海渡福が治める神の国へとやって来た、早速縁は海渡の所へと出向き事情を説明する。
海渡が見届け人として話し合いが始まった。
地獄谷のご両親と
「この度は孫がご迷惑をお掛けいたしました、私に出来る事が有ったら言ってください」
虎毘沙は深々と頭を下げた、近くに立っている側近の
炎花の父、
「炎花お前はこの神様達を許すかい?」
「え? お父さん? ど、どうして私にゃ?」
「お前が一番傷ついた……お前が相手を許すというなら、父さん達は何時も通りにするだけだ」
「にゃ? 何時も通り?」
「俺達はマタタビ専門の商人だ、ああ勘違いするなよ? 謝罪に漬け込むのは最初だけで値段もちゃんと割引もする」
「初回だけ買ってくれないかってやつにゃ?」
「そうだ、先祖の言葉の一つに『怨み辛み言う暇あるならまた旅に出ろ』ってのがあってな」
「にゃ、怨み辛みを言い続けるより健全だにゃ……許すって難しいにゃ」
地獄谷の一族の理念、何があってもまた旅が出来る様に立ち上がる。
どんな事が起ころうとも旅を続ける、立ち止まってはいけない。
初代当主の残した言葉の意味と難しさを嚙みしめる炎花。
「正直言って父さんだけなら色々と怨み辛みを言っていた」
「にゃ?」
「でも私には妻や娘が居る、カッコイイお父さんで居たいんだよ」
「にゃ……お父さん凄いにゃ」
「だからお前が決めなさい」
「……いきなり重要な選択肢を突きつけられたにゃ……縁先生」
「どうした?」
炎花は物凄く困った顔をして縁を見た、被害は大きいが父親が許そうとしている。
自分の選択肢で今後の状況が間違いなく変わる、炎花は耳がへにゃっとなっていた。
「どうしたらいいにゃ、これこそ身の丈に合わない選択肢をしそうで怖いにゃ、お父さんは立派なのに娘はみたいにゃ」
「俺が言えるとしたら……今日の戦いはどうだった?」
「にゃ? というと?」
「今日で言えば君はずっと攻撃を避けていたのだろう?」
「にゃ」
「自分の幸せ邪魔する奴はさっさと倒してデートした方がいい、時間がもったいない」
「……出来たら苦労しないにゃ」
「だから今のうちに苦労するんだろう?」
「……確かににゃ」
「褒められた事じゃないが俺は妹を守る戦いで力を得た、ここまで慣れとは言わないがムカつく奴に対抗する力は必要だ、物理的なのか金銭的なのか立場なのか……色々とあるが」
「にゃ……確かに今は避けるかしかないにゃ、これじゃ恋人は守れない」
「え゛!? 恋人!?」
「アナタ、私が後で説明しますから落ち着いてください」
「……お、お前は知っていたのか」
形白は場にそぐわないビックリした声を出すが、直ぐに妻にたしなめられた。
父親にばれた恥ずかしさが少々ある炎花だが、今は恥ずかしがっていられない。
「虎毘沙様私に技を教えて下さいにゃ、毘沙門天様に仕えていた神様なら尋常じゃない強さにゃ」
「ほう、ワシの技を……総烈、問題無いか?」
「はい」
「ならお嬢――いや炎花殿、技とは言わずに奥義を教えよう」
「にゃ? そんな直ぐに奥義なんて使えないにゃ」
「ふむ……炎花殿は自分の実力に気付いていないのか?」
「にゃ?」
「アレでも孫は強い部類に入る、奴の攻撃をかわしきったのだろう?」
「天空原が一緒に居たから逃げに集中出来たにゃ」
「……では質問をするが……君から見て今この場で強いのは誰だ」
「にゃ? では失礼してにゃ」
炎花はジッっと今この場の、自分の両親、縁、福渡、虎毘沙、総烈を順番に見る。
「純粋な戦闘力なら今の縁先生、逃亡に関してはお父さんとお母さん、海渡様からは可愛さならワシじゃろ? と思っている、総烈さんは秘書としての能力、虎毘沙様は戦争向き……指揮官と言った方がいいかな、強さも色々あるにゃ」
「凄いな炎花殿……神の名は何という?」
「
「うむむ……人の世でこれだけの人材が育つとは」
「あ、多分それは桜野学園だからだにゃ」
「ほう」
「縁先生とか界牙流四代目の結び先生とか、凄い学校の先生達が居る場所にゃ」
「ふむ……縁殿、そこの学園で技を教えるに適した場所はあるか?」
「はい」
「ではその学園に案内してくれ」
「わかりました」
「総烈、地獄谷殿達と話を付けといてくれ」
「お任せください」
「では行こうか縁殿、炎花殿」
「はい」
「にゃ」
こうして縁達は桜野学園へと向かうのだった。