゴスロリ衣装で黒い兎が表れた。

 優雅に縁達にお辞儀をしていた。


「皆様、難しく考えずに、自分自身を理解して下さい、そしてちゃんと名を与える事ですわ」

「では次は私にやらせていただきます」


 ファリレントが魔法陣へと入り瞑想をした。

 すると、トライアングルの音色と共に、白と黒のぶち模様の兎が現れた。

 トライアングルを持っていて、楽しそうに鳴らしていた。


「うわ! いきなりでビックリした……あ、な、名前……あっちで決めようね!」


 ファリレントは魔法陣から、兎を抱えて出た。

 そして次はツレが魔法陣へと入った、難しい顔をしながら兎術と呟く。

 すると、茶色の毛並みに死神の鎌、デフォルメされたガイコツのお面をおでこに付けている。

 ツレが召喚した兎は、肩へとささっと登った、ふふんとドヤ顔をしてる。


「お、死神の兎? 名前は……よしよし、移動して決めるか」


 ツレは魔法陣から出た、次は未来が魔法陣へと入った。

 未来は水晶玉で占いを始めた、するといつの間にか、未来に似た兎が同じ事をしていた。

 絵に描いた様な占い師の衣装に身を包んだ、ねずみ色の兎が足元に居た。

 未来は少しビックリして、しゃがんで兎と目を合わせた。


「私は未来、あなたの名前は……はっ! 『導き』にする」


 導きと名付けられた兎、誘導するように未来と共に魔法陣から出で行った。

 今度は石田夫妻が、ゆっくり魔法陣へと入っていった。

 2人は手をつないで瞑想をすると、白と黒、茶色の毛並みの兎が二羽が表れた。

 一羽は薬籠やくろうを背負ったおばあちゃん兎。

 もう一羽は僧侶の衣服を身にまとい、何故かバケツをかぶって錫杖を持っていた。


「あらあら、可愛い兎さんだこと、お荷物重くないのかい? お名前はあっちで考えましょうね」

「……ふむ、虚無僧? なのか? 何故……バケツなんじゃ?」


 二羽の兎と共に、石田夫婦は魔法陣から出た。

 最後に一本槍、既に彼の兎術の『継続』は一瞬に歩いていた。


「縁先生、僕には継続が居ますが……どうすれば?」

「一本槍君はステップアップ出来るな」

「え?」

「言っただろう? 自分自身を映し出すと、今一度自分を見つめなおすといい」

「はい」


 魔法陣で一本槍は、今一度自分自身を見つめなおした。

 すると継続は光に包まれた、光が収まるとハチマキを巻き、紺色の武道着を着ている。

 回歴流創始者、逍遥しょうようと同じ武道着を着ていた。

 一本槍の二代目としての覚悟を表しているようだ。

 継続は軽くパンチとキックを繰り出した、やる気満々のようである。


「おお! とりあえずここから離れるよ、継続」


 一本槍と継続は魔法陣から出たした後、縁が少し大きく声を出しす。


「さて今日は皆、自分の兎術と対話をしてくれ、俺は見て回る」


 結びが縁の肩を、右手の人差し指でちょいちょいと突いた。


「ちょいちょい縁さんや」

「どうしたよ結びさん」

「私は?」

「やってみよう」

「おうよ、魔法陣に入って……『血風』おいで」


 赤い毛に今の結びと同じ武道家を着た血風が表れた。

 現れたと同時に、縁の足元に居た、身丈に向かってダッシュ。

 両手を広げてダイブした、身丈は血風を受け止める。

 イチャイチャしたい血風と、それを制止する身丈。

 縁と結びの何時も通りの光景だった。 


「……結びさんらしいな」

「はっはっは、そのまま返すよ?」


 その通りで、身丈の顔は幸せそうに笑っていた。

この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?