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第373話 遊園地

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


彼らは町役場の者に案内されてそこに来た。

「それじゃ、あとは頼みましたよ」

町役場の案内は、門の前で帰っていった。

あとには、ヒビキとワタルが残った。

「遊園地だな」

ワタルがつぶやく。

「なぁほんとにいるのかよ、強い戦士とか」

「俺に聞くな」

「とにかく行こうぜ」

ヒビキがずんずん進む。

恐れなど何もないように。

ワタルはため息をついてついていく。

ヒビキはこういう単純なところがある。

それが長所でもあり短所でもある。

だからコンビを組めるのかもしれない。

ワタルはため息をまたつく。

「あれはバカだ」


遊園地は廃園の様相を呈していた。

「何でこんなところがねぐらだよ」

ヒビキが空き缶のゴミを蹴飛ばす。

それは、池の中にボチャンと落ちた。

「わからない。けど、ここを壊すに当たって邪魔だという話だ」

「よく知ってるなぁ」

「…お前も一緒に聞いただろう」

「あれ、そうだっけか?」

「聞いたんだ。それで、戦士をここから追い出したいらしいが…」

強い殺気がする。

「…みんな失敗したらしい」

メリーゴーランドの上に、強い殺気。

ヒビキが見上げる。

ワタルが見上げる。

「あんたが強い戦士か」

ヒビキが大声で怒鳴る。

「俺は戦士、俺は武士」

ヒビキは能力の構えを取る。

ワタルが制する。

「ここを出て行く気はないか」

ワタルは話し合いを一応持とうとする。

「愚問」

戦士はメリーゴーランドから落下してくる。

真っ逆さまにヒビキとワタルに襲い掛かる。

刀がうなりをあげる。

じゃりじゃりじゃりと石畳が削られる。

ヒビキとワタルは瞬時に飛びのく。

回転がかかった落下を息をするように行う。

これは強いと彼らは肌で感じた。


「もう一つだけ質問をいいか」

飛びのいたワタルが声を上げる。

「なんだ」

「お前の名前は?」

「名前なんぞ必要か」

「必要だ」

ワタルが構える。

ヒビキも構える。

「倒す相手が名無しじゃ張り合いがない」

ヒビキはにんまり笑う。

「カタナ、それで十分だ。お前らは」

「俺はヒビキ」

「俺はワタル」

「ヒビキ、ワタル」

カタナは刀を構える。

「参る」


交渉は決裂。

戦闘に入った。

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