何やら敵に囲まれている縁達、だが敵の姿は見えない。
というか見えないだけで気配は近くに感じていた。
いや、シンフォルトが先制攻撃うけた時点で近くに居るとわかるだろう。
しかしこの程度で慌てる様な縁達ではない、むしろ一番この状況を語りたい人物が居る。
博識いずみだ、解説したい気持ちがワクワクを!
「ああ! ああ! せ! 説明! 説明がしたい!」
「てずみ、縁にすればいいんじゃないか?」
「色鳥さん! そ! それです! 最近の私達も縁さんは知りませんし! さあ! 私も用意の準備をしますよ! い、いえ! 今日は休暇です、落ち着きましょう」
「いずみ、無理は良くないぞ?」
「私は大丈夫です、色鳥さんこそ遊んだらどうですか?」
「んじゃそうさせてもらうか」
色鳥は遊びに出掛けるかのようにふらふらと歩き出した。
そして足元の石を拾ってその辺に投げる。
誰も居ないはずなのに、何かに当たった様に弾ける。
面白がる様にそこら辺に石を投げ続けていた。
色鳥の顔はまるで子供のかくれんぼに大人の対応をしている様な表情。
つまりは生易しく微笑んでいた、敵からしたらたまったもんではないだろう。
自分達のミスとはいえ、雲の上の様な存在に手を出したのだから。
そんな事は関係ないと縁といずみは、テントやお茶等の準備をしている。
「では私は縁さんに勝手に解説するので、心置きなく遊んでくださいな、あ! 私は解説中は死なないので攻撃しても無駄ですよ?」
「ついでに……俺に手を出したら問答無用でお前らの国を滅ぼすからな? 神に手を出すならそれくらい覚悟してもらわんと」
「あらあら縁さん、昔みたいにワイルドになりましたね」
「てかこいつらはグリオードだけ攻撃すればいいのにな、って俺達って昔から何処か冷たかったよなー今思えば色鳥が精神的支柱だったな」
「はっはっは! 縁さんがそれをいいますか? 絆さんの事で頭いっぱいだった貴方が……そして色鳥さんに関してはそうですね」
「俺の態度に付いてはすまん」
「まあ昔の事を話しても仕方ないですよね」
「あれ? 博識さんとはどうやって出会ったんだっけ?」
「縁さん素晴らしいです、愛する人との思い出で私の事を忘れたのですね」
「怒らないのか?」
「怒りませんよ?」
「私の考えは人生のパートナーを最優先するべきです、そして思い出は私が話せばいいのです、お話大好きですし」
「理解ある友人だな」
「ふっふっふ、この博識いずみはいい女ですので」
いずみはここぞとばかりに、またメガネを光らせた。
「そして出会いですがなんてことありませんよ? 私が知的好奇心……もとい神様から現実見て来いと言われまして人の世に来ました」
「そうだったなー」
「はい、で、都合よく戦争している神様が居たのでお近づきになっただけです」
「酷い言い分だな」
「お互い様ですよ?」
「俺なんか言ったっけ?」
「知識だけ持ってて自分の手を汚した事ない奴に説教されたくない、ですね」
「えぇ……どの口が言ってるんだってなるな」
「まあまあ、縁さんは神様ですし、私は人間ですが常識外れでしたしね」
縁は神様で人間の価値観は通じない、しかしそれはいずみも同じ事だった。
知識だけがある人間、それは知的好奇心も何もない証拠でもある。
何をしても結果は予想出来る、そんな人間が普通な訳がない。
「博識さんはどうして……あの戦争をなんだかんだ手伝ってくれたんだ?」
「怒りません?」
「俺も酷い言い分したしな」
「ではストレートに、戦争は幸せと不幸が入り交ざっているからですよ」
「ふむ」
「敵を殺した、家を焼かれた、ご飯にありつけた、お風呂に入れた……色々な感情を知りました、やはり命の叫びは無神経な私に感情を与えてくれましたよ」
「まるで感情が無かったような言い方だな」
「ありましたがつまらない事ばかりでしたし……つまるところ、知識では得られなかった感情、それを知れて大満足ですよ」
「俺は説教出来ないな」
「どうしてです?」
「俺も妹を殺そうとした奴らを殺せて大満足していたからだ」
「それはそうでしょう」
肯定するいずみの言葉に縁は深いため息をした。
今まで積み上げてきた人間への仕打ちについて考えていたのだ。
「ただ今になって後悔している」
「あらら?」
「俺と結びさんとの子供が出来たらなと思ったら」
「ああ……確かに、子供にお父さんはこんな酷い人だったのか、そう言われても仕方ないですね」
「……それに子供も何か言われるかもしれない」
「うーむそれは怖いですが、このいずみちゃんが解決策をご提示しましょうか?」
「ほう」
「気に食わない奴を殺します」
「それはダメだろ」
「冗談です、教育ならグリオードさんの国のいいかと」
「確かに」
「縁さんはご自身の人脈を生かせばいいかと」
「ふむそれもそうか」
縁に対して良く思っていない人間もいるだろう。
しかし当たり前の事だが味方も居る。
味方を作りたかったら敵を作れなんて言葉がある。
逆に言えば敵が居るなら何かしらの味方は居るはずだ。
「お、だったら博識さんに家庭教師もいいかもな」
「ふふん、先生も経験……って縁さんも今は先生では?」
「待ってくれ、先生になって一年もたってない、てか俺が教えれるはずないだろ」
「おバカさんですか?」
「えぇ……ずいぶんな言い方だな」
「はい、ご両親が一番の教育材料ですよ? 子供からしたら」
「ふむむ……確かに」
「風野音さんとご相談するのが一番かと」
「確かにそうだな」
縁はテントの準備が出来て辺りを見回すと、色鳥はまだ石を投げて遊んでいるようだ。
「お前さんも何かあったら言えよ」
「あら懐かしい」
「お?」
「昔の縁さんはずっとお前でしたよ?」
「ああ……そうだったな」
「んで、博識になりいずみになり博識さんですね」
「俺達ってなんだかんだと会話してる?」
「ええ、ほぼ言い合いでしたがね」
「え?」
「会話もそんな無かったですけど、言い合いしてましたね」
「……そうだったか?」
「はい、縁さんはあの時絆さん一番でしたから」
「縁の神様が呆れるな、会話は仲良くなる方法の一つだ」
「そうですね、それには同意見ですよ」
いずみもお茶の準備が出来たようで、今度は茶菓子を用意しだす。
「昔は置いといて、今はこうして他愛ない話を出来て嬉しいですよ」
「確かに、ふと思ったんだが博識さんは普段はなにをしているんだ?」
「ではご説明しましょうか」
「ああ」
色鳥の石遊びが終わるまで2人は昔話に花を咲かす事になる。