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第二話 演目 道徳の教会

 縁と結びがやってきたのは小さい教会、国と国の間にあり、道の駅の様な役割もしている。

 教会の名前はプフィル、旅人の一時の休憩場所で、孤児院も経営している。

 周りは草原で、森や山が近く川もある、のどかな雰囲気がある。


「ひょっひょっひょ! さあさあここが道徳の神の教会か!」

「結びさん落ち着いて」

「馬鹿野郎! やっと結婚の第一歩だよ? 縁はクール過ぎない!?」

「俺も嬉しいよ、ただ俺まではしゃぐとさ、ちゃんと決めれない様な気がしてね、最初で最後だから冷静にね」

「そう言われると、私も少し落ち着こうかね~さて、えっと神父さんに挨拶? あれ?結婚の時は牧師か?」

「まあここでは、神父でいいんじゃないかな」

「……てか私、見方によっては道徳の欠片もないのでは?」

「そしたら俺もだな、妹の為に人に弓を引いたから」


 界牙流は家族を不幸にする奴は殺す、縁も昔、人を相手に戦争を仕掛けた。

 一般人的に考えたら道徳から外れているようにも見える。

 そんな2人に話しかける男が居た。


「ふっふっふ、道徳とは文字通り徳の道、人が多種多様の様に道も様々です」


 声をかけたのは、眼鏡で金髪の長髪オールバックな神父。

 黒色の服装に『米』の字に近い十字架っぽいものを首から下げていた。

 まるで『道』や『道路』を表している様だった。


「お久しぶりです」

「初めまして、風野音結びです……って縁君どなたさね?」

「道徳の神、この教会の神様だね」

「おお」


 道徳の神は深々と優雅にお辞儀をした、縁と結びも軽く頭を下げた。


「私はこの姿の時はフィル・ズーヒ、そこら辺に居る神父の1人です」

「んな馬鹿な……道徳の神が一般人?」

「ふむ……奥様、聞きま――」

「奥様!?」


 フィルの言葉に被せる様に、食い気味で反応した。

 そしてキラキラとした目でフィルを見る結び。

 それを呆れた顔で見ている縁、何時もの光景である。


「あ、発作みたいのなんで気にしないでください」

「はっはっは! 縁さん、人としても神としても成長したようですね」

「神父さん、人としてはまあわかるけど、神としての成長ってなんじゃらほい?」

「簡単に言えば……『自分が何をするか』の覚悟でしょうか、縁さんは昔それがあやふやでした」

「ふむふむ」

「今の縁さんからは『良き縁を守る』『努力をする者には身の丈の上限突破の機会』……ふむふむ、色々とあります」

「ご利益が多そうだねぇ」

「ええ、上位の神ほど色々と効果がありますよ」

「ふっふっふ、しかし神父さん、私が縁君をそんなちゃっちい事で選んでは無いよ」

「ほう! では何処で選んだのですかな?」


 フィルもおそらくは答えを分かっているだろう。

 わざとらしくノリノリで、答えを聞いた。


「そりゃ私を愛してくれているからさ」

「ああ、俺もだ」


 普段から落ち着いてとか言っている縁だが、こういう時ははぐらかさない。

 時と場合もあるが、返せるときにはきちっと返すのが縁だ。


「はっはっは! 続きは結婚式でお願いいたしますよ」

「お、じゃあさっそく見せてもらおうじゃないの! その式場を!」

「……落ち着いて行動してくれよ?」

「げっへっへっへっへ、無理だね!」

「……一応、神様の妻になるんだが?」

「ぶぐぅ! 万年ジャージの神様が威厳て! マジで笑うから!」

「か、返す言葉もねぇ……でも落ち着いてくれ」

「さて盛り上がった所で案内しますよ、あなた方の徳の道を繋げる場所へと」


 フィルを先頭に教会へと向かうのだった。

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