結びは本気で天空原と戦う、いや、殺し合いを始めるようだ。
天空原はまだ何処かで、それを噓や脅しと思っていた。
何故なら、余裕綽々でニヤニヤとしているからだ。
これも経験の差だろう、今、自分が置かれている状況をわかっていない。
「殺し合いだ? ふ――」
天空原はまた吹き飛ばされた、もう説明の必要も無いだろう。
やはり何処かで天空原は、安心しているのだろう。
殺されないと。
「は? お前、殺し合いの最中にペチャクチャ喋るのか? 何かの戦術ならすまないな?」
だがチーリメ学園の一部の生徒や先生、そして桜野学園の生徒と生徒達は気付いていた。
結びが本気で天空原を殺す事を、この事を一番感じていたのは結びの生徒達だった。
「あーあ、ありゃ一本槍とやりあっている時の先生だよ、えに先、何か意図があるのか?」
「もちろんだツレ君、彼は地獄谷さんを守る為に……人を殺した」
「んん? 人っすか? 悪人とか?」
「刺客と言った方が早いか、んで普通の一般社会に居れば……人殺しは罪だろう?」
「まあそっすね」
「当たり前の事を言うけど、刺客を倒したら?」
「まあ次が来るでしょうね」
「彼はその道を選んだ、そしてその自覚が足らなすぎる」
「自覚っすか?」
「今はあの禁術で多分無双しているだろう、だがそんなのが長く続く訳がない」
「……仮に結びの先生クラスの刺客があらわれると?」
「無いとは言い切れないだろう?」
「まあ……確かに」
そんな結びは天空原を見て笑っていた、その目は子供をしかる目ではない。
1人の戦う相手に送るものだ、まだ天空原は気付いていない。
どれだけ楽観的なのだろうか? 禁術のせいで気が大きくなっているのか?
彼が気付くまでもう少し時間がかかるだろう?
「ふっ、お前も愚かな男だな?」
「てめぇ! 何が言いたい!?」
「ふむ、では至極当然な質問をするが……お前、地獄谷のなんなんだ?」
「あ!?」
「例えば家族や恋人だったら気持ちを理解できる、大切な人を殺されそうになったらそりゃ助ける、でもお前……ただの片想いだろ?」
「……」
「片想いが悪い訳じゃない、私がムカついてるのはな? 『俺が守ってやっている』って覇気が出てて気持ち悪いんだよ、ストーカーか?」
「!?」
天空原は結びに攻撃を仕掛けるが、結びは避けずに全て受け止める。
物凄い勢いで殴りまくっているが、傷一つ無い。
「はいはい図星で怒るなよ、地獄谷が他人の恨みを積み上げ、殺されるまでなった……んで、お前は彼女を守るためにその力を手に入れた、あってる?」
「そうだ! それの何が悪い!」
「いや? 悪くないよ? 好きにすればいい、だけどさ、自分が被害者みたいな考え方するなよ?」
「何!?」
「その禁術で身体にガタが来ているんだろう? それを地獄谷のせいにするなって言ってるんだよ、ついでに人殺しの責任もな? お前が勝手なやっただけだろ」
「うるせぇ!」
「でな? クソガキ、理由はどうであれ……お前は人を殺したんだ、お前はこっちの道を歩き始めたんだ、わかるか? 多分引き返せない所まで来たんだろ? お前が出来るのは一つ、私に頭を下げて助けてくださいと言うだけだ」
「う――」
結びは天空原の右腕を吹き飛ばした、しかし天空原は痛がる様子も無い。
禁術のおかげなのかもしれないが、腕が吹き飛ばされて普通にしているのは可笑しい。
今度は蹴りも織り交ぜて攻撃をする天空原、もちろん結びには効かない。
「なあ? お前がお願いするまでこれは続くぞ? 簡単だ、お前に地獄谷は守れないからだ」
「う! うる――」
結びは天空原の残った四肢を切断、その後心臓付近に風穴を開けた。
絶命だ、会場からも悲鳴が上がるがそんなのは関係無い。
結びはちゃんと注意事項を言っている。
「ああ、ちなみに……死んでも蘇生してやる、さ、
結びは両手で手を叩いた、すると天空原は五体満足の元通り。
やっと結びのヤバさを肌で感じた、絶対に勝てない。
だが頭を下げる事はしたくない、小さなプライドが今試されている。