縁と結びがやってきたのは小さい教会、国と国の間にあり、道の駅の様な役割もしている。
教会の名前はプフィル、旅人の一時の休憩場所で、孤児院も経営している。
周りは草原で、森や山が近く川もある、のどかな雰囲気がある。
「ひょっひょっひょ! さあさあここが道徳の神の教会か!」
「結びさん落ち着いて」
「馬鹿野郎! やっと結婚の第一歩だよ? 縁はクール過ぎない!?」
「俺も嬉しいよ、ただ俺まではしゃぐとさ、ちゃんと決めれない様な気がしてね、最初で最後だから冷静にね」
「そう言われると、私も少し落ち着こうかね~さて、えっと神父さんに挨拶? あれ?結婚の時は牧師か?」
「まあここでは、神父でいいんじゃないかな」
「……てか私、見方によっては道徳の欠片もないのでは?」
「そしたら俺もだな、妹の為に人に弓を引いたから」
界牙流は家族を不幸にする奴は殺す、縁も昔、人を相手に戦争を仕掛けた。
一般人的に考えたら道徳から外れているようにも見える。
そんな2人に話しかける男が居た。
「ふっふっふ、道徳とは文字通り徳の道、人が多種多様の様に道も様々です」
声をかけたのは、眼鏡で金髪の長髪オールバックな神父。
黒色の服装に『米』の字に近い十字架っぽいものを首から下げていた。
まるで『道』や『道路』を表している様だった。
「お久しぶりです」
「初めまして、風野音結びです……って縁君どなたさね?」
「道徳の神、この教会の神様だね」
「おお」
道徳の神は深々と優雅にお辞儀をした、縁と結びも軽く頭を下げた。
「私はこの姿の時はフィル・ズーヒ、そこら辺に居る神父の1人です」
「んな馬鹿な……道徳の神が一般人?」
「ふむ……奥様、聞きま――」
「奥様!?」
フィルの言葉に被せる様に、食い気味で反応した。
そしてキラキラとした目でフィルを見る結び。
それを呆れた顔で見ている縁、何時もの光景である。
「あ、発作みたいのなんで気にしないでください」
「はっはっは! 縁さん、人としても神としても成長したようですね」
「神父さん、人としてはまあわかるけど、神としての成長ってなんじゃらほい?」
「簡単に言えば……『自分が何をするか』の覚悟でしょうか、縁さんは昔それがあやふやでした」
「ふむふむ」
「今の縁さんからは『良き縁を守る』『努力をする者には身の丈の上限突破の機会』……ふむふむ、色々とあります」
「ご利益が多そうだねぇ」
「ええ、上位の神ほど色々と効果がありますよ」
「ふっふっふ、しかし神父さん、私が縁君をそんなちゃっちい事で選んでは無いよ」
「ほう! では何処で選んだのですかな?」
フィルもおそらくは答えを分かっているだろう。
わざとらしくノリノリで、答えを聞いた。
「そりゃ私を愛してくれているからさ」
「ああ、俺もだ」
普段から落ち着いてとか言っている縁だが、こういう時ははぐらかさない。
時と場合もあるが、返せるときにはきちっと返すのが縁だ。
「はっはっは! 続きは結婚式でお願いいたしますよ」
「お、じゃあさっそく見せてもらおうじゃないの! その式場を!」
「……落ち着いて行動してくれよ?」
「げっへっへっへっへ、無理だね!」
「……一応、神様の妻になるんだが?」
「ぶぐぅ! 万年ジャージの神様が威厳て! マジで笑うから!」
「か、返す言葉もねぇ……でも落ち着いてくれ」
「さて盛り上がった所で案内しますよ、あなた方の徳の道を繋げる場所へと」
フィルを先頭に教会へと向かうのだった。