これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。
どこかの扉の向こうの世界の物語。
彼らは町役場の者に案内されてそこに来た。
「それじゃ、あとは頼みましたよ」
町役場の案内は、門の前で帰っていった。
あとには、ヒビキとワタルが残った。
「遊園地だな」
ワタルがつぶやく。
「なぁほんとにいるのかよ、強い戦士とか」
「俺に聞くな」
「とにかく行こうぜ」
ヒビキがずんずん進む。
恐れなど何もないように。
ワタルはため息をついてついていく。
ヒビキはこういう単純なところがある。
それが長所でもあり短所でもある。
だからコンビを組めるのかもしれない。
ワタルはため息をまたつく。
「あれはバカだ」
遊園地は廃園の様相を呈していた。
「何でこんなところがねぐらだよ」
ヒビキが空き缶のゴミを蹴飛ばす。
それは、池の中にボチャンと落ちた。
「わからない。けど、ここを壊すに当たって邪魔だという話だ」
「よく知ってるなぁ」
「…お前も一緒に聞いただろう」
「あれ、そうだっけか?」
「聞いたんだ。それで、戦士をここから追い出したいらしいが…」
強い殺気がする。
「…みんな失敗したらしい」
メリーゴーランドの上に、強い殺気。
ヒビキが見上げる。
ワタルが見上げる。
「あんたが強い戦士か」
ヒビキが大声で怒鳴る。
「俺は戦士、俺は武士」
ヒビキは能力の構えを取る。
ワタルが制する。
「ここを出て行く気はないか」
ワタルは話し合いを一応持とうとする。
「愚問」
戦士はメリーゴーランドから落下してくる。
真っ逆さまにヒビキとワタルに襲い掛かる。
刀がうなりをあげる。
じゃりじゃりじゃりと石畳が削られる。
ヒビキとワタルは瞬時に飛びのく。
回転がかかった落下を息をするように行う。
これは強いと彼らは肌で感じた。
「もう一つだけ質問をいいか」
飛びのいたワタルが声を上げる。
「なんだ」
「お前の名前は?」
「名前なんぞ必要か」
「必要だ」
ワタルが構える。
ヒビキも構える。
「倒す相手が名無しじゃ張り合いがない」
ヒビキはにんまり笑う。
「カタナ、それで十分だ。お前らは」
「俺はヒビキ」
「俺はワタル」
「ヒビキ、ワタル」
カタナは刀を構える。
「参る」
交渉は決裂。
戦闘に入った。