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第382話 機密

これは斜陽街から扉一つ分向こうの世界の物語。

どこかの扉の向こうの世界の物語。


タケダはコンビニの陳列棚をいじる。

このところ地震が多くて、

重みのないお菓子の棚がふらふらしている。

大地震がない限りこれでいいかと思いながら、

タケダはお菓子をそろえていく。

「きっちりしないとね」

タケダは整頓の出来に満足する。

うんうんと一人でうなずく。

お客はいない。

昼近くにもなればお弁当のお客が増える。

タケダは掃除をする。

やるべきことが山のように。

それはみんな地域に結びついている。

「うーん、地域密着」

タケダはちょっぴり自分に酔う。

酔ったあと、はっと店を見渡す。

誰もいない。

タケダは一人でなんだか恥ずかしい気分になった。


電話のベルが鳴る。

「あれあれ電話だ」

タケダは店の中の電話を取る。

「もしもし」

「ああよかった、繋がったか」

「もしもし?」

「そのまま聞いてくれ、その町は現在地震が多いはずだ」

「あ、はいはい」

確かに地震が多い。

本部からの地震対策の電話だろうか。

「地下には怪獣の卵が埋まっている」

「はいは…はい?」

タケダは聞き流そうとして声がひっくり返る。

「怪獣の卵がうごめいている」

「どういうことですか」

「卵が動くことにより、地震が起きている」

相手はタケダの声を聞いていない。

一方的に続ける。

「卵がかえれば、そこは壊滅してしまうだろう」

「そんな」

「卵のことは機密情報だ、一般人に流してはいけない」

「ならなんでこんなところに電話を」

「うん?」

相手が違和感に気がついたらしい。

「ここはコンビニですよ。どこから電話してるんですか」

「コンビニ?」

「いたずら電話ですか?切りますよ」

「そこは対策本部じゃないのか?」

「何の対策ですか?ここはコンビニですよ」

「では君は一般人か」

「一般人です。怪獣とかなんとか、一体何が起きているんですか」

タケダは半ばあきれて電話を切ろうとする。

「待て」

相手から声が入り、タケダは受話器を持つ。

「怪獣の卵は機密情報だ」

「そんなことを言ってましたね」

「いたずらに広げて混乱させてはいけない」

「本当なんですか、その情報」

「この電話を切ったら地震が起きる」

それを最後にプツリと電話が切れた。


直後に地震。

震度3程度。

タケダは戦慄した。

本当なんだ。



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