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第二話 演目 地獄谷の選択肢

 海渡福が治める神の国へとやって来た、早速縁は海渡の所へと出向き事情を説明する。

 海渡が見届け人として話し合いが始まった。

 地獄谷のご両親と虎毘沙とらびしゃはお互いに緊張している表情をしている。


「この度は孫がご迷惑をお掛けいたしました、私に出来る事が有ったら言ってください」


 虎毘沙は深々と頭を下げた、近くに立っている側近の総烈そうれつも深々と頭を下げた。

 炎花の父、形白かたしろは娘の方をゆっくりと見る。


「炎花お前はこの神様達を許すかい?」

「え? お父さん? ど、どうして私にゃ?」

「お前が一番傷ついた……お前が相手を許すというなら、父さん達は何時も通りにするだけだ」

「にゃ? 何時も通り?」

「俺達はマタタビ専門の商人だ、ああ勘違いするなよ? 謝罪に漬け込むのは最初だけで値段もちゃんと割引もする」

「初回だけ買ってくれないかってやつにゃ?」

「そうだ、先祖の言葉の一つに『怨み辛み言う暇あるならまた旅に出ろ』ってのがあってな」

「にゃ、怨み辛みを言い続けるより健全だにゃ……許すって難しいにゃ」


 地獄谷の一族の理念、何があってもまた旅が出来る様に立ち上がる。

 どんな事が起ころうとも旅を続ける、立ち止まってはいけない。

 初代当主の残した言葉の意味と難しさを嚙みしめる炎花。


「正直言って父さんだけなら色々と怨み辛みを言っていた」

「にゃ?」

「でも私には妻や娘が居る、カッコイイお父さんで居たいんだよ」

「にゃ……お父さん凄いにゃ」

「だからお前が決めなさい」

「……いきなり重要な選択肢を突きつけられたにゃ……縁先生」

「どうした?」


 炎花は物凄く困った顔をして縁を見た、被害は大きいが父親が許そうとしている。

 自分の選択肢で今後の状況が間違いなく変わる、炎花は耳がへにゃっとなっていた。


「どうしたらいいにゃ、これこそ身の丈に合わない選択肢をしそうで怖いにゃ、お父さんは立派なのに娘はみたいにゃ」

「俺が言えるとしたら……今日の戦いはどうだった?」

「にゃ? というと?」

「今日で言えば君はずっと攻撃を避けていたのだろう?」

「にゃ」

「自分の幸せ邪魔する奴はさっさと倒してデートした方がいい、時間がもったいない」

「……出来たら苦労しないにゃ」

「だから今のうちに苦労するんだろう?」

「……確かににゃ」

「褒められた事じゃないが俺は妹を守る戦いで力を得た、ここまで慣れとは言わないがムカつく奴に対抗する力は必要だ、物理的なのか金銭的なのか立場なのか……色々とあるが」

「にゃ……確かに今は避けるかしかないにゃ、これじゃ恋人は守れない」

「え゛!? 恋人!?」

「アナタ、私が後で説明しますから落ち着いてください」

「……お、お前は知っていたのか」


 形白は場にそぐわないビックリした声を出すが、直ぐに妻にたしなめられた。

 父親にばれた恥ずかしさが少々ある炎花だが、今は恥ずかしがっていられない。


「虎毘沙様私に技を教えて下さいにゃ、毘沙門天様に仕えていた神様なら尋常じゃない強さにゃ」

「ほう、ワシの技を……総烈、問題無いか?」

「はい」

「ならお嬢――いや炎花殿、技とは言わずに奥義を教えよう」

「にゃ? そんな直ぐに奥義なんて使えないにゃ」

「ふむ……炎花殿は自分の実力に気付いていないのか?」

「にゃ?」

「アレでも孫は強い部類に入る、奴の攻撃をかわしきったのだろう?」

「天空原が一緒に居たから逃げに集中出来たにゃ」

「……では質問をするが……君から見て今この場で強いのは誰だ」

「にゃ? では失礼してにゃ」


 炎花はジッっと今この場の、自分の両親、縁、福渡、虎毘沙、総烈を順番に見る。


「純粋な戦闘力なら今の縁先生、逃亡に関してはお父さんとお母さん、海渡様からは可愛さならワシじゃろ? と思っている、総烈さんは秘書としての能力、虎毘沙様は戦争向き……指揮官と言った方がいいかな、強さも色々あるにゃ」

「凄いな炎花殿……神の名は何という?」

地獄花木天蓼じごくばなもくてんりょうだにゃ」

「うむむ……人の世でこれだけの人材が育つとは」

「あ、多分それは桜野学園だからだにゃ」

「ほう」

「縁先生とか界牙流四代目の結び先生とか、凄い学校の先生達が居る場所にゃ」

「ふむ……縁殿、そこの学園で技を教えるに適した場所はあるか?」

「はい」

「ではその学園に案内してくれ」

「わかりました」

「総烈、地獄谷殿達と話を付けといてくれ」

「お任せください」

「では行こうか縁殿、炎花殿」

「はい」

「にゃ」


 こうして縁達は桜野学園へと向かうのだった。

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