一本槍に立ちはだかる天空原は、地獄谷をかばう様に仁王立ちしていた。
降参しようする地獄谷に、一本槍は問答無用の一撃をした。
殺す程の怒りを覚えた相手に対して、この程度で済ませたのだ。
だが天空原から見れば、関係無いのかもしれない。
「……地獄谷、大丈夫か?」
「にゃ、にゃんとか」
その時観客席からシーナが飛び込んできた。
シーナは優しい顔をしながら地獄谷に近寄る。
「よしよし、その娘は私が見といてやるよ」
「誰だお前」
「ああ、その娘の担任になるサンディ・シーナだよ……地獄谷大丈夫かい?」
「……し、心臓が」
「よしよし、その程度なら私が治してやる」
シーナはひょいと地獄谷をお姫様抱っこをする。
そのまま観客席へと戻っていった、天空原は一本槍に向き直る。
「覚悟しろよ、降参した相手に追い打ちをする卑怯な奴め!」
「……天空原君、貴方から同じ気質の禁術を感じます」
「同じだと? なめやがって、だが禁断の技を感知出来たのは褒めてやる!」
天空原の髪の色が青くなった、更になんと頭の猫耳が鬼の角に変化した!
そして人間の耳がある部分に、新しく尖った耳が生えた!
一言で言えば顔や姿が鬼、まさに青鬼の様になったのだ!
それを見ていた結びすが呆れてみている。
「あーあ、あれは力にのまれているね~ま、あの年頃で禁術使える様になれば調子に乗るか、てかちゃんと制御出来てない」
「って事は結び先生、暴走って事っすか?」
「そうだツレ、今までの相手はそれでよかったかもしれない、はぁ……」
結びは観客席からヒョイと天空原の前まで飛んだ。
「こらこら天空原、周りの事を考えなさい? 手合わせでしょ? 殺し合いでもする気~?」
「ああ!? 手合わせだろ! 邪魔すんな!」
「黙れ、殺すぞ?」
「なっ!」
流石に冷静になったようだ、結びの殺すは脅しではない。
本気で殺すというのを感じた天空原は、黙ってしまった。
結びは鼻で笑いながら、演習場全体に大事を出した。
「おーい! 審判の先生方、やはり予定通りになった! 頼む!」
ある程度区切っていた演習場、万が一の時の為に付き添いの先生方が居た。
先生方は生徒を観客席へと誘導を始めた、生徒からは不満の声が上がる。
だが後々、避難して正解だったと思わされるのだった。
「さ、思う存分『手合わせ』をしろ? いいか? 『殺し合い』になったら一本槍じゃなく私が相手をしてやる」
演習場には一本槍と天空原、そして結びの3人だけだ。
もちろん観客席には多くの先生と生徒達がいる。
「ふ、ふざけやがって! どいつもこいつも!」
天空原はより一層力を込めた、筋肉は膨れ上がり更に肌の色も青くなる。
それを見て結びはまたため息をした、むしろ憐れんでいる。
「あーあ、本格的に力に飲まれたね、一本槍大丈夫か?」
「結び先生、力は制御出来て使うものです」
「よろしい」
結びは2人から離れて見守る、速攻で仕掛けたのは天空原だった。
単純明快なぶん殴り攻撃、斬銀の剛腕をも思わせる腕である。
だが、そんな攻撃は一本槍もとい二代目
「くらえやぁ!」
「……」
何度も何度も最小限の動きで避けられる攻撃。
そんな物で二代目逍遥が倒せるはずがない。
少なくとも禁術を制御出来ない奴に勝機は無し。
「ちょろちょろよけるんじゃねぇ!」
「当たったら死ぬじゃないですか」
「てめぇ! ちょろちょろちょろちょろ! ぶっ殺してやる!」
「……」
ぶっ殺してやる、その発言をした瞬間天空原は終わった。
本人は気付いていないだろう、二代目逍遥もとい一本槍は、残念そうな顔をした。
結びが素早く天空原の前に現れた、ニコニコと笑顔でだ。
「ほう? 『手合わせ』じゃなく『殺し合い』がしたいんだな?」
「じゃま――」
天空原は吹っ飛んだ、結びが攻撃をしたのだろう。
もはや説明は何もいらない、調子に乗ってる奴をボコすだけだ。
間違っててけないのは、結びはあくまでも教師。
安易に殺すというと、どういう事が起こるか教えるだけだ。
「一本槍……いや逍遥、変われ、お前の流派は殺し合いは禁じ手なのだろう?」
「先生、わかりました」
一本槍は一礼をして観客席へと戻っていった。
結びは、吹き飛ばされた天空原へと近寄る。
相手を見下す目で結びは天空原を見下ろしていた。
「ほら、殺し合いをしようか? てめぇの知ってる殺し合いの世界はお子様だってな」
「調子に乗ってるんじゃねーぞ!」
倒れている所からの不意打ち、もちろん結びにとっては不意打ちでもない。
天空原の攻撃を鼻で笑う、そして何かに納得したように笑い始めた。
不気味さから、結びから距離を取る天空原。
「ふっふっふっ……ほうほう、心臓を狙うか……つまり、私に縁との愛の鼓動を感じるなと」
そのワードに全身で身震いした結びの生徒達、少し前に
斬銀から結びとの戦いを聞いていた生徒達、チーリメ学園結びを攻撃すると難癖つけてくる、そして本気で殺しにくる。
縁と何々させないのか? と、言った結びには気を付けろと斬銀から聞いていたのだ。
「あ、あの言葉はまずい、本気で天空原君を殺すつもりです」
「いやいやいやいや、流石に……大丈夫っすよね? えに先?」
「ああ、例え殺しても蘇生するだろう」
「……彼には同情っすね、うちのクラスに来るなんて」
結びは観客席に向かって声を張った。
「先生方、これから少々過激な事が起こる、生徒も自分の判断で見る見ないは考えろ」
観客席が今まで以上にざわざわとし始めた。
桜野学園にはいつもの事、チーリメ学園からのざわざわが多かった。
「さ、
安易に殺すと言った生徒へ、指導がこれから始まる。