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第五話 幕開き 実力の差

 桜野学園とチーリメ学園の交流会の日、両方の生徒達が手合わせをする。

 だが交流会とは表向きの話、一本槍の恨みを晴らす。

 そして、天空原てんくうはら今戸いまどと、地獄谷炎花じごくだにえんかの引き抜きが目的。


 場所は桜野学園の演習場、互いの生徒達が切磋琢磨する。

 その光景を両学園の生徒や先生方は、気合いの入った応援をしていた。

 ついに一本槍と地獄谷の勝負が始まろうとしていた。


「あら? どんな奴が相手かと思えば、巻物持ってた旅人じゃん」

「ええ、あの時はお世話になりました」

「ぷぷぷ、まあよろしくお願いします」


 一本槍を完全に舐め腐っている地獄谷、余裕綽々な表情をしていた。

 対して一本槍は何時も通りだ、殺意を抑えている以外は。

 そんな2人を見て、観客席のツレが声を上げる。


「あいつが一本槍の師匠の巻物を焼いたクソ野郎か!」

「ツレ、女だから野郎じゃない」

「未来、んな事言ってる場合か?」

「大丈夫、一本槍はこの凄く怒っている、普段絶対しない行動をする」

「絶対しない行動?」

「見てればわかる」


 ツレは2人に視線を戻した、これから手合わせが始まる。


「んじゃ、即効で終わらせやるにゃ!」

「何時でもどうぞ?」

「なめるにゃ!」


 一瞬で一本槍を切り刻んでしまった、爪で引き裂いた様な跡があった。

 観客の瞬きが終わる時には、血だらけの一本槍が立っている。

 他にも試合をしている生徒達が居るが、観客のほとんどが一本槍を見る。


「にゃ……にゃははははは! 雑魚だにゃ!」


 勝ち誇った地獄谷、チーリメ学園の生徒達はざわざわとしている。

 だが桜野学園の学園の生徒達は、特に反応はしていない。

 一本槍の実力を知っているからだろう。


「どうしました? 僕はまだ死んでいませんよ?」

「にゃ!?」

「出血多量なら勝てると思いました?」

「お、お前! そんな大怪我で何で平然としているにゃ!」

「大怪我?」


 一本槍は血を出しながら、観客席に居る結びに話しかけた。


「すみません結び先生! これは大怪我に入りますか?」

「一本槍、そんなのはすり傷だ」

「ですよね」

「にゃ!? お、可笑しいにゃ!」

「ではかすり傷の証明をしましょう」


 あっという間に一本槍の傷は無くなった。

 服も元通りに、どんな原理かなぞどうでもいい。

 地獄谷にとって、今まで見たことのない人間。

 自分より下だと感じていた人間が、自分の理解を超えていた。

 経験の差が大きかったのだろう。


 自分の実力にあぐらをかいた奴、毎度毎度殺し合い形式で強くなった奴。

 どっちが強いかなぞ言うまでもない。 


「は! はぁ!? 付き合ってらんにゃい! きけ――」

「させませんよ?」

「にゃ……」


 一本槍は一撃で地獄谷を黙らせた。

 実力の差があるのだ、説明もする必要が無い。

 腹に一撃入れられた地獄谷は苦しんでいる。


「貴女を簡単殺せるという事です、ですが僕は亡き師の教えに従います、これからは一本槍ではなく……二代目逍遥しょうようとして相手をしますよ」


 つまりは不殺を貫くという事、憎い相手でも命を奪わない師の教え。

 地獄谷の安易な行動が結果的にだが、一本槍を達人の領域にまで伸し上げてしまった。


「ち、ちくしょう……にゃ」

「……待て!」


 地獄谷をかばうかの様に、天空原が観客席から飛び出した!

 天空原は一本槍と戦う予定は無い。

 地獄谷を守るためにしゃしゃり出たのだろう。


「棄権しようとした相手になんて事を!」

「なるほど、では貴方が代わりをしますか? このままだとただのイジメになってしまう」

「……いいだろう! その鼻をへし折ってやる!」


 売り言葉に買い言葉、特に誰が止めるでもなく2人の戦いが始まるのだった。

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