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第五話 演目 これは授業だ

 結びは本気で天空原と戦う、いや、殺し合いを始めるようだ。

 天空原はまだ何処かで、それを噓や脅しと思っていた。

 何故なら、余裕綽々でニヤニヤとしているからだ。

 これも経験の差だろう、今、自分が置かれている状況をわかっていない。


「殺し合いだ? ふ――」


 天空原はまた吹き飛ばされた、もう説明の必要も無いだろう。

 やはり何処かで天空原は、安心しているのだろう。

 殺されないと。


「は? お前、殺し合いの最中にペチャクチャ喋るのか? 何かの戦術ならすまないな?」


 だがチーリメ学園の一部の生徒や先生、そして桜野学園の生徒と生徒達は気付いていた。

 結びが本気で天空原を殺す事を、この事を一番感じていたのは結びの生徒達だった。


「あーあ、ありゃ一本槍とやりあっている時の先生だよ、えに先、何か意図があるのか?」

「もちろんだツレ君、彼は地獄谷さんを守る為に……人を殺した」

「んん? 人っすか? 悪人とか?」

「刺客と言った方が早いか、んで普通の一般社会に居れば……人殺しは罪だろう?」

「まあそっすね」

「当たり前の事を言うけど、刺客を倒したら?」

「まあ次が来るでしょうね」

「彼はその道を選んだ、そしてその自覚が足らなすぎる」

「自覚っすか?」

「今はあの禁術で多分無双しているだろう、だがそんなのが長く続く訳がない」

「……仮に結びの先生クラスの刺客があらわれると?」

「無いとは言い切れないだろう?」

「まあ……確かに」


 そんな結びは天空原を見て笑っていた、その目は子供をしかる目ではない。

 1人の戦う相手に送るものだ、まだ天空原は気付いていない。

 どれだけ楽観的なのだろうか? 禁術のせいで気が大きくなっているのか?

 彼が気付くまでもう少し時間がかかるだろう?


「ふっ、お前も愚かな男だな?」

「てめぇ! 何が言いたい!?」

「ふむ、では至極当然な質問をするが……お前、地獄谷のなんなんだ?」

「あ!?」

「例えば家族や恋人だったら気持ちを理解できる、大切な人を殺されそうになったらそりゃ助ける、でもお前……ただの片想いだろ?」

「……」

「片想いが悪い訳じゃない、私がムカついてるのはな? 『俺が守ってやっている』って覇気が出てて気持ち悪いんだよ、ストーカーか?」

「!?」


 天空原は結びに攻撃を仕掛けるが、結びは避けずに全て受け止める。

 物凄い勢いで殴りまくっているが、傷一つ無い。


「はいはい図星で怒るなよ、地獄谷が他人の恨みを積み上げ、殺されるまでなった……んで、お前は彼女を守るためにその力を手に入れた、あってる?」

「そうだ! それの何が悪い!」

「いや? 悪くないよ? 好きにすればいい、だけどさ、自分が被害者みたいな考え方するなよ?」

「何!?」

「その禁術で身体にガタが来ているんだろう? それを地獄谷のせいにするなって言ってるんだよ、ついでに人殺しの責任もな? お前が勝手なやっただけだろ」

「うるせぇ!」

「でな? クソガキ、理由はどうであれ……お前は人を殺したんだ、お前はこっちの道を歩き始めたんだ、わかるか? 多分引き返せない所まで来たんだろ? お前が出来るのは一つ、私に頭を下げて助けてくださいと言うだけだ」

「う――」


 結びは天空原の右腕を吹き飛ばした、しかし天空原は痛がる様子も無い。

 禁術のおかげなのかもしれないが、腕が吹き飛ばされて普通にしているのは可笑しい。

 今度は蹴りも織り交ぜて攻撃をする天空原、もちろん結びには効かない。


「なあ? お前がお願いするまでこれは続くぞ? 簡単だ、お前に地獄谷は守れないからだ」

「う! うる――」


 結びは天空原の残った四肢を切断、その後心臓付近に風穴を開けた。

 絶命だ、会場からも悲鳴が上がるがそんなのは関係無い。

 結びはちゃんと注意事項を言っている。


「ああ、ちなみに……死んでも蘇生してやる、さ、根競こんくらべの開始だな? お願いできるかな?」


 結びは両手で手を叩いた、すると天空原は五体満足の元通り。

 やっと結びのヤバさを肌で感じた、絶対に勝てない。

 だが頭を下げる事はしたくない、小さなプライドが今試されている。

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